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俺、異世界で旅スロします  作者: PP
第一章
3/34

3:88Gチェリー同時当選

「さって、今日も頑張りますか」


 俺はホールの魔法を唱え、店を構える。ここは大都市、から少し離れた土地である。何故こんな場所に居るかって? 勿論、俺は自分のホールを経営したかったのである。打ち放題、どんとこいなのだ。


「早く開店しないのか」

「まぁ待てって。開店は朝10時って相場が決まってんだから」


 俺の展開するホールの入り口に待機する男は、俺が初めて旅立った日に出会った魔王様である。あの夜、俺達は熱くユアジャグの出目や1G連、プレミアム演出について語り合ったのである。


 その結果、この魔王様は人を襲う事を辞め俺と友になる事を決めた。そして、俺が拠点に決めたこの土地までわざわざ足を運んでくれているのである。


「それにしても、こんな場所教えてくれてありがとな」


 俺は改めて魔王様に感謝の言葉をおくる、すると魔王様も俺こそ面白い物を教えてもらったと、今では退屈しないと返事をいただく。


「さぁ、今日もオープンだ!」


 俺と魔王様は二人、ホールの中へと足を踏み入れる。今では日々魔王様が打ってくれるので魔力が増え、台が5台に増設できたのだ。しかし、ユーアージャグラーのみの設置である。これは魔王様の熱い熱い希望なのである。曰く、設定が6種類もあるのに、3台では設定判別で遊べないではないかという事らしい。


 俺が旅立ってから、既に10日という日が経過している。王都がある方角とは別方向だが、この先にある大都市は人で賑わい、俺も日々食糧などの調達に重宝しているのだ。


 と、俺達がホールに入ろうとすると一つの静止の声が届く。


「お前、まさか北の森にいる……いや、まさか」


 一人の青年が剣に手をかけ、臨戦態勢に入っている。


「ちょーっとまったー! もう入場開始なんだよ? 最初の台選びは重要なんだよっ!?」


 俺がオーバーにも思える程の勢いで間に入り、青年に話しかける。


「とりあえずえいっ!(解析転写)」

「なん、だと」


 俺の解析転写が青年の記憶にユアジャグの解析情報や楽しみ方を全て叩き込む。途端、目の前にみえるホールに目が釘づけになる。


「なぁ。俺も打てる、のか……?」

「勿論、すぐ行きましょう。すぐ! ささっ」


 魔王様は俺達のやり取りを無視してデータカウンターをポチポチ押して既に台選びを始めている。


「あっ、魔王てめぇ先に!?」

「ふははは、俺はこの台に決めた。上げ狙いだ」

「ま、まてっ! やはり貴様は魔王……いや、俺は据え置き狙いでコレにしよう」


 青年は魔王と戦闘するのかスロットを触ってみるか葛藤する、目の前に知識だけ詰め込まれたユアジャグのスロット台が5台もあるのだ。そしてチラチラと魔王を意識しつつ、しっかりと台確保を選択するのであった。


「な、なぁ。魔メダルはどうやったら手に入るんだ……」

「あー、預魔メダル無いんだっけか。そうだな、初めてだし俺から500枚プレゼントしよう。今後は無機物な何かを持ってきてくれたら換金しよう」

「おお、ありがたい! それじゃ早速」


 一番左の台を確保したのは魔王様。ここ数日間データグラフはずっと下降傾向である。対して一番右の台を選んだのは青年。ホール入口に一番近い位置にある台で、ここ数日ずっと調子がいいのである。


 俺は取り敢えず、けんである。と、いうのもユアジャグもいいのだがそろそろART機を設置しようかと思っているのである。


「ガコンッ」


 盛大な音と共に、青年が打ってた台は今日も調子がいいのか早速ビックボーナスを引き当てる。たいして魔王様はまだ当たっておらず、チラチラと青年の台をチラ見している。


「こ、これがビックボーナスか……」


 青年はボーナス中に流れる曲に酔いしれ、既にスロット愛好家まっしぐらである。と、そこで俺は二人に重大事項を伝える事にする。


「えーっと、君が来てくれたおかげで新台解放を告知させていただきまーす!」


「「なん、だと」」


 二人の声がスロット台で賑やかなホール内に響き渡る。


「明後日、エウレカヘブンを設置させていただきます。こうご期待」


「新台が打てるというのか……ふははは、これはいい、これはいいぞ!」

「こ、この台だけでもこんなに凄いのに……くぅ!」


 それぞれ唸りながら、スロットを打つ手を止める事は一時も無かったのである。


「見ろ! やった、ついにきたぞ!」


 第三停止をぐりぐりとしたまま、魔王が叫ぶ。何事かと俺と青年が見に行くと、ゲームカウンターが88Gを指している。そして停止目は第一リールにチェリー、第二停止のリール内にはサイ・バー・ブドウの出目。第三停止は7・バー・ベルと行った停止目になっている。


「こ、これはもしやリーチ目! それもゾロ目ゲーム数……」


 青年はもう知っている、この意味を。


「ふっははは、ゾロ目での当たりはプレミアム曲が流れるのだよ!」


 指を離すと、音はならずCOCOランプが神々しく点灯する。しかし二人はまだ知識しかないのだ。この先が重要だという事に気が付いていない。


「えい、やー、たぁー。化けっ!」


 魔王が椅子から崩れ落ちる。無情にもプレミアム曲は流れず、ジャララララララ♪ と聞きなれたレギュラーボーナスの音が鳴り響く。青年にとっては、初のレギュラーボーナスの曲にテンションがやや上がっているようである。


「くそう、くそう……いや、チェリー重複のレギュラー。これはやはり上げなのでは」


 魔王様も、青年もこの日は閉店まで打ち続けるのであった。

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