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緑海嘯  作者: 大石次郎


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31話 客が多い

バルタン族は鳥の翼を背に生やして飛ぶことができる種族だ。強い固体は怪鳥の姿に変化もできる。

強壮なヤツらで素で花混じりくらいのパワーがあるが、大樹虫を食えない体質でもあって、結果的に竜狩りにはなれない。


由来も性質も独特で他の人類とは距離があるが、大昔からブースト商会や竜狩り達、時々の花混じり達のグループや竜教とは付かず離れずの関係を保ってる。


基本的には今では廃れた女神の神殿跡何かを未だに守って暮らす気難しいヤツら。


この火山帯にも神殿跡はあり、オレ達が目指す竜の糧の小規模群生地も神殿跡の聖域にあるらしい。

で、その神殿跡にやってきたワケだが・・


「商会の支払いが足りないなっ」


結構若く見える族長がいきなりコレだよ。


「バルタンが金銭に拘るのは珍しいね」


珍しく船から降りてるヴァルシップが族長の前に出た。


「商会があちこちで事を荒立てた結果、物資の価格が上がっているのだ!」


物価か・・正直ピンとこないが、世の中が物騒になればそういう影響もあるかもしんねーな。


「その辺は大丈夫。最近スポンサーが付いたからねっ。このくらいでどうよ?」


オレ達に小せぇ手元を隠して交渉しだすヴァルシップ。リーラ商店マネーか。


「足りないっ、全くだ!」


「医薬品も付けるよ? ウラドーラ、リストを!」


「へいへい」


ウラドーラも加わった。


(回りくどいことをしている・・)


商談に関心無さげなミイファシュ。


「う~ん、砂糖は、あるか?」


「あるある! 上質だよぉ? 楓の蜜も付けちゃうよ?」


「何と! 樹の蜜か?! 富豪か、お前達っ」


・・いや、まぁ、生ゴミ漁ってたオレ的にはわからんでもないけどよ、地域差ってあるよな。


何だかんだで取引は上手くいった。



神殿跡、というか神殿その物はバルタン達のコミュニティを兼ねていた。

燕の巣とまでは言わねーが、土壁の住居が神殿のあちこちに張り付いた構造だ。幼子に年寄りや傷病人以外は飛べるから大体高い位置に家がある。


それも奥に進むと段々無くなり、奥から地下入ると、そこは殆んど劣化してない、ひんやりとした空間になった。


女神の壁画や像の状態もいい。


「・・顔は描かないし、彫らないんだな」


(無礼とされておった。実際、力を発揮されておる時は顔等は見る者の認識次第であらせられるのじゃ)


「ラシュシュが普通に知り合いっぽいのに引いてるオレだぜ」


(ワシは女神の騎士。女神様を護るのがワシの役目!)


「気に入らない、て世界を竜に滅ぼさせたんだろ? ラシュシュのサイコパスなとこは御主人様に似たんじゃね?」


(・・・)


ラシュシュをやり込めつつ、地下の龍脈と繋がった聖域まできた。


ここの竜の糧は、群生する光る苔だった。


「文献や言い伝えから推測すると4割までは減っても年月で戻せるようだ。4割は喰うといい、ありがたいことだ。ふふん」


族長は自慢気だったが、オレ達は、


「苔かぁ」


(分量に注意。摂取限界が分かり辛い)


「い、岩魚の気分です」


(チャーっ!)


「50年ぶりくらいだけど、あと60年はいいかな・・」


何て言い合いながら、モソモソと食べ、糧の摂取による強化を済ませた。


それなりにテンション落ちたぜっ。



───────



カノレア達は緊張した面持ちで乾いた緑壁内に着地した。

都市遺跡ではなかった。ポポルブレアは終末の大戦で大火山の麓上空で力尽き、落下して眠りに就いていた。


結晶化した不毛の地表に、ワーリザード達の簡素で頑強な岩と素焼き素材でできた住居が並んでいる。いずれにも結晶化の侵食を防ぐ竜避けの護りが施されていた。


大樹虫達もそこら中にいたが、環境に適応し火の属性を宿しているようだった。


住人であるワーリザードはバルタン同様に大樹虫を食べられないが、やはり強壮な種族。

突如現れたカノレア達を何の感情も無いような平坦な目で見ていた。


本来は眷属に過ぎないが、あまりに時が経ち過ぎている、ともカノレアは感じた。


「ワーリザード達よ、我らは新しき竜の国に属する者! 族長、ないし祭祀長はあるか?」


「・・客が多い」


「何?」


「カノレア、何か」


シノレアが注意を促そうとした直後に側面の建物の一つの壁を突き破り肩を竜化させた人型の竜が、フードを被った竜の1人太った竜を、肩に生やした角で突き刺しさらにその角から衝撃波を放って粉砕した。


「ぱぁぅっっ?!」


「あっはっ」


他のフード被り2人の即座の反撃を躱し、笑って素早く飛び退く衝撃波の竜。だらしない格好をした短髪の女の姿をしていた。


「同志カボレアぁ!!」


「だから言ったのに!」


「伏兵がいるぞっ」


「おのれっっ」


ワーリザード達も殺気立ち、物陰に隠していた武具を手に取り出す。

それらの中から鎖を纏った人型竜1人と長老らしきワーリザードを従え、また別の鶏冠のような髪型の人型竜が現れた。


「はいはいはい。カノレア君とシノレア君、ご苦労様ね!」


「君、だと?! 何者だ貴様っ?」


鶏冠頭も鎖も短髪も、カノレア達には覚えの無い個体だった。


「何者か? 聞かれたら何者でもない。と答えるしかないわね。アタシ達は全員騎士級以下の下級竜とその子孫! 鍛練と捕食と効率悪い魔石摂取を必死で繰り返しっ、あんた達上位竜に匹敵する力を得たわ!」


「・・千竜神殿に反逆するつもりなら、我らに向かってくるのは筋違いだ。我らはそのネットワークから離れ、ノルンレア殿下と共に新しき」


鶏冠頭は魔力の刃を放ち地表を割き、カノレアとシノレアはそれを回避した。


「おためごかしはウンザリなのよ、結局ナントカ殿下の権威でしょ? 散々アタシ達下位竜や眷属種族を捨て駒にしてきたツケはこの、蜥蜴(とかげ)上等会、が払わせてやるわ!!」


「「蜥蜴上等会??」」


困惑する双子竜。


「・・何か、ダサい」


思わず大柄なフード被り竜が呟くと、鶏冠頭は目を剥いた。


「名前には魂があんのよっっ、舐めんじゃないわよぉおおーーーーっっっ!!!!」


蜥蜴頭は魚のごとき竜に、鎖は猿のごとき竜に、短髪は全身に角を生やした竜の姿に変化し、カノレア達もそれに対応して完全な竜の本性を現した。

痩せたフード被りは首長の竜、かなり大柄なフード被りはそのまま立方体が集まったような竜に変化。


ワーリザード達も巻き込み、即座に大乱戦となった。



───────



事前に気配を虫達が最初に探知してたが、バルタンの兵も乗せたティアビルケン号で緑壁まで来ると、


「ありゃー、何かもう始まっちゃってるねー」


ガンガン交戦中だ! ワーリザードのコミュニティはメチャクチャっ。

目立つ所ではいつか見た黒と白の竜が魚のような竜と、猿のような竜と交戦しているが、他にも知らねー首長い細い竜と箱が集まったみてぇな竜が角の竜と交戦っ。

どうも武装したワーリザード達はこの角だらけの1体の方を援護していた。


「どういう状況だよっ?!」


(よい機会じゃ。馬鹿者どもが殺し合っておる内に、眠るポポルブレアを始末するのじゃ)


「出た! ラシュシュのサイコパスっ」


(合理的判断じゃっ)


「おい、アレ、砲台っぽいぞ?」


(警告。想定外の射程!)


ワーリザード達は竜っぽい装飾の、古めかしいがデカい砲を緑壁を改造したらしい穴から構えだし、ブッ放ってきた!!


船は緊急回避を始め、揺れまくるっ。ブリッジで慌てるオレ達っ。


「意外と文明を持っていた運命!」


(ワーリザードは傭兵が生業だしねぇ~)


「緑壁は硬い! 時間無いならとっとと中に入った方がよくないッスかっ?」


(とつげーきっ!)


「我らバルタンは白兵戦のみだっ」


「ん~、高高度爆撃はグロいし、ポポルブレアが普通に復活するだけだし・・脱出挺で突入しよう! 何班かに分かれてね。ゾンダルシュ、有効な突入点を割り出してっ」


(承認する)


方針が決まると、立て直す為に船は大きく傾き射線を外しに掛かり、吹っ飛ばされた花混じりをオペレーター何人かをオレ達は蔓で掴まえてやる。


よーし、やるか!

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