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竜と勇者  作者: 渡辺 みつる
第1章 竜
2/2

01

ラノベって難しいです


「え...」


目覚め早々に思ったことは


「どこ...」


死んだ事よりも先に、天国へ来れてしまったことの衝撃の方が遥かに強いようで、悠然と回りを見渡している。

天国。そう呼ぶには、あまりに不細工な出来で、簡易的な天国と呼ぶ方が、この空間にあっているのかもしれない。白いと言うよりも、薄いグレーで、不穏な物を感じる。

これから極楽へ連れて行く天使も来る気配が無い。


「はぁ...」


と言うか薄々分かるが、俺は生きている...と思う。さっき、トラックに引かれてべちゃべちゃのトマトスープになったはずだが...

首から足先まで、完全に治っている。俺にそんな能力が... いやそれは無いだろ...


「やっぱ寒い...?」


つい溢れてしまった事だが、寒くなんて全然無い。と言うよりも何も感じないと言った方が良い。

起きて直ぐに気づいた、寒さや暑い、そう言った感覚まるで無いようで、やはり死んでいる? そう思ったが、痛みや体の感覚はあるからそれはない、はず。


彼は自分のあらゆるポッケを弄るが。ある違和感に気づく。

何も入っていないのだ、彼は元来から制服に限らず、ポッケにはレシートや紙屑、貴重品に至るまで、ありとあらゆる物が入っていたのだ。一時期は紙屑がポッケに溜まりすぎて、貴重品が一切入らず、パンパンに詰まったポッケのせいで、正門で止められることが何度かあった。


それ程、大切にしていた紙屑や貴重品。それらがぱったりと姿を消している。

捨てた記憶もない、と言うかさっきまで、スマホや財布に定期が入ってはず。

スマホは壊れてると思うが、それ以外は入っていないとおかしい。


何故か、俺は制服なのだ。つまり、轢かれたその後に何者かが、俺の体を治して、ここへ移動させて、持ち物を全部抜いた...?


いや...なんか全然盗まれたの方が...信憑性あるぞ?

と言うか色々おかしくてもうなんか...


「はぁ...どうやって帰るんだよ...」


助けて貰ったら身でありながら、そんな悪態をつく彼。

あのまま死んでいたらどうなっていたか。そんなものは想像もしたくは無いが、きっと今の状況よりは遥かに良いのだろう。

訳の分からない所に寝かされた挙句、追い剥ぎこそされなかった物の、持ち物を全て没収されて、帰る手段が無くなり、帰れなくなってしまった。

天国に行っていた方がマシだったのでは? そう思わずにはいられない。


彼は呪文の様なものを唱えながら、渋々と起き上がり、出口を目指すことにした。


◇◆◇


あれから3時間は歩いただろうか、今まで歩いてきて一向に出口が見つかる様子がなかった。


歩いても歩いても、見えてくるのは濁ったグレーの霧。いい加減頭が狂いそうだ。というかもう狂っているのでは? ずっと同じ景色だなんて。

小石のひとつも落ちていなければ枯れ木の一つもない、もしかすると同じ所を何度も歩き回っているのかもしれない。

そう思い、道を振り返り引き戻そうとしても、1面の霧のせいでどっから歩いてきたかも分からない。

体の自由が無くなっている気すらする。吐き気も止まらないし、手足の震えも止まらない、視界だってクラクラしていて、まともに歩くことが出来なくなっている?


出口は一体どこなんだ、大体俺はどこを歩いているんだ? 疑問が止まることなく頭を回し続ける。


そして発見がまた合った。それは環境音がまるでしない。通常歩いていれば、何かしらの音は聞こえてくるはず。ただこの霧の中ではそんな音は一切聞こえない、例えば風の音だったり木々が揺れて葉っぱが触れる音だったりするはずだが、そんな自然の音すら聞こえやしなかった。


絶望とはこの事を言うのではないだろうか。俺はこのまま意味の分からないところで死ぬのか?

せっかく生き返ったのにだ、こんなの理不尽すぎて笑えねぇよ。


段々と何もかも忘れて行くように感じる。何かが俺を蝕んでいる。分厚い毛布を背負っているような感覚。それが段々と背中から吸収しているような...


――死ぬ


――足もちぎれる


足の痛みだってそろそろ感覚が無くなりそうで、思考だってそうだ、もう回らなく..なって...無い?


「...ん...?」


確かに飛びそうなくらい、視界が回るし、クラクラする。

ただ何故だか、思考ははっきり回る?


何で? そう考えるよりも先に肉体に限界が来てしまった様で、俺は後ろへ無抵抗に倒れてしまった。


動けない、体が動かない。指一本も動かせない。

幸い仰向けで倒れたお陰で周りは見える。だが体が動かせないじゃ見えたってしょうがない。


回復する見込みはない、この状態から戻るとは到底思えない。

思考だけがはっきり回って、最悪の状況を常に冷静に考えてしまう。詰んでいる状況、俺は口すら動かせいないんだ、誰か来たとて、助かるみこみは...無いのだろう


その時、予想だにしない声が耳に届いた




「――ゴォォォ!!!――」

「!!??」




突然、何処からともなく聞いた事も無い叫び声が聞こえた。その叫び声は、俺の短絡的な思考を、フル回転させる程恐ろしいもので、体がの感覚が薄れてるにも関わらず、鳥肌がはっきりと感じる物だった。


ドン! ドン!


明らかに近づいてきている、化け物。体が芯から温まる感覚に、動悸が止まらない。


先程までの恐ろしいほどの冷静が微塵も無くなり、恐怖で動けなくなった体は、今からでも生きることを惨めに滑稽に模索し続けていた。


――やばい――


――死ぬ、死ぬ、死ぬ――


――怖い、怖い――


足音は大きくなり続けている。見つからないでと祈るがそんな事をお構い無しに大きな足音は、止まらなかった。


その時、霧の外から、豚の顔をした化け物が自然と入ってきた。それは豚の顔に、数多の動物から、ありとあらゆる暴行を受けて、限界まで頭を腫れさせ、焼き物を顔に何千回と押し付けられた様に赤く染っていて、醜悪と言う言葉では到底表せな風貌をしている。


想像を絶する、化け物に、彼は人間超越した恐怖を全身に巡らせる


その一瞬の対面に、到底意識を保てるわけも無く、彼の意識は暗闇に落ちていった。



◇◆◇





――おーい? ――ちょっと――





んん...?




――あれ...――魔力過多に――


――しょうがないなぁ――



「ぅ...オぇ!...おぇぇえ!――ぅおぇえ!...」



――よしよし――


こぇ...


「うぅっ!?――オェェえ!!??」


あまりの吐き気に、俺の意識は飛んでしまう


その時、彼女が、俺の腹部へと強烈なパンチを繰り出した


「ごフぉぉぁあ!!?」


何...!? どうなって、吐くの止まんない、胃液しか出ないのに...吐くのが...どうなっ―


「オェェェェ!!??」


「たすけ――オェェェェ!!?」


「ふぅ...」


「はぁ、はぁ、何がどうなってんの...」


そこは薄暗い洞窟で、薄気味の悪いグレー色の霧では無い。いやそれよりもだ、人前でものすごい吐いてしまった、しかも女性だ。


恐らく助けてくれた張本人なんだろう、ならめちゃくちゃ、申し訳ないことをしてしまった。


「あの...すいません...」


俺の背後に座って、俺の背中を優しくさすってくれていた彼女方へと体を向けた。


「全くだよ...僕の家荒らしてくれちゃってさ...」


俯いているため、まともに彼女の顔を見れないが彼女は、腕を組んで俺の事を睨んでいる


恐る恐る顔をを上げるて彼女を見た。肩まである金髪の彼女は、紫色の眼をして、自身の身長程の黒いローブを着込んでいた。


「おお...」


いままで現実で見たどの女性よりも遥かに綺麗な彼女に見とれてしまっていたようで、口を開けたままぽかんとしていた。すると彼女が口を開いた


「全く。なんで森に居たのかは聞かないけど...あんまり無茶すると死んじゃう所だったよ?」


「ああ...すいません...」


彼女は立ち上がり、すぐそこにある湖へ向った。

周りを見渡すと、そこは石で囲まれて。天井が遠いせいか、周りの広さよりも、ずっと広く見える。


「あの...俺は何処で彷徨っていたんですか?」


そう言うと、彼女はピタッと硬直し、ゆっくりとこちらへ振り向いた


「何を言ってるんだ? 君はあの森に入りたくて入ったんじゃないの?」


そんな訳あるか。気づいたらあそこで寝てたんだよ、そんな事を言ってしまいそうになる口をチャックする


「いえ、気づいたらあそこで寝てて...」


「寝てた!? なら殺されかけてたんだよ君!」


「ああ...確かに...」


あんな激ヤバな化け物がいる、所に眠らされていたなんて、傍から見れば、見捨てられて処理されそうになったと思われてもしょうがない


「あの森はね、魔物が大量にいる、危険地帯だよ。人を丸呑みしちゃう奴だったり、生気を吸収しちゃう奴だったり」


悠然と話す彼女の傍ら、ドン引きする俺。

やばいなんてもんじゃなかった、俺はなんて運が良かったのか、1つでも道を間違えてれば、即死だった。


「んで、君が捕まってたのは、特に厄介な魔物でね。体のあちこちにある穴から魔力で出来た霧を噴射して、獲物の周りに漂わせるの、その霧は、方向感覚や平衡感覚そして体の感覚を失わせる効果があって、弱った所を食べる奴なんだ」


「ええ...」


「平衡感覚や方向感覚を失わせるもんだからさ、同じところを何度もぐるぐる回っちゃって、絶対森から出られなくなるんだよねぇ」


どうやら運は悪かったらしい。まあそのお陰で助かったんだが、だとしても凶悪すぎるだろ、あったら最後、確実な死が決定するような奴が森に普通にいるだなんて、なんの能力も持たない俺が生き残るなんて詰んでね?

大体森からどうやって出んだよ。


「それにしても君...僕と出会って驚かないんだね」


「驚く?」


確かにものすごい美女だが、ぶっちゃけ俺のタイプでは無いからなんとも...


「そうだよ、僕、有名人なんだけど」


「うーん」


肩まである長い金髪に、紫色の眼。身長は165位か? 体つきはそこそこで黒いローブから浮き出る双丘はあまり大きいとは呼べない。年齢は18から23だろうか...大人びた顔立ちをしているからか、今出したどの年齢にでも当てはまる気がする。


「おかしいな...僕お尋ね者なんだけど」


「? どのくらい?」


「騎士団が探すくらいには...まぁいっか、そっちの方が都合もいいし」


「君に頼みたいことがあるんだよね...拒否権はもう無い」


「は?」


内容を聞くまでもなく、拒否権が消えてしまった。だが、この森から出る為には恩を売っといた方が良いのかもしれない。


「それは?」


「僕の相棒になって欲しいんだよねぇ」


「相棒?」


「そう、これから僕は、力を取り戻そうと思うんだ」


「力?」


彼女はそう言って、ローブを捲り出して、腹部を晒した。


「―え?」


あまりに急な為全然反応が出来なかった。急に何だ、そう思ったのもつかの間、俺の目に入ってきたの、へその上に埋め込まれた綺麗な青色の宝石だった。


「な、なんだこれ」


「見た事ないでしょ、これはね瑠璃の宝玉っていうんだよ」


「何ですか? それ」


「このアーティファクトは、力を吸収してしまうんだよ」


「アーティファクト?」


聞き馴染みのない単語に、つい聞き返してしまった


「驚いた...君は今生まれてきたの?」


「え...違いますけど」


「アーティファクトを知らない人間が居るんだね」


これって、異世界から来ましたって伝えた方がいいよな...そうしないといちいちこんなめんどくさい事になるし


「アーティファクトって言うのはね、色んな能力を秘めた石なんだよ」


「例えばこれ、これはとっても希少な物でね、世界数十個しかないんじゃないかな? 特に宝玉って呼ばれるものはその能力の頂点で、下から真珠に宝石があってね...」


「へー...」


「まぁとにかく、凄いものなんだよ」


「あれ」


説明に飽きたか...まあ俺も、なにも知らない赤子同然の奴が目の前に現れたら絶対めんどくさいけど...


「そしてね、この宝玉は、自分じゃ壊せないんだよ...」


「世界に存在する5つの大国が、これを操作する宝玉を持っててね、それを破壊しない限り、これは能力を止めないんだ」


「その為に、僕と一緒に、大国に殴り込みに行こうってね」


「は?」


「もう拒否権はないよ! 君さ霧の中にずっと居たせいで、魔力過多になってたんだよね。それを治すために、僕の体と君の体を繋げてるんだよね」


「は!? いやどう言うこと!? 魔力過多って何!?」


「君なんか、魔力の器量がものすごくちっさいんだよね...だから僕のと繋げてでっかくしたんだ。今から魔力を排出するんじゃ、確実に手遅れになってたからね、まあ突然おっきくしたせいでめちゃくちゃ吐いちゃったけど」


「共有...って...」


「そのままの意味、君と僕は一心同体って訳さ!」


「ええ...」


なんかもう色々と追いつけない...

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