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俺、異世界で旅スロします  作者: PP
第一章
10/34

10:レバー

「初めまして、貴方が勇者様ですか?」


 俺が宿屋オタノシミに入ると、いかにも勇者っぽい装備をした男が一人酒を飲んでいた。


「ん、見慣れない顔だな。誰だ?」


 俺を鋭い眼で睨めつけて来るが、臆せず俺は挨拶をする。


「私はメーダスロッテンと申します。今は旅をしておりまして、勇者様がここで休養されていると伺い立ち寄らせていただきました」


 俺は一礼すると、勇者様からの威圧が消え去る。


「そうか。してメーダよ、異常な魔力を感じるんだが貴様何者だ?」

「ただのスロッターですよ、良ければコレどうぞ」


 俺は酒好きさんから貰った酒の内、一本を取り出し渡す。途端、勇者様の顔が驚きに溢れる。


「はっ、あの仙人のとこでしか手に入らない幻の酒を持ってるとは驚いた。貰ってもいいのか?」

「はい、私も勇者という存在は憧れておりまして。是非にも」


 勇者様は酒を受け取ると、空になったグラスに早速とばかりに酒を注ぎクイッと一杯あおる。


「うん、美味いな。そうだな、実力者と見込んで一つお願いしたいことがあるのだがどうだろうか」

「何でしょうか?」


 勇者様は二杯目の酒を飲み干し、語る。ここより北にある地下迷宮に居る魔王討伐に参戦してくれないか、という申し出であった。現在も仲間が迷宮内に入っており、今も地下迷宮の攻略をしているとの事だ。


「本来なら俺も行くはずだったんだがな、先の戦いで相棒の剣が折れてしまってな。今はこのとおり、俺の魔力で剣を修復中で動けないんだ、頼まれてくれるか?」


 俺の小腹をちょいちょいとつつくビタ押しさん、小声でやめときなさいよと助言をいただく。が、俺だって男の子、一度くらい勇者の冒険を味わってみてもいいだろう。


「わかりました、俺で良ければ手伝わせていただきます」

「ははは、そっちが素のメーダか。その表情、良いな」

「勇者様こそ、突然現れた俺を認めてくれるなんて、そうそうできませんよ」


 俺達はニッと笑い合う、一人男の語り合いについてこれないビタ押しさんだけ頭を抱えていたのだが、この場でそれに気づく者は誰も居なかった。




「で、ここが地下迷宮か。始めて来たわ」

「メーダ、気を付けて頂戴。貴方が凄い事は知ってるわ、でも魔王とその領土で戦うのはとても危険よ」

「そ、そうだな。気を付けるよ」


 ビタ押しさんが異常に気を張っているが、ホールに通っている魔王様の本気に比べれば足元にも及ばない魔力にちょっぴりガッカリしているのだった。


「貴方達、ここは危険よ!?」


 俺とビタ押しさんが何もないなーと突き進んでいたら、唐突に声をかけられる。


「あっ、もしかして勇者様の仲間の方ですか?」

「そうです、って貴方達は援軍なのですか?」


 レイピアを片手に近づいて来る女性、隠しているようだが既にここまで来るための戦闘でボロボロのようである。


「あの、大丈夫ですか?」

「ええ、私は大丈夫よ……」


 声のトーンが下がる、道中にあった血痕はこの女性が血を流していない事から仲間だった人達のものなのだろうか。


「最悪ね、取り敢えずここでやり過ごしましょう」


 俺達を道中にあった小部屋に案内すると、そこで緊張を解いたのか一息つく。


「ここはセーフエリアよ、巡回している巨大な板の姿をしている魔物をここでやり過ごしましょう」


 話を聞くと、分厚い板状の魔物が徘徊しているらしく、物理攻撃も魔法攻撃も通らず苦戦の挙句、壁際まで追い込まれ潰されてしまうらしい。急遽横穴を作りセーフエリアを作ったものの、中に逃げれたのは自分だけだという。


「あの、良ければ俺攻略しちゃっていいですか?」

「やめときなさい、私達でもどうにもならなかったのに」

「そうよメーダ、私の直感だけどアレは一体だけじゃないわ。それに、魔王はそれ以上ってことでしょ。分が悪いわよ」


 俺はほんの少しだけ悩み、やはり相手が強いとは思えないので二人にはここに残るように伝え先に進むことにする。


「それじゃ、行ってくるから大人しくしとけよ?」

「もう私は何も言いません」

「メーダ、偵察だけよ? 危なかったらすぐに戻ってきなさいよ」


 本気で心配してくれているようなので、俺はわかったとだけ伝えセーフエリアを出る。すぐに先ほどの板状の魔物が俺の方に向かって動いて来るのを確認する。


「んー、こいつら知能はなさそうだなぁ。ただ動く物を認識したら押しつぶせって感じか」


 俺はそんな解析をしながら、右手に魔力を集める。瞬間、魔力で作られた長さ30㎝程度の棒を握りしめ、俺は必殺を繰り出す。


「レバーーーーーーーー」


 声と共に俺の握っていた魔力の棒を板状の魔物に突き刺す、勇者の仲間ですら傷つけられなかった魔物に魔力の棒が突き刺さるが動じず俺を押しつぶそうと突き進んでくる。


「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン」


 しかし俺は臆することなく、突き刺した魔力の棒に向かい拳を振り下ろす。


ーー刹那


 相手の体は爆発した。


「ふん、俺のレバオンに耐えれないなんて何て脆い」


 俺は必殺レバオンをこの後3度程使い、魔王の居る部屋へと辿り着く。


「キキキキキキキ」

「お前がここの魔王だな、何かいう事は無いか」

「キキキキキキキ」


 どうやら俺を餌としてしか見ておらず、言葉すら持ち合わせていないようである。解析転写をしたところでこいつは仲間にはならないであろう、ならばとる行動はただ一つ。


「そうか、生まれ変わったら良いスロッターになれよ!」


 俺は道中繰り返し使った必殺レバオンを叩き込む。


「レバーーーーーーー、オーーーーーーン」


 しかし流石魔王といったところか、相手は爆発する事無く耐える。が。


「フリーズ!」


 俺のレバオンに耐えてキキキと笑い声をあげたようだが、その直後に魔王の体は氷漬けになる。そして30秒の時を刻み魔王は爆発した。


「やっぱフリーズの瞬間は気持ちいいよな、うん」


 俺は一人納得しつつ、地下迷宮を攻略してしまうのであった。

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