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緑海嘯  作者: 大石次郎


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32話 心安くあらせられる

凍てつく暗闇の中、傷んだ大き過ぎる工学師の白衣を着た髪も整えられていない眼鏡を掛けた少女のような姿の竜が逃げ惑っていた。

ゼリ・キャンデであったが、平時姿を表す時よりもさらに幼く、幼子の姿のノルンレアと変わらぬ世代の容姿をしている。


皮膚に異様な魔力を放つ紋様が浮かび、酷く損耗しているようであった。


「はぁはぁはぁっ、しつこ過ぎるっ!! 最悪っっっ」


凍れる朽ちた神殿とそこ閉じ込められた魔物や竜達を砕きながら、嗤って追ってくる者がいた。


「ゼリ・キャンデ卿! 病の身体に障るだろう? 止まられよ。ふふふっ」


女の身体を取り戻したエゥガラレアであった。


「何日追い回す気でかぁっ?! 情勢は予断を許さないようですがぁ!」


言いながら仕込んでいた装置に触れて魔力を送り起動させ、氷の死のトラップを発動させるゼリ・キャンデだったが、氷の槍もノコギリもギロチンも涌き出す魔物の群れもエゥガラレアに掛かれば、塵のごとく粉砕される無意味な物であった。


慌てて再度遁走を始める幼いゼリ・キャンデ。


「調べは成り損ないどもを使ってる。商会と竜教と造反者どもは潰し合いをすればいい。よって・・今しばらくお前と遊んでやろう。クククッ」


爪から軽く魔力の刃を放ち始めるエゥガラレア。


「結構ですぅ!」


必死で回避し、転倒した拍子に眼鏡にヒビが入る幼いゼリ・キャンデ。それでも逃げ続け、効果の無いトラップも発動させ続けたが、不意に皮膚の紋様が拡大し強く魔力を放つと、吐血して倒れ込んだ。


「かっはっっ?!」


追い付いたエゥガラレアは悠々とそれを見下ろした。


「ふん、その程度のマナウィルスで半死半生となるとは、本体は随分脆弱だな」


「うっうっっ、わ、私は陛下の身体のメンテナンスを担当しているからっ。私が死ねば陛下も」


エゥガラレアは竜化させた右足で幼いゼリ・キャンデの胴体を半ば踏み潰した。


「ぎゃあああぁぁーーっっ!!! 痛い痛い痛い痛いっっっ、やめてやめてやめてっ!!!!」


「先日学習した。調子が悪い時は瀉血が利くぞ? ふはははっっ!!!」


「畜生! ドSクソ女っっ!! 脳筋バカ!!!」


「ゼリ・キャンデよ」


踏み付けた竜の右足を中心に滅びの炎を浅く起こし、病み、半ば潰された胴となった幼いゼリ・キャンデを炙るように焼くエゥガラレア。


「熱い熱い熱いっっ、死ぬ死ぬ死ぬっっっ、死ぬって言ってんだろ?! バカなのお前ぇええーーーっっっ??!!!」


「それなりの力の手勢が必要だ。この北の地の巨人族の巣を活用しろ。これ以上の同族の改造は造反を煽るだけ、巨人を使え。人間どもが同士討ちしている内に全て整えろ。いいな?」


燃やしながらさらに強く踏むエゥガラレア。


「うぎぎぃっっ、わかった! わかりました!! やります! やるって! 絶対逆らわないっ、絶対逆らわないっっ、エゥガラレア様万歳!! エゥガラレア様万歳!!」


「くくっ、服従しますだ、にゃん。と言え」


「っ!」


割れた眼鏡越し睨み返すゼリ・キャンデ。


「っっっ、根に持ってんじゃっ、ぎゃあああぁぁーーっっ!!!」


足からハミ出ていたゼリ・キャンデの左腕を引き千切るエゥガラレア。


「ゃぅぅっっ、にゃん! にゃん!! にゃおーーーんっっ!!! 服従するにゃーん!!!!」


「そう、それでいい」


エゥガラレアは炎を消し、足を除け、千切った腕を投げ返してやった。


「陛下も心安くあらせられるだろう」


関心を失った顔で、周囲の氷が全て融け焦げたその場からエゥガラレアは翼で飛び去っていった。


「うっううっっっ、ち、チクショウっ、ボコりやがって・・ううう、陛下ぁ」


号泣しマナウィルス感染のせいで上手く再生できないまま、千切れた左腕を右手で持ち、潰れて焼かれた胴体を引き摺りながら、ゼリ・キャンデは千竜神殿地下深くの最新部、強力な魔力が漏れ出る場所へと向かっていった。



───────



ヴァルシップと船員達だけ乗ったティアビルケン号に注意を引き付けてもらってる内に、脱出挺2隻と的が小さいバルタン群で緑壁を突破したオレ達は三手に分かれていた。


オレはモパヨーヨ、デデヨジカと同じ脱出挺だ。操縦は普通に花混じりの船員2人。


入って早々、ワーリザード達の火縄銃と砲撃に晒されたが火縄銃くらいなら無視できる。砲も緑壁に取り付けられた物より小さく旧い型で速射もできないヤツ。


素早く飛び回ってる分には問題無いが、減速して降りるのが面倒だ。加えて、


「うわぁっ?」


「ひぃっ!」


操縦者2人が悲鳴を上げる。争う竜達の内、角だらけの竜がオレ達の船に角を射ち出してきたっ。船はギリ回避!


「この低高度だと持たないなっ、竜の社から離れていてもいいから減速を試みてくれ! 俺達は何とでもなるっ」


(私、頑丈っ!)


「わっかりましたぁ!」


どうやら楽はできそうにない。オレ達はデデヨジカ案で取り敢えず狭い操縦室からまだ閉まってる後部ハッチ近くへ移動した。


「モパ、降りる時は狙われ易い。火縄程度でも気を付けろよ?」


「わかったぞ!」


(重要。警戒)


モパ公にだけ助言するデデヨジカ。オレもいるっ! 生きてるっっ、オレ!!!!


まぁいいや。脱出挺はしばらくガタガタしたが、タイミングが来たらしく減速の気配の後、後部ハッチが少し開いた。バーニア音と風切り、戦闘音が直に聴こえだす。


「えー、んー、どうだろ? まだか」


「いやこれ以上キツいっ、行ってもらおうっっ」


伝声器繋いでから揉めだす操縦者2人。


「「じゃあ、どうぞーっ!!」」


ハッチはいきなり解放されたっ。早速火縄撃ち込まれだす!


「行くぜぇーっ! ひょー!!」


(策無しじゃの)


オレが一番にハッチから飛び出し、他2人も続いた。ワーリザード達が火薬を使いまくるから硝煙臭くてかなわないぜっ。


撃ちまくられるが、火縄の弾はラシュシュのナガマキで弾き、砲弾は空気を蹴って躱した。

で、こっからが最新のオレは違う! そうっ、飛行術覚えた!!


後方からの銃撃は建物の影に回って避け、前方のは足元に魔力の斬撃を飛ばして地面を炸裂させて吹っ飛ばす! モパ公達も付いてきてる気配だ。しゃっ。


(大回りになっても竜同士の争いからは離れるのじゃっ)


「アイツら何なんだよっ?!」


(勢力争いじゃろう。ぼんやりしておったのに、人間達が本気になりだしたから慌てておるのじゃ。間抜けじゃの)


「・・・」


ラシュシュの立場的にどうなの? て思わんでもないが、知らね。


妙に縁がある黒と白の竜達は、魚と猿の竜と社近くで争っていたからややこしかったがグルっと回り込んで、どうにか社まで来た。


途中、戦いに巻き込まれて次々死んでも平然としているがジッと見てくる大樹虫達の視線に改めてゾッさせられたりもしたが・・


気配をたどると、ウラドーラ達の班は脱出挺からは降りれたようだが、どうも角竜と首長と箱の争いに巻き込まれちまったみたいだな。


バルタン達も陽動はしてくれてる。それでも相手の数が多過ぎて丸ごと引き受ける程じゃなかった。


「オレらだけで行っとくか!」


「おお、留まってる内に集中砲火されそうだしなっ」


「いい感じにダメージ与えて炙り出して、あとはキャプテンに任せたらいいぞ」


(言っておくが、今のゾンダルシュに持久戦はできんからの)


(ばーん! とやっちゃおうっ)


(推奨。とっとと中へ)


オレ達は集まってきたワーリザード達の砲火がキツくなってきたので、社の脇の壁をデデヨジカの斧でブチ抜いて中に潜り込んだ。


屋内は砲筒が使えないだけまだマシ! 跳弾にだけ気を付けてオレ達は社内部をずんずん進んでった。

ワーリザードは竿状の武器も色々使うが、今のオレ達にゃ意味無いぜっ。


奥の間まで来ると・・熱気!

溶岩の堀が巡らされた祭壇の間だ。祭壇には半ば結晶化した巨大な脳ミソっ。よく見るとこれも結晶化した太った耳長の男児? が張り付いて眠ってる。


祭壇の間にはローブを着たワーリザード達がいて、魔法の陣が敷かれ、大量の火の属性の魔石が配置され、中央に姫っぽいワーリザードが祈り・・いや短剣持ってる!


(マズいのじゃ!)


「待っ」


姫っぽいワーリザードをオレを見て、済まなそうな顔をして自分の胸に短剣を突き立てちまった。

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