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俺、異世界で旅スロします  作者: PP
第一章
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4:新台入れ替え前日

 俺は新台入れ替えに伴い、5台に増えたスロット台の内撤去予定の2台と睨めっこをする。勿論、撤去前といえば高設定を投入する為である。なので、朝からこうして俺はホールの魔法を展開しているのである。そして、外には既に2人の客が並んでいる。


 一人は最初にスロ仲間になった魔王様。そして二人目は通りすがりの青年である。魔王を見て剣を抜こうとしていたが、俺の放った解析転写により青年は見事スロ仲間になったのだ、たぶん。


 外では二人の話声が聞こえてくる。


「貴様、魔王……だよな」

「人はそう呼ぶが、実際俺みたいなのはゴロゴロいるぞ」

「くっ、何故人を殺める……」

「ん、俺はもうそんな道楽には興味はない。今はレバオン力を高めるまでよ」

「……くっ、俺も負けん」


 どうやら、魔王を討つ者なのか魔王を目の前にして葛藤しているようである。が、青年はスロットの魅力に溺れているのである。


「なぁ魔王よ、中段チェリー引いてみたいよな」

「ハハハ、あれは気持いいぞ。思い出しただけでニヤケが止まらない」

「くっ、既に引いたことがあるのか」

「何せ俺は最初にメーダとスロットを打った者だからな。貴様如き俺の足元にも及ばん」

「差玉勝負だ……勝負しろ!?」

「ハハハ、威勢だけはよし。下皿でモミモミしてるがよい」


 とかなんとか。スロットはいさかいいを越え友になる魅力があるのだ、とそんな事をぼんやりと思うのだった。


「本日もお集まりいただきありがとうございます。といっても、二人だけだけどな。ささ、これを」


 俺は赤いボタンとレシートがでる機械を設置してみせる。


「なんだ、これは?」


 魔王様が食いついて来たので説明をする。


「これは抽選機です、このボタンを押したら抽選番号が決定されます。並び順ではなくこれからは朝一の抽選は必須です」


「ふむ、よかろう。押させてもらうぞ」

「お、俺もだ!」


 魔王様、青年とボタンを押すと何も書かれていない紙が機械から吐き出される。


「ん、何も書かれておらぬぞ」

「俺のもだ……」


 二人は俺に説明を求めてくるので、しっかりと説明を行う。


「抽選は並び順で、開店15分前に行います。開店5分前になると、その紙に番号が浮き出て来るので大切に保管しててください。もし紛失したら最後尾の並び順入場となるのでそれも注意してください」


 俺が説明すると、二人は大切そうにその紙をそれぞれ保管した。


「さて、俺は今日新台入れ替え前日なので先に中で作業させてもらいます」


 説明を終え、俺は再び台を選ぶ。折角新台を入れるのだ、入口側の調子の良い台を抜くのは凌ぎないが、入口側の2台を入れ替えようと決心する。


「よし、ではこの2台を5・6にしよう」


 5台あるユアジャグは、設定3・4・3・5・6と順に設置したのだった。一方開店5分前になった今、二人の手元の紙には番号が浮かび上がる。


「ハハハ、みよ、俺が1番だ!」

「くっ、俺は2番だ……ん、何だこれは」


 二人は紙に表記された番号の下に、今日の運勢なる表記をみつける。


「ふむ、中吉か。どういう意味なのだこれは」

「ふふ、魔王も知らない事があるとみた。教えてやろう! これは今日の運勢なのだよ!」

「……そう書いてあるな」


 青年は落ち着き、言い直す。


「コホン、運勢は大凶・凶・小吉・中吉・大吉と順に運を現すのだ。そして俺は大吉だ! カツル」


 青年がガッツポーズをみせるが、魔王はフンと鼻をならしそっぽ向く。


「運など、魔力を高めれば引き寄せれるのだ。こんな紙切れ一つ……くぅ、次こそは」


 こっそりと悔しがりながら、律儀に開店を待つ二人であった。


「さぁ、開店です! いらっしゃいませ!」


 俺の挨拶と共に、1番の魔王様が入場する。5秒が立ち2番目の青年が続いて入場する。


「俺はこの台にするぞ!」


 魔王様は中央の台を選ぶ。設定3の台は、まさに中吉のごとく中間である。1番目に入場し、2番目が入場するまでの5秒という僅かな時間でも、魔王の頭の中では様々な事を考える余裕があったのだ。が、しかし掴んだ台は設定3である。


 対して青年は、昨日の感覚が忘れられなく未練打ちの如く入口の角台に座る。勿論、これは設定6、最高設定なのである。


 台を確保した二人は、貯メダルしていた900枚と800枚をそれぞれ引き出す。端数は手数料としていただいているのだ。


「カコンッ」


 盛大な音を立てるのは魔王様。毎度のことスタートダッシュには強い。が、レギュラーボーナス。項垂れるも、確率を信じて魔王は今日はこの台で勝負する事を決心する。対する青年は開幕330Gがたった今も当たりを引けず、じわじわと焦り出すのであった。既に、手元に残る魔メダルは300枚をきっていた。


 午後になり、立場が逆転していたのはいうまでもなく。青年は盛大に連チャンを続け合算は既に1/80をきろうかという事態へとなっていた。対する魔王様はレギュラーボーナスの波に襲われ高設定なのか判断できず苦悩を続けていた。


「皆に伝えたいことがあります」


 俺はアナウンスで二人の客へと重大な事を伝える。


「俺は、更なる仲間を探しに次の町へ旅に出ようと思います」


 俺のアナウンスを聞いた瞬間、二人は同時にレバオンをミスり盛大にこけそうになる。が、すぐに立て直して俺の元へと駆けよる。


「貴様、俺を置いていくつもりか!?」

「なっ、今日でユアジャグが打てなくなるのか!? いや、それよりも新台は!?」


 二人が勢い良く突っ込んでくるが、俺は冷静に応える。


「落ち着いて二人とも、この場所にホールの本店を設置しておくから。朝9時45分に抽選。55分に表記された番号順に並んで、番号が呼ばれたら入場。今日の通りでいいからさ」


 俺が明日からもこの場でスロットが打てることを説明すると、二人は落ち着きを取り戻す。


「他の場所で仲間をみつけたら、そこに支店のホールを設置するから。支店のホールをくぐるとこの本店の中に移動する仕組みにしておくから。知らない人入ってきたからって喧嘩しちゃダメだからな?」


 俺は釘をさす。この場所は喧嘩をする場所では決してないのだ、スロットのレバーに魂込めてレバオンする。それだけの場所なのだから。


「わかった、しかしメーダ。今日のユアジャグは悩ましいぞ」


 魔王様は俺から情報を引き出そうと話を振って来るが、その手には引っかからない。


「魔王様、新台入れ替えの前日はどうなるのか……知識はありますよね。それが答えですよ」


 俺はにっこりして言う。撤去される台には設定が入る事が多いのである、そしてレギュラーが多い台は高設定の可能性が非常に高まるのである。そして俺の言葉を聞き、魔王様は設定3の台を打ち切ることを決意したのであった。


 対して青年は、明日からも打てる事がわかったので自分の台に戻り終日合算1/98をきる事はなかったという……。



「「えっ!?」」


 二人が驚いた声を出す、それはまだ21時だというのに今日は閉店すると伝えたからだ。二人はまだ打ち足りないと懇願するも俺は却下する。何故なら新台入れ替え前日は閉店時間が早まるのである。


「くそう、このままいけば取り戻せるのに」


 魔王様の台は合算が1/138と微妙なラインだったが、レギュラーに偏っていた為負け越している。対する青年はもっと出したかったという想いで一杯だったようだ。


 魔王様の貯メダルは200枚まで減り、青年の貯メダルは2400枚まで増えていた。


「明日の新台は魔メダルの消費が多いので、良ければ無機質な物をお持ちください。サンドで魔メダルに換金できますので」


 俺は魔王様に伝え、青年にも伝えておく。


「新台は荒いので、貯メダルだけでなく念の為換金物をお持ちいただいた方がよいと思います」


 魔王と青年は頷き、打ち足りなさそうな顔をするも二人して店を後にした。



「魔王よ、良い店があるのだが呑んでいくか」

「ふん、貴様如きが俺に……」

「今日は奢るよ、魔メダルを少しお金に換金したんだ」

「……まぁよかろう」


 青年は大都市の中に魔王という存在を引き入れ、二人は酒場で夜遅くまでスロットトークで盛り上がるのであった。

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