2:ユーアージャグラー
俺は早朝から一人、森のある方面へと出かけている。勿論、魔物を倒して魔メダルを手に入れる為である。強い魔物がより多くの魔メダルに変換できる為、強い魔物がいる方面へと強行軍した結果、既に手持ちの魔メダルは数千枚となっている。
「うへへ、こんだけあれば一度くらいは光らせるな」
そんな事を口に出していると、いつのまにか寂れたお城がそびえたっていた。
ここで更に魔メダルを獲得しますかと思い立ち中へ侵入。臆することなく突き進み、あっという間に一番奥まで来てしまったのである。
「貴様、何者だ」
「あー……コンバンワ?」
俺はあまりの形相にビビッてしまう、玉座に居るのは俗に言う魔王さんか何かなんでしょうか。
「死ね、人間め」
「うわっ、フリーズ!」
俺は予め展開していたホール魔法から、フリーズを詠唱する。途端、魔王らしき人物が解き放つ魔弾はその場で止まる。
「あっぶねぇ、しかしそれだけ魔力があれば……」
俺は思いついてしまうのだ、この人ならば、と。
「話を聞いて下さい!」
「ふん、我が一撃を凌いだ褒美だ。人間よ、話くらい聞いてやろう」
鎧に覆われた魔王は、玉座に肘をつき俺の言葉を待っているようだ。
「そ、それじゃ少し失礼します。解析転写」
俺は解析転写の魔法を魔王に放つ。途端、強制的に俺の持つスロット台情報が魔王の知識に流れ込む。
刹那
「貴様……ユアジャグが今、打てるというのか」
「はい、今すぐ打てます」
「ふはははは、それはいい。この知識だけでは物足りぬ、早く打たせよ!」
「お任せ下さい!」
俺はホールを展開し、三台のユーアージャグラーを設置する。
「こちらになります。魔メダルを利用して遊戯が出来ます。設定はランダムで入れてますので、好きな台をどうぞ」
「ふむ、それでは真ん中だ」
「はい、魔メダルは一人五〇〇枚にしましょう。大一本勝負という事ですが、いいでしょうか」
「ほう、差枚対決と申すか」
「くぅー、いいですね! そうしましょう」
「人間ごときが……いや、貴様、名を何という」
「はい、メーダスロッテンと申します」
「メーダか。では、いざ勝負だ」
「はい、魔王様!」
俺と魔王は受け皿に500枚の魔メダルをもとに、それぞれ魔メダルを台へと投入していく。ちなみに俺は左側の台へと座っている。
「差枚バトル、スターフゥーーーーーン!」
俺の魂のレバーオンと共に、俺と魔王のユーアージャグラーの打ち合いが開始された。
「ガコンッ」
盛大な音と共に、僅か三ゲームでCOCOランプを点灯させたのは魔王である。
「ふははは、簡単簡単!」
ヴィーンと超高速で回転するリールを、目押しをミスらず7・7・BARと見事そろえる。
「くっ」
7が三つ並ぶとビックボーナス、いわゆる312枚の魔メダルを獲得できる当たりである。たいして、今のような7・7・BARが揃うとレギュラーボーナスとなり、104枚の魔メダルを獲得できるのである。
当たっているのに悔しそうな魔王様である。
「このパターンは、いや。しかしREGが多い方が……」
ぶつぶつとつぶやく魔王である。俺の解析転写の魔法は、台の醍醐味を全て知識として植え付けるのである。よって、オカルト全般も伝わっており、設定差の大きいREGが出現した事を喜ぶべきなのか、朝一のREGはそのまま深くハマルというオカルトを信じるべきか一喜一憂しているのである。
「負けませんよ、俺も!」
俺達はそれからしばらくの間、熱く熱くスロット台を叩きあった。