愛しているのに。
自分が小説を書くようになって初めての作品完結させた作品です。読みにくい部分があるかもしれませんが、よろしければ見てください。
「殺してよっ‼そんなに私が嫌いなら!」
泣き叫ぶように言った野々原雛乃【ののはらひなの】に
「嫌に決まってるだろっ⁉」
大声で叫ぶようにそう返した。
いつからだろう、こんな関係になってしまったのは。
嫌いなわけがあるかよ…
大好きなのに。
愛してるのに。
殺せるわけがないだろ…?
「なら、なんで…殴るのよっ⁉」
腕を振り回しながら、体を震わせながらヒナはそういった。
大切なのにな…。
なんでだろうな?
…大好きだからこそ、この腕の中からヒナが消えるのが怖かった。
そしたら…気づいた時には、ヒナの白く細い首に俺の手があって…。
大切だからこそ、愛してるからこそ、俺は…ヒナを傷つけてしまっている。
「雛乃っ‼」
ただ、君の名前を呼ぶことしか出来ない。
君を傷つける自分が怖いのに、この後に及んで君から離れるのも怖いだなんて…馬鹿みたいだ。
「やめなさいよっ‼離してっ‼」
精一杯暴れる雛乃を力一杯殴る。
そして、この腕の中に閉じ込める。
「ヒナっ‼」
昔から呼んでいるあだ名で君を呼ぶ。
あぁ、また…。
君を傷つけてしまった。
「空海…‼お願いだから…。」
目の前にいるヒナは綺麗な顔が崩れていて赤く腫れてる。
涙を流しながら頭を下げるヒナをみて、胸が痛くなる。
「っ…。ごめんな…ごめん。」
「ヒック…。空海っ…なして…離してよぉっ…ヒク…っっ。」
離すことは出来なくて、でも傷つけることしか出来ない。
離したくないんだよ…。
でも…。
優しくする方法が分からない。
教えて欲しい…。
ヒナをただ、幸せにする方法を。
「ヒナ、ごめんな。大好きなのに…。」
こんな関係になって、もう三年がたった。
「空海ぃぃぃ…っ…やめてよっぉ…。」
俺が傷つけてるはずなのに、俺が悲しそうにするとヒナは許してくれることを知ってる。
そんな優しさに縋っていることに俺は…分かってる。
「私だって…空海のことっ…好きなのっ…‼グスッ…だけどっ…もう…限界だよ…ぉ…。」
明日は、三年目の記念日なのにな…。
俺たちは…。
「好きなの…大切なのっ…だけど、私には空海は重いよっ…‼ごめん…ヒクッ…ごめんなさいっ…‼」
「ヒナ…。」
ごめんは、俺のほうなのに。
「空海っ…ごめん…ヒクッ…なさ…ふぇっ…いっ…。」
いつかは、必ず終わらなきゃいけないと思ってた。
いつか…こんな日が来ることに気付いてた。
だけど、俺には君を離す決心がつかないんだ。
こんなにも、傷つけてしまったのにな?
「ヒナ…。」
俺が近付くとビクッと身体を震わせた。
こんなにもなるまで、俺は傷つけてしまった。
優しくする方法が分からないなら、俺が考えなきゃ。
最後には、幸せな顔をして笑うヒナを見たいから。
頬に手を当てる。
ヒナは目をギュッと閉じたまま、震えていた。
ヒナ…。
「痛いよな…。」
「痛いに…決まってるよ…ふぇっ…。」
せめて…今だけは…。
せめて、最後だけは。
「キス…しても良い?」
「えっ?」
「キス…。してもいいか聞いてるんだけど?」
もう一度、付き合い始めた時の俺に。
「は…え?」
「どっち?」
「…いい…よ?」
恥ずかしそうに笑いながら、嬉しそうなヒナ。
こんなヒナを見れるのも…今だけ。
今が最後。
これで、終わりだ。
「了解。」
軽くキスをした。
腫れている顔が違う意味で赤くなってるのに気付いて、嬉しくなった。
もっと…前からヒナの幸せを考えてあげられれば…。
失う前に…本当に失ってしまう前に気付いた。
君の大切さ。
失ってから気付く、なんてよく聞くけれど、それはきっと失う前から気づいてるけど目を逸らしてるだけだ。
「今まで…ごめんな?」
「空海?」
不思議そうに頭を傾げるヒナ。
「もっとさ…笑顔を見たかった。」
「くう…か…い?」
「大切だったんだよ…本当に。大好きだったんだ。」
「‼」
俺の言うことがやっと分かったのか、驚いた顔で俺を見る。
「傷つけたくなんか…無かったのに…。」
どうしよう…。
涙が零れるかもしれない…。
胸が…痛いよ…。
どうして…普通でいられなかったのだろう?
「ヒナ…。ごめんな。」
何度謝っても許されることではない。
心を傷つけた俺は、謝ることすら許されないかもしれない。
「俺が傷つけてるのに、俺が悲しそうにするとヒナは許してくれて…。俺はその優しさにしがみついてたんだよ、どうしようもなく。」
こんなにも…。
こんなにも、俺は弱かったっけ?
こんなにも…。
こんなにも、俺は君を愛しているのか。
「ありがとう。」
ただ…ありがとう。
大好きだから、愛しているから、俺は君に伝えなくてはいけない。
…お別れの言葉を。
「限界だったよな?気付いてたのにな。」
「っ…‼」
「ありがとう。大好きだったよ。傷つけてばっかで…笑顔なんか…幸せになんか出来なかったけど、大切だったんだよ。」
少しでも…別れを引き延ばそうとする俺は…せこいな…。
弱いな…。
わかってるのに。
気付いているのに。
「離しくなかったのに…。」
「きゃっ‼」
腕を引き、自分の胸にヒナを閉じ込める。
ヒナの小ささや、温かさ。
「ヒナ…。ヒナヒナヒナっ…。」
「くうかっ…」
ヒナが俺の名前を呼んで、抱きしめようと手を回そうとした瞬間に身体を離す。
ヒナに抱きしめられてしまったら、離れる覚悟なんて消え去ってしまう。
「‼」
「大切にしてくれる人と…幸せになれよ。」
「空海っ。」
本当は…。
本当の本当は。
俺のこの手で幸せにしたかった。
「バイバイ。」
そう言った瞬間に涙が…一筋流れた。
ヒナに背を向けて、部屋を出て行く。
「空海。あのね…?」
後ろから聞こえる愛しい声。
「何度傷つけられても嫌いになんかなれなかったの。大好きだったから。空海だったからだよ。」
「っ…。」
涙が…沢山溢れる。
声をもらさないように抑える。
「幸せに…なれよ。」
ただ、俺はそれしか言えないから。
「空海。私のほうこそ…ありがとう。」
「ヒナ。」
とてつもなく抱き締めたい。
ヒナ…。
どうして、こんな俺に…ありがとうなんて言うんだよ…。
「空海のおかげで…こんなにも恋愛の大切さに気づけた。」
振り向くな。
振り向いたら…我慢出来なくなる。
「空海のおかげで、これだけ深く愛せることも知れたから。」
我慢しろ…。
「傷つくばっかじゃなかったよ。だから…ありがとうっ。」
駄目だっ。
「ヒナっ。」
振り向いてしまった。
そこにいたのは、床に座り込んで泣いているヒナ。
抱きしめたい衝動に駆られたが、そんなことをしても、意味はない。
「ありがとう。」
そっと頭を撫でる。
優しく撫でる。
ヒナに触れた中で一番優しく触れた。
「じゃぁ…な。バイバイ。」
これ以上はいられない。
いちゃいけない。
「お幸せに。」
俺が願うのは君の幸せ。
俺じゃない誰かと結婚して、子供を産んで、幸せに暮らすこと。
合鍵をそっとヒナの横におく。
終わりを告げる。
俺たちの関係。
時計の針は午前零時を指す。
三年前に戻りたいとどうしようもなく願ってしまう。
来世では…幸せな二人でありますように。
読んでくださってありがとうございました。
好きだからこそ傷付けてしまう…。
大切だからこそ傷付けてしまう…。
形は違くても、そういう経験が自分にもありました。
だから、来世では、傷つけずに二人が愛しあえればいいなと思います。