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緑海嘯  作者: 大石次郎
35/48

35話 またデンジャー!

ビビア砂漠は魔物も強ぇし、砂漠だし、今も貧弱な文明の人類じゃコミュニティはほとんど無い。


例外なのはラミア族だけ。バルタン、ワーリザード同様、大樹虫を受け付けない。強壮な種族。


下半身は大蛇の女だけの種族だ。交配には他の人型種族の男がいるらしい・・


「夢がある種族だな。イタタっっ?!」


砂漠を行くティアビルケン号のブリッジで、資料片手に余計なことを言ってモパ公に腕を噛まれるデデヨジカ。


「ラミア族は素で竜狩り並みの力を持つ種族だ。連中はこの2000年あまりの間に砂漠にあった緑壁の竜の墓所も竜教の連中の進出も、全て自力で潰してる。油断するなよ?」


(ある意味、彼女達の方が正統な竜族とも言えるくらいだ・・)


「正統だろうが邪道だろうが知らね。管理してる竜の糧は頂くぜっ!」


(その意気じゃ。ラミア族は結局傍観を決め込んだ後退種族。悪足掻きを始めたワーリザードどもの方がまだ見込みがあるわい。暇にしておるヤツらじゃから、デデヨジカ辺りを土産に置いてゆけばすぐ話もつくのじゃ!)


「ちょーいっ?! 勝手に取引材料にすんなよっっ??」


「ダメだっ。デデはオイラのもんだーっっ!!」


(デデちゃんがモテてる・・)


(不毛。所有権の主張)


「ふふ、2人も、わ、私と一緒に船で留守番ですね」


「ぬ? 何でサボる運命になっているというのだっ、ヌヨよ!」


「ラミア族とか絶対嫌ですっ!」


(シャイガール!)


(言っちゃなんだけど、男子行かない方がいいかも~?)


「それもそっかー。私は船で威嚇しないとだから他の女子だけで行ってくれる? リーラも行くから大丈夫だよ」


「えーっ?」


「まぁいいぜ。蛇女とかどーでもいいし」


「デデは置いてくぞっ」


結局、ヴァルシップ以外の女子竜狩りとリーラ、リーラの護衛のアギームだけで交渉することになった。



数百人程度らしいラミア族のコミュニティは大きなオアシスを贅沢に独占した物だった。


「子供の本に出てくる王様の住むとこみてぇだな」


(ラミア族は古代からこんなもんじゃの)


ティアビルケン号は着陸せずに上空で待機し、オレ達女子軍団は脱出挺の1つで降りてきていた。


豪華なラミア達の棲み処は屋根が玉葱型で何か独特。

オアシスを覆ってる障壁は物理や魔除けより風避けと砂避けを主とした物だった。オレ達もすんなり降ろしてる。周りに敵無しで、オレ達も目じゃない、ってとこだろ。


「こちらへ・・」


着陸した所からの案内は頭巾と布の顔隠しをした高齢らしいラミア族がしていた。


(解説。老いて衰えたラミア族は種族の中で地位が落ち、顔を隠す)


「何か酷いぞ?」


(気力と魔力を保てば不老長寿の種族じゃ。生きることに疲れて落伍した者には容赦が無い。老衰で死ぬことを選んだ者達のコミュニティもあるはずじゃが、それも忌まれておる。中間的な者もおるんじゃろう)


(ハートレス・・)


「か、帰りたいですっ」


「諸々商売の種になりそうだねぇ。アギーム! 収納鞄(しゅうのうかばん)の出し入れミスるんじゃないよ?」


「わかってるけどっ、あたし護衛だからねっ?」


収納鞄はブースト商会の連中がちょいちょい使う、物をたくさん軽々しまえる魔術の鞄だ。今はアギームが持たされていた。



香の煙と匂いが籠ってる建物の中も豪華で、あちこちに水が張られ、飾りの水路も通され、観賞魚が飼われたり、花を咲かす水草を浮かべたりしていた。


上半身は古代風の露出の多い格好をした色々な種族の混血らしきラミア達は遠巻きに扇で口元を隠してヒソヒソとオレ達を品評している感じだ。


色んな種族の男達もチラホラいたが、皆ゲッソリして首輪をして、生気が無かった。


男子、置いてきて正解・・


それからこのコミュニティの主の間まで通された。


「雌ばかりか。つまらん」


デカぁっ?! いや胸もだがっ、身体がデカいっっ。オレ達が降りてきた脱出挺を蛇の下半身で巻き取れそうなサイズの女だっ!!


(巨人族の血を引いておるな。伯爵級竜に匹敵しているのじゃ)


リーラが進み出た。収納鞄を抱えたアギームも嫌々後に続く。


「私はリーラ! ネア大陸ブースト商会所属、ゴンジ閥のしがない商人でございます」


ゴンジ閥だったのか。あ、つーことはあのオッサン、たぶん悪目立ちしてるリーラにマウント取り直しに絡んできてたんだな・・小っちぇえっ。


「およそのことは把握している。上空で威嚇を決め込んでいるチビ助一党のお守りであろう? 手ぶらではあるまいな?」


チビ一党で括られた!


「勿論ですとも! アギームっ」


間近で大袈裟に呼ばれて慌てて、山程贈答品を広げるアギーム。


(何か段々糧食うのに手間掛かるようになってきてんな・・)


リーラの贈答品の講釈が始まる中、思念でラシュシュにボヤいた。


(これだけ同時期に竜狩りが活発に動くことは無かったのじゃ。本来リスキーな竜の糧の摂取を各地で積極的に行われ、一時的とはいえ糧が不足してきておる。まして上位竜に挑まんとする者達に有効な高等品となるとのぅ)


(一時的?)


(個体によって鍛えても摂取限界はある。お主ら、特に短期間で成長を続けるココロとモパヨーヨはむしろ異常なのじゃよ)


(・・・)


モパヨーヨと同じ括りなのはちょい心外だ。アイツのドカ食いは能力だしっ。


「このようにっ! お肌スベスベっっ」


テスト品の美容商品をあれこれ塗りたくられ、宝飾や衣服を重ねて飾り立てられ、結構な惨事になってるアギーム。


こっから、美容品に限らず特売品の売り込みも始まったが、程無く、


「わかったわかった! 口の回るヤツだ。あとは商事の担当の者に話せ。こちらも売る物はある。神殿跡の糧については好きにするがいい。ただし」


(ココロ、手を出してはいかんのじゃ)


いきなり巨体でリーラを素通りしてオレ達女子竜狩りに迫ってくるラミアの主。


「最近、敷地内の龍脈の底に妙なモノが棲み着いたようだ。竜か魔物か判然とせぬ。糧を喰らい次第、ソレの始末をしろ竜狩りども。よいな?」


「いいぜ、上等っっ」


「嫌ですぅ・・」


「満腹なら何とでもなるんだぞ?」


交渉成立だ! しゃっ。



糧の光る薔薇の園を覆っていた障壁はラミア族から貸与された指輪で解除だ。


リーラ達とこっちの船の花混じりの船員はラミアのコミュニティに取り敢えず置いてきたが、合流した竜狩りは全員神殿跡に降りてきていた。


「トゲだらけじゃんか、食うのムジぃぜコレ?」


(量もあるし、花だけ数輪で問題無しじゃ)


「戦闘前提だし、ゾンダルシュの調子が悪いから今回も私も食べとくわ。胸焼けしそうだけど」


(無理は承認しない)


「モパ子、今回は食えるだけ喰っとけ。お前は膨らむだけで中々爆発しないからよ」


「ウラドーラ、オイラのこと何だと思ってるんだぞ?!」


「まぁまぁっ」


モパ公を宥めに入るデデヨジカ。


(しかし、この気配。おそらく以前の強壮な竜狩りだね・・)


(警告。アレは女神の戒めの範囲外。龍脈から直に魔力の搾取が可能な存在)


「やはり強者に挑む運命っ!」


(ダルいわ~)


「ホントに嫌です・・」


(またデンジャー!)


何だかんだでオレ達は薔薇の園一通り竜の糧の摂取を終えた。


相当な力の高まりっ、発光現象が起こるくらいだ。


「向こうも把握してるだろうに行儀がいいね。・・じゃ、ウラドーラと船から援護するから!」


「上手くやれよ?」


ヴァルシップと船の護衛に回るウラドーラは上空にゾンダルシュの力でテレポートして臨戦態勢を取った。


地上組も行儀よくそこそこ食べ残しのある薔薇の園の障壁をラミアの指輪で閉じ直し、それが合図になった。


ドッ!! と神殿跡の奥の地面が吹き飛びっ、龍脈の激しい発光と共に、ヤツが姿を表し吠えた。


「俺がこの時代の最強だ! 糧となれっ、並の竜狩りどもっっ!!」


耳長女にボコられたはずなのに完全復活し、前よりパワーが増し、竜の特徴が強くなってる。つーか・・


「もう竜じゃん、アイツ」


(ヤツもまた、最上位竜に挑まんとする者! ココロよ、アレを越えられねば我らも先は無いのじゃ)


まぁな。オレは別に最強とか知らんけど。


「上等だ。サクッと超えてやんよ」


オレ達はそれぞれの竜滅器を構えた。

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