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優しい世界が見たいんだ  作者: 川崎殻覇
夏の日の思い出
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懐しの幼馴染

閲覧感謝です

「おかえりー」


「たでーま」


「ただいまです」


古本屋を覗き、いい感じの本を数冊買ってからの帰宅…出迎えるのは一人の幼馴染だった。


「いやぁ、あっくんにこう言うのも懐かしいねぇ…私が海外に行ったきりだから…大体二、三年前?」


「そうなるなぁ」


栞ちゃんが海外に行ったのは中学二年の時期…世にも珍しき飛び級をやりにやりまくって今は何処ぞの大学でなんかの研究をしていると言っていた。

そっから日本に戻ることはなく、海外でずっと過ごしていたが、それでも俺達の関係は続いている。不思議なことにな。


「日本も久しぶりだぁ…やー、何処の場所でもナンパはいるねぇ。あっくんが通り掛かってくれて助かったよ」


「そりゃよかった。事前に来るって言って貰えればもっとよかったけどな」


「あはは、サプラーイズ」


昔から栞ちゃんは明るい性格だったが、久しぶりに会ったからか余計に明るい様に思える。…昔はそこはかとなく暗い影があったが今はそれも見られない…やはり家を出たことが栞ちゃんを良い方向に変えた様だな。


「はい! これお土産…いっぱいあるから持ってって」


「おー」


栞ちゃんはトランクから様々なものをポイポイと取り出す…マジで沢山だな。

お菓子に置き物に…外国の謎の食い物…色々と買って来たなぁ…これは後で俺の夜食にしよう。楽しみ。


「しっかし急にこっちに来てもよかったのか? 日本とそっちじゃ休みの時期が違かったりするんだろ?」


「教授にお願いしたら簡単にオッケーしてもらっちゃった。久しぶりに友人に会いたいんです…! ってね」


ほーん、結構緩いところなんだなぁ…まぁ堅苦しく過ごしていないのならそれでいいのかもしれないな。


そんな感じで栞ちゃんと懐かし話と洒落込む、向こうで何をしていただとか、逆にこっちは何をしていたとか…まぁそんな感じの話だ。


「いやぁ、やっぱりあっくんはあっくんだねぇ…ずっと変わってないね」


「あんだと? 誰が成長してないアホンダラだ…昔と比べて変わったところもあるんだぞ?」


「そういう意味じゃないよー、…ずっと優しいままのあっくんだなーって」


別に優しくしているつもりはないんだけどな、割と見放しているし見過ごしてるし…今回だって栞ちゃんとわからなければ素通りしようと思っていたしな。


だがまぁ…変わってないと言われればそうかもしれない。俺の根っこの部分…根本的な部分は幼少の頃からきっと変わっていないだろうと思う。

だってそう生きてきたし? これからも変えるつもりはないな。


「でもでも、危ないことはあんまりしちゃダメだよ? あっくんいつも無謀一歩手前の行動取ったりするから…幼馴染としては心配でしょうがありません」


「へいへい、つっても最近はそんなこと…あ」


つい最近の記憶を思い出す。そういやわざとナイフで背中刺させたわ。


「あ、って…はぁ、本当にしょうがない人だよね…ね、愛菜ちゃん」


「ほんとです…」


愛菜と栞ちゃんは結構仲がいい。俺が知らないうちにいつの間にか仲良くなっていた。

愛菜に仲の良い人が出来るのはとても喜ばしい…兄として栞ちゃんには感謝してもしきれないくらいだ。


そんなふうに二人に若干責められる様な目で見られるが、そこはスルーする。…駄洒落じゃないぜ?



いい感じにまったりとした時間を過ごし…気付けばもう夜ご飯の時間だ。


「さて、そろそろ飯にするか…栞ちゃん、晩飯は何が食いたい? 久しぶりに日本の味を堪能させてやるよ」


久しぶりに会った幼馴染の為になんか作ってやろうとリクエストを聞く。

幼馴染に飯を作るこの感覚…久しぶりだな。


「わぁ…っ! 久しぶりにあっくんのご飯だー!」


あらまぁそんなにはしゃいじゃって…まぁ悪い気はしないけどな。


ばたばたとはしゃいでいる栞ちゃんを尻目に飯の準備をする…さて、何をご所望かな?


「じゃあねぇ…なんでもいいから和食が食べたい! 米に合いそうなご飯を所望します」


「合点! 愛菜、飯作るの手伝ってもらっていいか?」


「了解です!」


愛菜に助手を頼み調理に入る。


和食…和食ねぇ…ぶっちゃけ言うと俺はそこまで本格的な料理は出来ない。あくまで家庭料理の範疇だ。

家庭料理での和食…言ってしまえば日本食を作ればいいだろう。


そんな感じでいい感じの飯を作ることにする。家庭料理は手軽さと早さが命だからな。後は…暖かみとか?


「ほい、お待ちどう」


「おぉ、親子丼だ…!」


作ったのは親子丼、冷蔵庫の中身を漁ってみたら丁度素材があったんで作ってみた。

親子丼は手軽に作れるということもあり昔から作って来た料理ではある。得意料理と言えるほどではないけどな。


「懐しい…昔はいつもこれ作ってくれたよね…」


「そりゃあ作るの簡単だからな。料理のレパートリーが少ない状態だとついつい作っちまうんだよ」


その頃は栄養バランスとか全く考えなかったな…そういうのを考え始めたのは中学入ってからだった気がする。


「あぁ…懐かしの米…インディカ米とかそういう系じゃなくて、この丸っこい日本米…いただきます」


栞ちゃんは用意した丼を片手で持ち上げ、かっこむ様に親子丼を口の中に放り込む。


「懐しい…美味しい…! 留学したのはよかったけどご飯事情だけは本気で後悔したから染み渡る…」


「ははは、お気に召した様で何よりだ」


俺の方も飯を食べることにする。…我ながら美味いな。


よく自分で作る飯は不味いという話はあるが、それは若干迷信だ。

自分で作る飯って言うのは調味が雑になりがちで塩とか砂糖とかの量を適当に入れてしまう…その差で美味いとか不味いとか思うんだろうなぁ。


俺の方はと言うと、結構凝り性な俺はいかに自分の好みの飯を作れるか…というチャレンジ精神を有して料理をしている為、自分で作った飯は自分で美味いと思えている。

今回は栞ちゃんが好きそうな味にしてみたがそれでも美味い…というかこの味付けは俺が好きな味付けなんだよな。実は味の好みが似通っていたりする。


「うまうま…あ、おかわり貰ってもいい?」


「どうぞ、好きなだけ食ってくんな」


「わーい!」


栞ちゃんは昔からこうだ。俺の作る飯を本当に美味しく食べてくれる。

昔はここまで感情を出してはいなかったが、それでも味の感想は凄いくれた。


美味しいとか、この味付けが最高とか…まぁ、そんな反応をされるとこっちも嬉しくなってしまい、すっかり料理をするのが楽しくなってしまった。

俺の料理好きの理由の何割かは栞ちゃんのおかげなのかもしれないな。


「それにしてもアレだね。あっくんもようやく家を出れたんだ」


「あー、まぁな」


「お金を貰っているとはいえ、私達の世話なんて本当はしなくてもいいのに…それをあの阿保姉達がなんだかんだ言って不当に辞めさせるし…その方があっくんにとってはいいんだろうけど、それでも嫌な気分になったよね…本当にごめんなさい」


突然頭を下げられる。…まーだ気にしていたのか。


「いいよ、別に栞ちゃんが原因なわけでもないし、それに本当に気にしていないんだ。アイツらがそうしたいと思ったのならそれでいいのさ」


本心でそう言う。そりゃ最初はいきなり解雇ですか…とは思ったが、まぁ充分金は稼がせて貰ったし…今ではあの経験も悪くないと思っている。主に家事スキルが上達した理由で。


「それでもね…身内の恥ですから。…他にも色々と力になれなかったし…」


色々と力…それは妹のことだったり…もしくは()()()()だったりするのかもしれない。

確かにあの時栞ちゃんが居てくれればよかったのかもしれないが…俺は意固地だからな、栞ちゃんがいてもあんま結末は変わらなかった気がする。


「あんま気にすんなって、…俺は栞ちゃんが楽しく過ごせているんだったらそれでいいと思うぜ?」


俺のことよりも自分のことを大切にして欲しいと思う。俺は栞ちゃんという味方がいるってだけで結構救われている部分はあるしな、それだけで充分だ。


「…ならそうする。…あ、そういえば日本の学生には夏休みの宿題なんてものがあるんだよね…? よかったら教えてあげよっか?」


「え、マジかよ!」


夏休みの宿題ってかったる過ぎるからなぁ…いつも夏休み終了一週間前とかにバタバタと終わらせるんだよ。


宿題はテストとは違うし…今回は力を借りてしまおうかな!


「じゃあ…お願いしてもいいか?」


「任せて、それぐらいが取り柄だから…それじゃあご飯が終わったらすぐ始めよう! 栞教授の特別講座の時間だよ…!」


ふふふ…今回、夏休みの宿題は俺の敵にならないのかもしれないな。嬉しみ。

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