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第2-3話

 ひとまず何かいい方法が思いつくまで時間稼ぎをすることにした。


「いろいろ準備もあるし、ここに入る前に八魔族特別室の話を聞きたいんだけど…」

「八魔族特別室の話ですか?いいですよ。」

コウは快く了承した。


 人と魔族の和平交渉は成功し、共存することになった。とはいえ、長い間争ってきたため簡単に仲良く出来るはずもない。本当に共存は可能なのか? 皆が疑問に思った。

そこである案が出た。

人と魔族が住む国―――― 人魔国を造り、人と魔族が共に生きることが可能かどうか調べることにしようと。

結論をいえば、やはり人と魔族は今まで争っていたため、問題は絶えなかった。しかしどうにかしなければいけない。そのために国は解決策として組織を設立した。


「八魔族特別室は人と魔族間のトラブルなどを解決するために出来た国立組織です。そしてここは人魔国です」


コウが説明している間、俺は持ったままずっと忘れていたリュックの中を探っていた。(コウの説明は一応聞いている)

ヨイヤミに投げ渡されたまま、まだ中を見ていない。もしかしたらこの状況を打破するような物があるかも…!!

だがすぐに俺の希望は潰えた。リュックの中には厚い本、薄い本、大きい本、小さい本、とにかく本だらけだ。共通しているのは俺なら絶対読まないような難しい内容ということ。

問題の解決に役立ちそうもない。リュックの中から本を次々取り出しては投げ捨てる。ほかに何かないのか! リュックに突っ込んでいた右手が、リュックの底にあたる。


「細かく説明すると長くなるので、今はこれくらいにしますね。ヨコクさん準備は出来ましたか?」

「じ、準備? えぇと…」

冷や汗がでて、俺の目が空をさまよう。なんて答えよう? どうしてこういう時に限ってコウの説明は短いんだ…?

無意識にリュックの中をまさぐる。すると右手が何か固い物に当たった。…何だ?

右手に収まるサイズ。ヒンヤリと冷たい。少なくとも本ではなさそうだ。俺は少しだけ希望を持つ。ともかくそれを取り出し、おそるおそる右手を開いた。

見ると淡く光った紺色の石。

石か…。

ため息をつく。再び希望が萎んだ。綺麗だけど、こんな物何の役にも立たない。

投げ捨てようと腕を持ち上げた時、


「さすがヨコクさん!魔力石を持っていたんですね!」


コウが興奮した声をあげる。


「しかもとっても貴重な空魔石です! これでどうにかなりますね!」


持ち上げていた腕を降ろす。空魔石? この石でどうにかなるのか?


「魔力石というのは、一見するとただの石ですが、魔力を蓄えることが出来る不思議な石なんです。その石は空間の魔力が蓄えられているので空魔石と呼ばれるんですよ。空魔石があれば、人間でも別属性の魔族でも空間系魔術を使えます!」


聞く前にコウが説明してくれる。

つまりこの石で空間系魔術を使えばいいってことだよな?たしか空間系魔術はテレパシー、空間隔離、テレポート…テレポート? もしかして


「テレポートを使えばいいのか?」

「ヨコクさん、正解です」

コウがパチパチと拍手をする。


「それでは早速テレポートをしましょう!」

「でも俺、テレポートの魔術の使い方なんて知らないけど…」


俺は魔術の使い方なんて知らない。学校は通っていたことがあったけど、最初の魔術の授業。先生の言葉が忘れられない。

『ヨコク君、キミは自分が魔術を使えるとでも思ってこの授業に出ているのかね? ハーフなんだから諦めなさい。前から言おうと思っていたのだが、いつまで学校に来るつもりだい? ハーフがいると迷惑だ』


「ヨコクさんどうしたんです?」


気が付くと、コウが俺の顔を覗き込んでいる。


「何でもない。それより空魔石はハーフにも使えるのか?」


先生の言葉がまだ頭をちらつく。


「使えますよ。使い方は簡単! 石に意識を集中して、行きたい所を念じるだけです」


コウの言葉を聞いて、俺の頭から先生の言葉が消えた。ハーフでも魔術が使える…! 俺は石を握りしめる。早く魔術を使ってみたい!

目を閉じ、意識を石に集中する。石の光が輝きを増した。後は行きたい所を念じればいいんだな。心の中で八魔族特別室と強く念じる。でも俺は八魔族特別室には行ったことがないから、ただ言葉で思うだけだ。これで上手くいくのか? 俺の頭に疑問がよぎる。

石を握った手に、温かく柔らかいものが触れた。目を閉じているため、それが何なのか分からない。

と、突然意識と身体がぐにゃぐにゃと歪む感覚を感じて―――― 何処かへと運ばれた。同時にガシャーンと嫌な音が響く。

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