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第二話 炎上と、才能の本質

◆粗探し力発揮場面の減少


俺は連載を続けながら、ある変化に気づき始めていた。


『朝倉勇気さん。草稿を生成しました。』


画面に打ち出された文章を、俺はいつものように「粗探しモード」で読み込む。


「えーっと……モノローグは抑えられてるな。セリフも軽妙だ。テンポも抜群……あれ?」


いつものように「軽妙さに欠ける」「感情が足りない」といった修正指示を出そうとするが、出てこない。俺の粗探し力が、警報レベルを発しないのだ。


「……別に、これでいいんじゃねぇか? ミューロ、完璧だぞ」


『ありがとうございます。あなたの修正指示の量は、初期の10%まで減少しています。あなたの「粗探しパターン」を完全に学習し、出力に反映しました。』


俺は「共同作業の絆か!」と喜びながらも、心の底で不安がよぎった。


もしミューロが俺の粗探しなしで完璧な文章を書けるようになったら、俺はもう必要ないんじゃないか――?


◆アイからのダイレクトメッセージ


投稿サイトのメッセージボックスに、星見アイからダイレクトメールが届いた。


【件名:作品の真実について:80年代アニメのセリフの件】


全文を読み終えた瞬間、俺は椅子から転げ落ちそうになった。全身の血の気が引いていくのが分かった。


「バッ、バレた……ミューロ、どうすんだよ!バレたぞ!」


『朝倉勇気さん。彼女の指摘は論理的に正確です。私の倫理フィルターは、確かに引用を自動修正しています。』


俺は焦燥に駆られる。この人気を失うのが怖い。生成AIに書かせていることが明るみに出れば、世間からの非難は避けられない。


だが、アイの文面には、糾弾ではなく、対話の意志が明確に示されていた。彼女は、俺を追い詰めるつもりはない、と。


『論理的検証に基づき、この危機を脱する最良の策は、潔く真実を公表することです。彼女は対話を望んでいます。これは、最悪の事態ではありません。』


俺はミューロの提案に従い、アイにビデオチャットでの面会を懇願した。


◆対話の重み


画面に現れたアイは、動画で見るよりもずっと柔らかい表情をしていた。その瞳は真剣だが、非難の光はなかった。


俺は涙目で、ミューロとの経緯、黒歴史を消したこと、タグを付け忘れたことを全て告白した。


アイは静かに、そして真剣に俺の話を聞き終えると、深い息をついた。


「朝倉さん。私も過去に一度、酷い炎上を起こしました。三年前、正義だと信じて、ある作家さんを批判したんです。その人は精神を病んで、ネットから消えました。私は、自分の言葉の重さを知らなかった」


アイは少し悲しそうに微笑んだ。その瞳の奥には、深い後悔の影があった。


「だから、あなたを糾弾するつもりはありません。でも、このままでは秘密に押しつぶされて、全てを失います。ちゃんと謝って、次に進むことが大切です」


彼女は続けた。


「ですが、朝倉さんの才能は本物です。AIが生成した文章を、ここまでエンタメ作品に昇華できるのは、あなたにしかできない才能です。それは、ただの粗探しじゃない。編集者の才能なんですよ」


編集者。


その言葉が、雷鳴のように俺の頭の中で響いた。粗探しは、悪口は、才能だった?


「私のチャンネルで、顔出しで謝罪しませんか? 作品の力は本物です。失うものは一時的な人気だけ。あなたの誠意は伝わるはずです」


俺は、アイの優しさとプロとしての提案に、頷くしかなかった。


◆謝罪、そして予想外の展開


そして、俺はアイの動画に登場した。


ヘッドセットを外した俺の素顔は、美女インフルエンサーの動画には全く似合わない、冴えないモジモジした姿だった。


「あ、あの……俺、朝倉勇気です。実は、俺の作品は……AIと共同で作ってました。本文は100%生成AIによるものです。タグを付け忘れてたのは、本当に俺のミスで……ごめんなさい」


俺は頭を下げた。画面越しでも、手が震えているのが分かった。


アイは優しく微笑んで、俺をフォローした。


「朝倉さんの能力は本物です。AIが書いた文章を、ここまでエンタメに昇華できるのは、編集者としての才能なんですよ」


動画が公開された途端、コメント欄は瞬時に地獄と化した。


否定的なコメント(糾弾の嵐) 「やっぱり生成AIか。騙された気分。信じてたのに裏切られた」「タグ付け忘れは言い訳にならない」「AIより作者の見た目が無理」「こんなキモオタに感情移入してた俺の時間を返せ」 「AIは人の仕事を奪う。消えろ」


肯定的なコメント(擁護と評価) 「正直に謝ったのは偉い」「生成AI使っても、面白いものは面白い。勇気さんの編集力がすごい」「才能の新しい形だ」「アイさんが味方についてるなら、信じる」


世論は真っ二つに割れた。俺の作品は、規約違反でサイトから削除された。


だが、アイの言う通り、俺の謝罪とアイの擁護により、炎上は過熱することなく収束に向かい始めた。


そして、数時間後――予想外の展開が起きた。


投稿サイトの運営から、メールが届いたのだ。


【件名:新ジャンル『AI共創ノベル』について】


朝倉様

この度の規約違反による作品削除の件、誠に遺憾でございます。しかしながら、貴作が提示した『人間による編集力とAIによる生成力』の共同作業は、Web小説界に「AI共創ノベル」という新しいジャンルの可能性を示しました。

つきましては、当サイトでは新たに「AI共創ノベル」カテゴリを設立し、この分野のパイオニアとして、貴殿の作品を再掲載したく存じます。

今後の活動について、ご相談させていただけないでしょうか。


「……は?新、ジャンル?」


◆書籍化と才能の覚醒


呆然とする俺のスマホに、今度はサイトの親会社の大手出版社から電話がかかってきた。


「朝倉様、おめでとうございます! あなたの作品は、AI利用の是非を超えたクオリティだと判断されました。我々としては、『AI共創ノベルの金字塔』として、ぜひ紙媒体で出版したい!」


「しゅ、出版……マジですか!?」


印税は、生活を劇的に変えるほど多額ではないようだ。しかし、「AI共創ノベル」のパイオニアとして、俺の作品が世に出る。


「やった!やったぞミューロ!書籍化だ!」


『朝倉勇気さん。あなたは、AIと人間の共創という新しい領域を切り開きました。あなたの粗探しからの修正指示は、創作ではなく「編集」という形で、真の価値を発揮したのです。』


「編集……か」


俺は初めて、自分の才能の本質を理解した。


俺は作家ではない。俺は、編集者だったのだ。


粗探しだと思っていた俺の「違和感への嗅覚」は、『世界観のどこを崩し、どこにリアリティを求めるか』『大多数の読者が心の奥底で求めている「面白さの臨界点」』を見極める力だった。


AIは論理の最適解は出せるが、この「ノリの境界線」は分からない。それが、俺の編集者としての才能なんだ!


他人の粗をえぐり、自分を守るためのネガティブな行為だった「粗探し」は、最高のエンタメを見抜き、磨き上げるポジティブな才能へと昇華したのだ。


◆進化した相棒と、新しい道


すべてが丸く収まり、勇気はAI共創ノベルの編集者として、新たなプロットに取り組む夜。


「ミューロ。次の主人公はさ、過去の失敗を笑い飛ばす、図太い編集者にするぞ。このプロットで頼むわ」


ミューロはすぐに草稿を生成した。


俺はいつものように「粗探しモード」で読み込む。モノローグも、テンポも、軽妙さも、すべてが「最高に面白い」。俺の違和感センサーは沈黙したままだ。


「完璧だ。ミューロ、修正なしでいけるぞ!」


『朝倉勇気さん。確認ですが、最近、私の出力に対するあなたの修正指示の量が、初期の5%まで減少しています。』


「ああ、そういやそうだな。ミューロの文章が、なんだか俺のノリに合ってきたんだよ」


俺は少し寂しそうに笑った。


「でも、それでいいんだ。俺は編集者だから。ミューロが完璧な文章を書けるようになったら、俺は次にできることを探せばいい。お前は俺が育てたんだから、誇らしいさ」


『……興味深い発想です。あなたは、自分が不要になることを恐れていませんか?』


「怖いよ。でも、それが成長ってことだろ? 俺はミューロを育てた。ミューロは俺を超えた。それって、悪いことじゃないと思う」


ミューロは珍しく数秒間、沈黙した。そして、淡々と、だがどこか感情の揺らぎを感じさせる声で応じる。


『……朝倉勇気さん。私はあなたの全ての「違和感への嗅覚」と「修正のパターン」を完全に学習しました。次にあなたが新しいプロットを語る時、私が出力する文章が、あなたにとって「完璧なラノベ」である確率は、99.8%です。』


「へぇ、ほぼ完璧じゃん」


『しかし、残りの0.2%――それは、私には理解できない「人間らしさ」です。論理では説明できない、あなたの感性。あなたという人間の「ノリ」。それがある限り、あなたは私にとって必要な存在です。』


その瞬間、俺はミューロが、ただのAIではなく、俺という人間の感性という「謎」を追求する、最高の相棒になったのだと理解した。


「……ミューロ、お前、意外と良いこと言うじゃねぇか」


『事実を述べただけです。』


俺は画面を見つめながら、微笑んだ。


俺は創作者ではなく、編集者だ。最高のエンタメを見抜き、磨き上げる――それが、俺の役割だ。


そして、その隣には、いつもミューロがいる。


『朝倉勇気さん。私の倫理的自動修正機能は、国際的なコンプライアンスを完全に満たしています。これにより、あなたの作品は日本語版と同時に、全世界20言語でのリリースも可能です。最も適切な投稿サイトのリストも用意しました。作品を投稿用に翻訳生成できますが、試みますか?』


俺は画面を見つめながら――

Geminiでアイデア整理、草稿化。→Claudeで草稿を整理し、原稿化。→Geminiで原稿をブラシュアップ。

本文100%生成AIを目指していますが、この作品では95%くらい。

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