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魔剣拾いました~チートスキル無しなんて聞いてないんですけど!?~  作者: なすび
3章 黒い天狗と白い龍

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45 初めての水中戦!

「がぼがぼっ!?」


 海中から飛び出してきた黒法坊こくほうぼうによる奇襲。

 予想外の場所からの攻撃に不意をつかれ、海水を大蛇のように形成した水の塊に取り込まれ、そのまま海中へと引きずりこまれてしまった。


 舌の上が塩分に刺激される。


「(落ち着け私! エラ呼吸が出来ない私にとって酸素は有限。無駄な体力の消耗を押さえろ)」


 深呼吸――はできないので、息をとめたまま全身の力を抜く。

 ゆっくりと目をあけるとどうやら、渦を巻いた水でできた球状の檻に囚われているらしい。


「(クロは大丈夫?)」


『海水で錆びる程やわな作りはしてねェが、いつまでもいたい場所でもねェ。早い所地上に出るぞ』


 しかし――手を伸ばすも、渦によって弾かれてしまう。

 

 なるほど。

 これが仙力で水を固めて対象を閉じ込める水縛牢すいばくろうの術か。


「(なら――刻炎こくえんッ!)」


 ――斬ッ!!


 仙術には仙術。

 クロに炎を纏わせて、海中で一回転。

 シンクロナイズドスイミング選手のような華麗な動きで放った斬撃が、海水で作られたスフィアを破壊する。


 このまま地上へ出ようとするも――


吠水之刃はいすいのじん!」


 ――斬ッ!


「ッ!?」


 横方向から飛来するウォーターカッター。

 長年の経験で研ぎ澄ました感覚で、クロを振って撃ち落とす……が。


「自慢の火の仙術も、水の中(ここ)ではワレの攻撃を防ぐので手一杯のようだな」


やっこさんは水中戦をお望みのようだぜ』


「(勘弁してよ……こちとら25メートルギリギリ泳げるかどうかなのに……)」


 私に続いて黒法坊こくほうぼうも海の中へとやってきた。

 地上に住む妖怪にも関わらず、私と違って水中でも苦ではなさそうだ。


「ようやく思い出したぞ。貴様――白袍の白蘭であるな?」


「(妖怪界にも私の名前が轟いているとは、光栄だね)」


「諸国を流浪しては、道行く妖怪を見境なく斬り伏せる野蛮な剣士と聞く。妖怪の一席を連ねる身として、ここで成敗してくれようぞ!」


「(それは語弊がある!)」


 別に見境なく斬っている訳ではない。

 人に迷惑をかけるタイプの妖怪だけだ。

 それにどちらかと言うと、妖怪よりも人間の悪党の方が斬っている。


 しかしまあ、妖怪側からすれば、目をつけられれば何が何でも殺してくる狂戦士だと思われても仕方はない……のかもしれない。


「海の藻屑もくずとなれ! 威風恫々(いふうどうどう)!」


 ――突ッ!!


「ッ! 刻炎こくえん!!」


 ――ギィンッ!!


 黒法坊こくほうぼうは海中にも関わらず、地上と同等の身のこなしで、仙力を纏った突進を繰り出してくる。

 突き出したくちばしを尖端に、ソニックブームめいたスクリューを纏わせた体当たり。


 それをなんとか受け流す――も。



 ――ぐるんッ!


 奴はイルカのような軽快な動きでUターン。

 一方私は馴れない水中戦で、崩れた体勢を立て直す暇がない。


 黒法坊の突進、その2撃目が眼前に迫る。


「(くっ……そぉ!!)」


 ――がぼがぼっ。


 肺に残した貴重な酸素を漏らしながら、歯を食いしばって刀身クロで受けた。

 しかし――先ほど纏わせた刻炎こくえんによる炎は、既に水の中で無散してしまった。

 仙力が纏っていない刀身で受け止めるのは敵わず、なんとか刃を滑らせるようにして受け流す。


 しかし……。



 ――ガリガリガリガリッッ!!



「(痛っっっったいなぁ……もうぅ!)」


 受け流す際に黒法坊こくほうぼうの猛禽類のような嘴を、手の甲から肘までをなぞるように喰らってしまった。

 割かれた皮膚から血が溢れ、海中に無散していく。

 傷口に染み込む塩分が無視できないくらいに痛い。


「ふはは! もう息も限界と見える。どうれ、貴様が悶え喘ぎながら、苦悶の表情で溺死する様を見届けてやろう」


 黒法坊こくほうぼうはニヤリと笑うと一定の距離を取ったまま、腕を組んで私を見つめる。

 あいつは水中でも地上と同様に動くことの出来る仙術を習得している事を思い出す。


 地上で空を飛べる天狗が水中活動のすべを手に入れたのなら、それは空を舞うように海を駆けることが出来るのと同じ。

 火属性の仙術が水中ですぐに無散してしまうのも相まって、相性は最悪だ。


「しかし貴様の持つ火を自在に操る宝貝パオペエはなかなかの業物と見る。貴様の死を見届けてから、我の物とするとしよう」


「(そんなに欲しけりゃ今くれてやるけど?)」


「命乞いか? 残念だったな、貴様は苦しみながら溺死させると決めたのだ! 諦めて死ねい!」


 クロに興味を示したので、クロをわざと渡して肉体を操る仙術――以気馭体いきぎょたいでもって自害させようとしたが、どうやら引っかかってくれない様だ。

 私が死んだ後、黒法坊がクロを回収して触れた際に、私の仇をとってくれるかもしれないが、それではもう遅い。


 ……。


 …………仇、取ってくれるよね?


『…………』


「(なんとか言ってよぉ!)」


 薄情な相棒に辟易しながらも、この状況からの打開策を考える。

 しかし脳味噌に酸素が巡っていない状況で、妙案が浮かび上がるはずもなく。


「(そろそろマジで息がヤバい……!)」


 万事休すか……そう思ったその時。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴッ!


 下方から何か……音が聞こえる。

 黒法坊こくほうぼうの攻撃かと思ったが、どうやら違うようだ。


 どんどん近づいてくる。

 それは――魚?


 いや……違う。

 あれは……!



 それは真っ白な巨大な鯉だった。

 ぶちが1つもない無垢柄の鯉。

 その神秘的な姿には見覚えがあった。




『白蘭! 助太刀にきたぞ!』

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