からくり競艇人物外伝第6話:野宮あずさ編
※本編のからくり競艇〜黄金の波切り、魂のフルスロットル〜を読んでから読まれたほうが楽しめると思います。
外伝:『仁義なきギャル道 ―広島の氷華(自称)、海峡を越える―』
「ぶち暑いねー! 福岡のピットは熱気が違うわ、マジで溶けるんじゃけど!」
福岡競艇場のピットに、場違いなほど高い声が響き渡った。声の主は広島支部の野宮あずさ。金髪のポニーテールを揺らし、鏡を見ながら手際よくつけまつげを直している。その横には、オイルまみれのレンチが無造作に置かれていた。
「おい、広島の。そこは化粧室じゃねぇぞ」
呆れ顔で声をかけたのは、ポンコツ会の西野貴志だ。
「あ、西野さーん! お疲れさまですー! ウチのまつげ、右だけマブイのノリが悪いんよ、見守ってくれん?」
「知るか! 自分の機体のマブイのノリを気にしろ!」
「あずさ、あんまり西野さんを困らせるなよ」
渡辺優子が苦笑しながら近づくと、あずさはパッと顔を輝かせた。
「優子さん! あみ(深田あみ)から聞いとるよ、優子さんのダンプぶち格好いいって! 今度ウチにもやり方教えてーや!」
「……あんた、そんなキャラでよく首席(野田あかり)とやり合う気になったわね」
優子の言葉に、あずさはグロスを塗り終え、不敵に笑った。
その日の合同練習。あずさの視線の先に、ネオンピンクのマブイを放つ機体があった。山口支部の超新星、野田あかりだ。
「あ、あかりちゃんじゃん! マジで機体デコりすぎ、ぶち可愛い!」
あずさが自分のからくり馬を横付けして話しかけると、あかりは驚いたように振り向いた。
「え、うける。広島にもこういう子いんの? 師匠(誠)が『広島には硬派な奴しかいない』って言ってたから、マジ意外なんだけど」
「広島のギャルは『根性が座っとる』んよ。あかりちゃん、ウチらギャル同士、仲良くしようやぁ!」
「いいよ、あずさ。でもレースは別。うち、手加減とかできないタイプだし」
「望むところよ! ウチ、マブイ量はあかりちゃんに負けるかもしれんけど、気合だけは広島の龍にも負けんけぇね!」
レース開始。あかりのネオン属性が水面を鮮やかに照らし、圧倒的なスピードで独走態勢に入る。
一方、あずさの機体は、コアマブイの低さゆえに加速で一歩出遅れていた。
(……やっぱ、あかりちゃんのパワー、えぐいわ)
だが、あずさの瞳から光は消えない。彼女は、整備の合間に鏡を見ながら磨き上げた「超精密なマブイ効率化」を、その指先に集中させた。
「マブイが少ないなら、一滴も無駄にせんのが広島流なんよ……! 行け、ウチのからくり!」
第2ターンマーク。あずさは、あかりの引き波にわざと突っ込んだ。通常ならマブイ不足で機体が沈む。しかし、あずさはあえて機体の蒸気圧を瞬間的に「逆噴射」させ、波の反動を推進力に変換した。
「なっ……あの位置から差してくるの!?」
驚くあかりのインコースに、あずさの泥だらけの機体がねじ込まれる。
「根性見せにゃあ、広島の女が廃るんじゃけぇ!」
結果はあかりの僅差での勝利。しかし、あずさが見せた「低マブイでの強襲」は、ピットにいた全員を戦慄させた。
4. 女子ラインの結成
「あー、マジで悔しい……! あかりちゃん、強すぎ!」
ピットに戻ったあずさは、座り込んで「悔しいわー!」と地団駄を踏んだ。
「あずさ、あんたマジですごいよ。最後、うちのネオンに焼かれながらも突っ込んできたの、正直ビビったし」
あかりが手を差し出すと、あずさはその手を握り、勢いよく立ち上がった。
「あかりちゃん……! 決めたわ、ウチら『最強ギャルライン』作らん? 誠師匠や西野さんたちおじさん連中を、ウチらのマブイでひっくり返してやろうや!」
「いいかも。うちのテクと、あずさの根性。これ、マジで無敵じゃない?」
二人はそのまま、お互いのネイルを見せ合いながら「今度広島で牡蠣食べよ!」「山口の瓦そばもマジでおすすめ!」と盛り上がり始めた。その様子を遠くから見ていた誠は、「……山口と広島のギャルが手を組んだか。これからの公式戦、耳栓が必要になりそうだな」と、苦笑いを浮かべた。
息抜きエピソード:ギャル整備士の日常
あずさの整備スタイルは独特だ。
「このバルブ、ぶち硬いんじゃけど! 爪が折れるわ!」
と言いながら、特注の「カーボン製ネイル」で精密なボルトを回す。
実は彼女、「硬い金属を愛でる」性質をギャル流に解釈し、ネイルと機体整備を融合させた新技術を開発中なのだ。
「よし、これでマブイの伝導率アゲアゲじゃね。……あ、顔にグリスついた! 最悪!」




