表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イライザ  作者: 瑠璃華
幼少期編
5/7

お味はいかが?

────むずむずが消えました!

わたしは、朝っぱらから自室のベッドの上で歓喜しました。

ふっ、長い戦いでしたよ………。ですが、ニコラスお兄様の言った通り、一晩でむずむずは消えました。


か わ り に


なんと、本当に牙と歯が生え揃いました!!


シフォンのレースとフリルで飾られたドレスに着替えたあと、顔を洗い、そのついでに鏡も用意してもらいました。

一晩ですよ、一晩っ!侍女さんに用意してもらったピンクの手鏡をのぞきこめば、真っ白な歯が目に眩しいわたしの姿!!


「歯が生えましたー!牙も」


勢いよく廊下に出てトタトタと、フリフリフワフワな薄桃色のドレスを揺らして、家族のもとに走ります。

このお屋敷、無駄に広いのが難点ですよ。大理石の床が特徴な玄関ホールに、絵画や美術品のセンスよく置かれた広く長い廊下。お部屋の数は軽く二桁を超え、パーティ用のホールやサロンまであります。

一回探検しましたが、すぐにねをあげ、本当ならば極秘な見取り図を見せてもらいました。

そんな長い廊下を、頑張って走りました。


「ぁおっ!?」


そして、途中で転びました。わぉ。

廊下にしかれた赤いふかふかの絨毯は、毛が長く、擦れた鼻がちょっぴり痛いです。


「あぁっ!!イリー!?大丈夫かしら!?怪我はない?痛くない?」


通りかかったメリッサお姉様が血相を変え、同じく、朝の食事に向かおうとしていたのでしょうルーカスお兄様も走ってきます。


「大丈夫です。それよりも、歯が生えました!」


鼻擦っただけですから、心配はありません。

それでも心配そうにこちらを見る二人に、口をあんぐり開けて見せました。


「歯が生えたの、私の姫?おっ、牙もだね」

「まぁ!小さな歯に、牙もっ!!呂律もしっかりしてきているし、イリーは成長が早いわ。わたしは歯が生えるまで一週間と三日かかったもの」

「えへへ~」


すると、ルーカスお兄様が抱っこして、撫でてくれました。そこにメリッサお姉様がほっぺをぷにっとつつきます。

無条件で愛されるというのは、いつでも、ちょっぴりくすぐったくて、とても嬉しいものですね。

茉莉亜が小さい頃も、両親がこうして抱っこしてくれた記憶があります。

今更ながらに、良いところに産まれたのだと実感しました。


─────神様、ありがとうございますっ!


二人に寄り添われ、食事に向かいます。

あ、ヴァンパイアといえど朝日は大丈夫ですし、朝起きて夜寝ますよ。

魔界ですからね。

人間の世界では魔力が少ないために、夜しか動けないそうです。夜は月の力が満ち闇が辺りを覆いますから。

それを聞いた時は、魔力云々よりも人間がいたことが驚きでした。


「おはよう、イリー。むずむずはなおったかい?」

「おはようございます、ニコラスお兄様!なおりましたっ!!」

「おはよう、イリー、ルーカス、メリッサ」

「おはよう、わたくしのイリーちゃんにルーにメリッサ」


二人と一緒に食堂に行けば、ニコラスお兄様とお父様、それにお母様が次々に挨拶してくれます。

それに三人で挨拶して、食卓につきました。

ちなみに朝はみな、最初からワイングラスに血が用意してあるので、それを飲みます。

固形物などの普通のご飯も食べますが、朝は血だけです。

ちなみに離乳食は、血はまだ早いというヴァンパイア専用に、特別なものがあるそうです。

魔族って、常々思いますが不思議です。

器官はどうなっているのでしょうか………気になります、はい。


「お母様、お父様、イリーに歯が生えたそうですよ。ほら、ちっちゃな牙も」

「まぁ!!」

「これで普通のお食事ができるのでしょう?わたしもそうでしたもの」


メリッサお姉様と、お母様がにこにこお話しています。

はたしてわたしは普通のお食事解禁!になるのでしょうか!?


「そうね、少しだけならよいかもしれないわ。わたくし達が飲む、半分くらいを飲ませてみましょうか」


そう言ったおかあさまは、そばにあったワイングラスを優雅な仕草で取り上げました。

なみなみと注がれた真紅の液体の半分を別のワイングラスに移し、わたしの手に持たせてくれます。

おぉ、いよいよ解禁ですかッ!


「わたくしの可愛いイリー、飲んでごらんなさい?牙が生えたのならば、わたし達と同じものが摂取できるはずよ」


その言葉に頷いて、わたしはそっとグラスに唇をよせました。


「甘い香りがする………」


仄かに薫る、甘い熟れた果実のような香りを胸に吸い込んだあと、グラスを一気に傾けました。


「────」

「どうしたんだい、イリー?」


一息に飲んで、そのまま微動だにしないわたしに、ニコラスお兄様が心配そうに声を掛けます。

しかし、わたしはそれどころではありませんよ!!

喉をやく液体に、顔が火照ります。

──────な、なぜ?


「なぜに血がお酒の味なんですか………!?」


ブランデーのようなその味と、酔いがまわったようなその感覚にわたしはがっくりと倒れたのでした────。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ