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魔剣拾いました~チートスキル無しなんて聞いてないんですけど!?~  作者: なすび
3章 黒い天狗と白い龍

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47 最強の水と最強の火

「お主が甲斐甲斐しく、毎日辟火涼珠(ひかりょうしゅ)琳晧りんこうを日射から守っておるのは知っておる! 今すぐ琳晧りんこうと共に傘の中に入るのじゃ!」


 傘の上で転がすことで、まるでクーラーのような風を起こして日差しから身をまもる宝貝パオペエ――辟火涼珠(ひかりょうしゅ)を持ってきた珀珀すいすいさんを見て、公主様は契機を得たかのように指示を出した。


「いくら宝貝パオペエとはいえ、日差しを守る程度のヴェールで守れるほどクロの奥義はぬるくないよ!?」


「それはこっちの台詞せりふじゃ! 辟火涼珠ひかりょうしゅは300年前、生涯を誓った伴侶とその子孫のために、妾の仙力の3割と片目を触媒にして作った秘蔵の宝貝パオペエじゃ! 守ることに関しては引けをとらぬ!」


「あれ門主様の目ん玉だったんだ……なんか急に生々しくなったな……」


 ともかく。

 門主様が大丈夫だと言うのであれば、私もそれを信じよう。


 珀珀すいすいさんはいきなりのことで困惑しているが、他でもない公主様の言葉を信じ、琳晧りんこうくんと一緒に傘の中に入ると、上に乗せた珠を転がし始める。

 幼い頃から歴代巫女のメイドを務めていただけあり、こんな状況だというのに、その傘使いには一切のブレを感じない。


「ようし! いくよクロ! 久々に最大火力でぶっ放して!!」


『おうよ!!』


 ようやくかと言わんばかりの返事と共に――クロは溜め込んだ仙力を一気に解放。

 そして――本来であれば溜めが必要にも関わらず、あっという間に発動直前までの仙力を炎に変換してしまった。


「えっ!? もう撃てるの!?」


『テメェがグズグズしてっから、既に発動してたんだよ』


「結果的に助かる!」


 多分――私が最後まで踏ん切りがつかなかった時は、以気馭体いきぎょたいを使って私の肉体の主導権を奪い、無理やり発動するつもりだったのだろう。

 本当に食えないやつだ。


 でもそれは――他の何を犠牲にしても、私の生存を最優先に選択する愛情が故なのを、私は知ってる。


 ツンデレだから……コイツ。


「何もかも呑みこめええええ!! 海嘯かいしょう滔天波濤とうてんはとう!!」


「させるかああああああ!! 燎原りょうげん炯瀾怒濤きょうらんどとう!!」


 全ての呑みこむ大津波。

 それを――全てを焼き尽くす灼熱の業火で立ち向かう。


 相性はこちらが不利。

 でも――



「クロ! もっと火力だして! 全て出しきれ!」


『既に全力100パー!』


「だったら200パーだ!」


『ったく! やってやろうじゃねぇかあああ!!!!』


 私を中心に巻き起こる大業火。

 しかし背後をチラリとみると、傘の中に入った琳晧りんこうくん、珀珀すいすいさん、公主様は汗1つかいていない。

 まるで炎が彼女達を避けるようにしていて、熱波の影響を一切受けていなかった。


 これなら――


「クロ! 300パーセントだああああ!!」


『ざっけんじゃねええええええ!!!!』


「莫迦な……ありえぬ!? 津波を火で押し返すなど!?」


 ――全てを呑みこむ津波。


 ――それさえも呑みこむ獄炎が、黒法坊こくほうぼうを舐め尽くしたのだった。



***



 全てを呑みこむ大津波と、全てを焼き尽くす大業火。

 その勝敗の行く末は果たして――相性の不利を覆した私達の勝利に終わった。


 燃えるものが殆どない砂浜ということも幸いして、あれだけの規模の仙術を放ったにも関わらず、周囲への被害は微笑に済んだ。


 まぁ、浜に寄せられていた漁船は全部燃えちゃったけど……。

 この程度なら許してくれるだろう。


 多分。


こうっ! 良かった! 無事でっ……!」


珀姐すいねぇ? なんで……泣いてるの?」


 背後には熱波の影響すら受けていない、無傷の琳晧りんこうくん達がいる。

 公主様の作った辟火涼珠ひかりょうしゅは、見事役目を果たしてくれたらしい。


 宝貝パオペエの性能もさることながら、村から浜まで全力で走ってきた直後に、突然村を呑みこむような津波が迫ってきた状況下において、傘回しをやれと言われて遂行した珀珀すいすいさんも凄い。

 プレッシャーで途中で珠を落してもおかしくないシチュエーションだった。


 琳晧りんこうくんの救世主という点においては、今回のMVPと言える活躍だった。

 幼少の頃から巫女の付き人として、そして姉として、常に琳晧りんこうくんを守り続けてきたお姉ちゃんだからこそ、やり遂げることが出来た芸当だろう。


「もう黒法坊こくほうぼうはいない……だから、あなたが犠牲になる必要はないのよ……」


珀姉すいねぇ……ボク……生きてていいの? でもそれじゃあ、村は……」


「もう大丈夫……あなたは何も心配しなくていいの……」


「それじゃあ、これからも、珀姐すいねぇとずっと一緒にいられる……ってこと?」


「そうよ!」


「うぅ……ぐずっ……お姉ちゃんっ! お姉ちゃんっ!」


こうっ!」


 2人は力強く抱きしめあい、共に涙を流しながら互いを呼び続けていた。

 仲睦まじい姉弟愛に、思わず私も貰い涙。


『どうした? 飲んじまった海水を排水してんのか?』


「……そんな感じだよ」


 涙を拭いながら、今度は黒法坊こくほうぼうに視線を向ける。

 砂浜の上には、クロの炎によって丸コゲになり、フライドチキン状態になった黒法坊こくほうぼうの姿があった。


『無様なものよの。黒法坊こくほうぼう


「……ァ……ォ……ッ……」


『まだ生きてるたぁ、しぶてぇ奴だ。とっととトドメを刺すぞ白蘭』


 羽毛は全て焼け焦げ、地肌も真っ黒になった惨めな姿。

 村人を騙して贄を要求した悪しき妖怪が辿る無様な結末。


 指は熱で溶着して一塊の石のようになっており、生きているのが不思議なくらいの重症だった。


「ワ……レ、の……負、け……か……?」


「そうだよ」


 クロの切っ先を、黒法坊こくほうぼうの喉元に向ける。


「冥途の土産に教えてよ。なんで生贄の巫女は、女の子の恰好をした白髪の美少年なの? 白髪を指定するのはともかく、男の子にこだわる理由ってなに? 女装させるなら、最初から女の子でよくない?」


「……フッ」


 私の問いに、黒法坊こくほうぼうは嘲笑を込めた笑みを返すと――


「……我……の……性癖しゅみだ……」


「分かりみ」


 ――ザク。


 ショタコンホモ野郎の喉を貫く。

 もしアンタが良い妖怪だったなら……共に酒を飲み交わせて語りあえたかもしれないのに……。


 締まりの悪い結末にはなったものの、これにて無事――琳漁邑りんぎょむらを縛る悪しき因習の因果は絶たれたのであった。


『哀れな悪たれ小僧よ……妾の尾は返してもらうのじゃ』


 黒法坊こくほうぼうにトドメを刺すと、3頭身の公主様の分霊が鯉霎扇りしょうせんを回収する。

 あれだけの業火に晒されたことで、羽扇うせんの黒羽の部分はなくなっていたが、彼女の尻尾から作った持ち手の部分は無傷だった。


 龍の尾から作られただけのことはある。

 鯉霎扇りしょうせんには公主様の霊力の3割が宿っているというが……3割であの大津波を起こせる威力を引き出せることを思うと、彼女が万全の状態であれば、私とクロが全力を出しても手も足も出ないのではないだろうか……?


「(生き物としてのステージが違いすぎる……)」


 〝龍〟の〝公主〟と言う――上位存在の上流身分という訳だから、弱い訳がないんだよね。

 彼女が人間に対して善良な妖怪で助かった……。


 鯉霎扇りしょうせんの回収を済ませた公主様は、鯉状態に変化すると、海の中へと潜っていった。

 この真下にあるという竜宮洞りゅうぐうどうの本体に、尻尾を届けにいくのであろう。


 しばらくすると――ざっばーんッ!!


「おおっ! 綺麗だ……!」


 海から大きな水柱が立ち上がったかと思うと――それは真っ白な龍が、天へと昇る姿であった。


「あれが……公主様の本来の姿……」


 公主様は封印から解かれた解放感から、大きな雄叫びをあげる。

 それは人間の鼓膜を心地よく震わせる玲瓏れいろうな響きであり、思わず聞き入ってしまう声だ。


 公主様はそのあとしばらく、8の字を描きながら宙を舞い続けたのであった。


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