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緑海嘯  作者: 大石次郎


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46話 たぶん夏の日の匂い

もう食ってんだか何だかって具合だが、光の糧を噛ってみながら何とはなしに、あの日から半年くらい前のことを思い出していた。

この糧は星のこれまでと繋がってたからかもな・・


古代の終末の戦いとか、それに至るまでとか、色々見えたが、まぁそんなのはどうでもいいや。そいつらの話はそいつらのことだろ?

オレがやっぱり、しつこく引っ掛かったのはイズモクラの森のゴーレムの残骸の隠れ家でまだ暮らしてた頃。


最近は逞しくなって元気だったアマヒコが風邪を引いた。

花混じりに普通の薬は利かねぇ。そもそもオレ達の引く風邪が人間の引く風邪と同じかどうかもよくわかんねぇ。


オレは油断せず花混じりにとっての特効薬、大樹虫をイズモクラに掴まえに行くことにした。

蔓を使って緑壁を降りる。

材質が竜化した遺跡の街。大樹虫自体はそこらにいる。せっかくだからいいのがいい。あと売れそうな素材も何か拾ってくか。前にブースト商会で買った魔力式電熱送風器(でんねつそうふうき)が壊れちまったんだよな。髪、乾かしたいし・・


「お、竜鱗石(りゅうりんせき)みっけ! 評価高いヤツじゃねーの?」


オレは拾い物しながらイズモクラをウロウロした。と、


「オイっ! 森のガキだっ」


「勝手に入るなと言ってるだろ?!」


竜教のヤツらに見付かっちまった。


「ヤッベっ」


とんずらだ! 駆け出したが、ちょっとあんま来たことねー辺りだったから、変な狭まったとこに入り込んじまった。何か妙に場の魔力が強い。


しょーがねぇから蔓を使って壁を越えると床が崩落してて、その穴から強い魔力の光の粒が立ち上ってた。


「お~、何かスゲぇ。あ」


穴の縁で覗いてたらいきなり縁が崩れた。オレは慌てて蔓を手近な崩れて竜化した柱に伸ばして結んだが、


「アァァヴゥゥッッッ!!!!」


穴の底から毛の生えた一つ目のクソデカい蛇みたいな魔物、リュウミャクヅチ、が飛び出してきやがったっ。


ブーストランス、間に合うかっ? つーかコレ勝てんの??


オレが総毛立ってると、ガツン! ボロ布を纏った大樹虫が回転体当たりをリュウミャクヅチの頭部にぶちカマし、続けて白い炎を吹いて顔を焼き、落下させた。

口髭の触手を伸ばしてオレと反対側の朽ちた柱に結んで上に飛び上がるボロ布を纏った虫。


「おおおっ? ありがとな! お前は食わないでやんよーっ!」


「・・ふんっ」


ボロ布を纏った虫は鼻で息を吐いて、また触手を伸ばして去っちまった。


思えばあれ、ラシュシュだったな。へへ。


その後、何だかんだで竜教のヤツらをまいて適当な大樹虫を生け捕りにしたオレは森の隠れ家に戻った。


「ごめんね、姉さん」


寝床で少しやつれててるけど、熱で艶っぽくなってるアマヒコ。コレに関しちゃ、月一で風邪引いてほしいくらいだぜっ。


「ちょうど売れる素材集めようと思ってたからよ? でも今日、何か自我あるっぽい虫がいたぜ?」


オレはテキパキと調理の準備を始める。


「関わらない方がいいよ、きっと・・」


「だなぁ」


調理は時間との勝負! 手際も重要っ。大樹虫は加工しないと死んですぐに滋養が落ちるし、死骸が土に触れちまうと草木の塊になってスゲぇ生い茂りだすっ。

前に試しに土を入れた鉢に大樹虫の死骸を突っ込んでみたら、家中植物まみれにされて隠れ家が1つ台無しにされたことあるからよ。


とにかく処理だ。まず縛ってから、洗い、樹蜜を酸っぱく発酵させたのを入れてまぜた水の桶に浸けて1時間くらい半殺しにして内容物を吐かせる。

大樹虫は土や水、劣化した竜化遺跡の破片を口にするんだが、コレが残ってると不味いし、腹壊したりする。


吐かせて仮死状態の虫を桶から出したら、たまに糸吐いて反撃してくるのに注意して眉間にナイフを刺してブッ殺す。


それから喉? の辺りを捌いて血抜きする。この血は樹蜜と発酵させると強壮剤になる。薄めると普通の人間も飲めるから売れたりもするな。


血抜きが済んだら背の殻の繋ぎ目に1枚ずつナイフを入れて剥ぐ。


剥いだら背肉に切れ込みを入れて背わた? を取る。背わたを取ったら脚が邪魔だが腹側の内臓も取る。こっちは塩辛にできる。


顔は目がデカいのと死ぬと、カッと目を見開いてしんどいから料理鉈で切断しとく。脳は食わねぇ。薬効が強過ぎて酔っ払ちまう。尻尾の辺りもカット。


下茹でする。茹で上がったらワシャワシャしてる脚が取れるようになるから全部取る。脚の根元は火の入りが甘い。カットしてここだけまた軽く茹でる。


その間他の部位は劣化しないように乾燥させたルクローリエの葉を入れた水に浸けとく。脚の根元も茹で上がったら粗熱が取れるまで同じ処理。


済んだら水気を切ってプリプリしてる身を食べ易くザク切り。これにニンニク草、モガリレッドペッパー、黒ロズマリン、ポイポイリーフの粉と塩と蜂蜜を練り込み、キビ粉を付けて雪椿(ゆきつばき)の油で揚げ焼きにする。

あとは生のポイポイリーフと一緒にキビ粥とサッと煮て、


大樹虫の香草揚げ入り粥!!


の出来上がりだっ。いやっほぅ。


「ありがとう、姉さん」


「時間掛けても全部食えよ?」


「うん」


2人ではふはふ食べる。汗かいちまう。


「ずっと森で暮らそうね」


「ああ、一緒だぜ?」


食べ終わって顔色がよくなったアマヒコは眠った。

スヤスヤ寝てる。


元々元気なオレにはこの粥はちっと効き過ぎた。

眠ってる頬にキスしてやろうと思った。

で、あの女や、オレの為にあの女を殺した幼いアマヒコを思い出すしかねぇ。

動悸がして勝手に、口に、キスしちまった。


「・・・」


夏じゃねーのに、身体が燃えちまう。


オレは虫のガラを捨てる為に隠れ家を出た。


半殺しに使った桶にガラを全部入れたのをこの間、香草類を取りきってスカスカになってた草地にぶちまけると一気に草花が育って若木もニョキニョキ生えてきた。


一時的に魔力が強くなり、うっすら光の粒が見える。


「・・そろそろオレ、家出ないとな」


ぼんやりした光を見ながら呟いた。


そっからノロノロと言い訳に言い訳を重ねて半年は過ぎて、その日になった。



───────



光の穂を食い終わった。陣が解ける。


「八つ当たりしてごめんな、耳長」


遅れてグズグズ泣けて、何かやたら光る涙が溢れてきちまう。


(ココロ、星は祝福します)


力が高まり、発光し、尾が生え、犬歯と爪が鋭くなり、靴の先が破け、額の上に角が1本生え、翼も生えた。


生粋の竜達と違うのは身体中に草花を纏ってること。ゾンダルシュにブッ飛ばされたあの最強野郎っぽいな。


だがその先らしい。変化後に光輪が背後に出て、感覚が拡大した。


どこまでも見える。千竜神殿の底の竜王が目を開いた、ニルンレアによく似た男と、目が合う。


疲労と傷は癒えてゆくが、片手で押さえて顔の傷が消えるのは阻止した。


涙は止めた。いい加減にしろ、オレ!


「教訓だぜ」


欠けてたナガマキは修復されて、何だか抽象的な形になっちまったな。


(ココロよ、これでお主は竜王と同じ域の存在となった。しかし、緑海嘯を起こす、柱の樹(はしらのき)へのアクセス権は以前、竜王イ・レアが持っておる。彼を倒し、アクセス権を奪い、速やかに緑海嘯を止める。それがお主の最後の仕事じゃ)


「マジでダルい。早く4000年後にエッチなことしてぇよ」


(意識低過ぎて仰け反るわいっ。あと4000年もあるんじゃ、もう数時間くらいは働くのじゃ!!!)


「・・わ~ったよ。じゃ、モパ公、ウラドーラ。皆、オレ、行ってくるわ」


「がんばるんだぞっ? ココロ、デデの次にお前が好き!」


「頭が起きるまで世界を保ってくれねぇか? 頼む」


(陛下は竜王になられて人としての意識をほぼ保てなかった。君は、彼より強い・・)


(ゾンダルシュに習い承認したい。君の勇気を)


(グッドラック!)


飛んでこうかとも思ったが、行ける確信はあった。オレは念じイ・レアとかいう名らしい竜王のいる神殿地下の空間の入り口にテレポートした。


光の森が見える。


(良い素材がゴロゴロある。身なりを整えておくかの)


ラシュシュはオレの足元に輝く姿で現れると周囲の素材を引き寄せて変化させ、オレの装束を造り、自分のマントと冠も造った。


「ぶははっ、ラシュシュ! 何だよその格好っ。冠てっっ」


(お主にも被せたのじゃ)


「え? あーっ?! ちょ、やめろよ~。子供の本の登場人物みてぇだろぉ」


(お揃いなのじゃ。場をわきまえた正装なのじゃ! さ、行くぞい)


ナガマキに戻らず普通に這って進むラシュシュ。珍し。


「何か、スゲぇ高い飯屋に入るノリだな」


(大体それで合ってるのじゃ)


「適当に合わせてんだろっ、たくよぉ」


何か調子狂いつつ、オレも続いて光の森の空間に入っていった。


超いい匂い。甘くて涼しい気配もあって苦くて、ツンとする。たぶん夏の日の匂いだ・・

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