少年が前に進むと決めた日
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あれから時間は過ぎ、学園祭が思い出になっている頃。
学校は既に冬休みに入っている。期末試験も終わり、俺は散々な結果だった。
いろんなことに骨を折ったのが原因か…自習時間をあまり取れなかった結果、ようやく俺の身の程にあった成績を付けられた。世界史は意地で百点取ったけど。
学校が終わる終業式の日、近くのクラスが少しだけ騒がしくなった。なんでも一人の生徒が転校するらしい。
あまりにあまりな展開にクラス中は大騒ぎ、どうしてと何故がクラス中に飛び交ったそうな。
しかし最終的には惜しみはすれど、家の事情なら仕方ないと多くのクラスメイトは別れることに納得した。
俺はその時ギプスを付けながらではあったが学校に通っていたのでその一部始終を見ていた。
「ね、ねぇ!! 君…っ!!」
そして、焦った声で俺のことを呼び止める少女にも会っていた。ちゃーんと覚えているさ。
─
「おう、遥稀」
「あ、愛人君」
見送りの日、待ち合わせの場所で待っていると遥稀とその親父がやって来た。
「それじゃあ父さん、先にあっちで待っているな」
「うん」
遥稀の親父さんは空気を読んでか、俺と遥稀だけにしてくれる。
「指の調子はどう?」
「んー、あともうちょい。若干の痺れと違和感はあるけど、リハビリを続けてっからな…元通りにしてみせるさ」
「ふふ、きっと愛人君ならやり遂げるよ」
別れの直前とはいえ俺達の間に流れる空気は軽い…まぁ男同士ならこんなもんだろ。
「新幹線が出るまであとどんくらい?」
「んー、少し早めに来たから…三十分後くらいかな」
「ほーん」
ホームに向かう時間も考えると…ここで話すのも大体二十五分ってのが限度だな。
「やっぱり寂しくなるなぁ…あともう三十分延長することは?」
「僕もそうしたいけどダメ、新幹線の時間は決まってるからね」
当然の如く却下される、当たり前だな。
「そりゃ残念…じゃあ後もつっかえてるし手短に伝えたいことを伝えるとしよう」
「伝えたいこと…? それと後って?」
本当に大したことのない話だ、別に今伝える必要はないことなんだが…今伝えないと一生伝えられない気がするからな。
こういう時タイミング外すと何も言えなくなるんだよ、俺。
あと単純に言うのが恥ずいというのもある。…まぁ伝えるんだけどね?
「あーいや、なんでもねぇ、後って言うのは忘れてくれ。…えっとだな、伝えたいことってのはつまり…うん、アレだ」
「ふふ…あれって何さ」
しどろもどろになった俺を遥稀は微かに笑う。こんにゃろ、馬鹿にしやがって…。
「アレって言うのはアレだよ。…まぁ要するに、…お前って偶に自己評価低い時があるけどよ、お前は本当に凄い奴なんだからもうちょっと自信持てよってことだ」
「え〜? 愛人君僕のことそんなふうに思ってくれてたの?」
ニヤけながら茶化す様に遥稀は俺の腹を指で突く。
「やめい! こっちは至って真面目にそう思っているっつーの」
つんつんとつつくのをやめさせるべく遥稀の指を手で払う。
「え…!? 愛人君の僕の評価ってそんな高かったの!?」
「何衝撃受けてんだよ、前似た様なこと言わんかったっけ…?」
「言ってないよ! 初耳!!」
あー、確か心の中では言った覚えが…そりゃ伝わってないから。…なら改めて伝えるとしよう。
「俺、お前のことすげぇ尊敬してんだよ。…お前は俺に出来なかったことをやり遂げ、そして今も継続している。…ぶっちゃけ悔しさを覚えるくらいお前には完敗を覚えてる」
「えぇ…? 僕なんかよりも愛人君の方が全然凄いよ? 力も強いし、考えもよく回るし…僕に出来たことなんて耐えるぐらいだし…」
「それを尊敬してんだよ」
ずっと前から…こいつの成り行きを知ってから俺は遥稀に対してある種の劣等感を感じている。
「…俺もお前程ではないにせよ結構大変な経験をしていてな、昔とある出来事があった。その当時の俺はガキで…今もガキだけど、とにかく辛抱が足りなかった。…我慢が効かなかった」
そのせいで罪を犯した。そのせいで俺は取り返しのつかないことをしてしまった。
俺に遥稀程の忍耐があれば絶対にあんな結果にはならなかった…だから俺は遥稀に尊敬も嫉妬もしている。
「ないものねだりってことはわかってる。…過去はもうどうにもならないことも知っている。…けど、もし、お前の様な強さが当時の俺にあったらなとふとした拍子に考えちまうんだよ」
もしそうだとしたら俺は後悔してないのか…今、どんなふうに生きていたのか…検討がつかないけど。
それでも、その時よりは最悪な結果にはならないことだけはわかる。
「お前は凄いよ、ずっと我慢して、何もかもが嫌になるまで心がドス黒くなったとしても決定的なことは犯さななかった。…お前は尊敬に値する人間だ」
「……僕は君の過去を知らないからその時何が起きたのかはわからない。…けど一つだけ訂正させてもらおっか」
遥稀は俺の目を真っ直ぐ見る。顔は真剣そのものだった。
「確かに僕は最悪の日々を過ごした。もし不幸自慢をするのなら人類全体でも結構上に行くぐらいには過酷な人生を送ったと思う。…けど、君が受けた傷が僕の受けた傷よりも下だなんてことはあり得ないんだ」
諭す様な声で遥稀は話す。
「そもそもどちらが下だなんて決めるのは無駄だよ。だって受けた傷というのはその当人にしか知覚し得ないものなんだから。君が過去に耐えられなかったとしても、それで君が責められる道理はない…全ての辛さや苦しみを自分の尺度で測っちゃダメだと僕は思うな」
「………」
その優しさに満ちた説教は俺の心にずん…と来た。
心臓をノックされる様な…大切なことを教えられた気分になってくる。
「君は本当に自分には厳しいね。そういうとこ、別に嫌いじゃないけど、これから先、君の人生が大変になるかもしれないから次会うまでに直しておくこと! 君がちゃんと凄いってこと、僕は知ってるからね」
「…はは、元気づけるつもりが俺が元気づけられちまった…ちょっとフクザツ」
若干慰められちまった…悪くはねぇな。
「あはは、僕の方もすっごく元気づけられたからおあいこ、君のさっきの言葉、本当に嬉しいよ。とても勇気を貰った」
「…そりゃよかった、恥ずいの我慢して言った甲斐があるぜ」
最後まで格好つかなかったが…友人相手ならこういうのもアリだろう。気にするだけ無駄無駄。
「…出発の時間まであと二十分か…、ちょっと時間あるし、何か食べる?」
時計を確認しながら遥稀がそう言って、少しだけ心臓がバクって鳴る。
…危ない危ない、約束忘れるところだった、
「そのことなんだが…実はお前に会いたいって奴が一人いてな、…ここで俺はちっとばかし退散させて貰うぜ」
「僕に会いたい人?」
俺の話が終わったことを示す為に腕を大きく大袈裟に振る。…向こうのほうから一人の人影がこちらへ向かってくるのが見えた。
んじゃ、邪魔者はいなくなりますかね…。
「じゃ、俺は駅のホームで待ってるわー、あとはお二人さんでヨロシクぅ〜」
「え、どういうこと? 愛人君!?」
焦る遥稀の声を無視して俺は遥稀が乗る新幹線まで向かう。
ここから先、必要なのは俺ではなく…二人の世界だからな。
─
──
───
青年が忙しない様子で走り去ると、その場には少年だけが残る。
「…急にどうしたんだろ」
何故いきなり青年が奇行に走ったのか…少年にはあまり理解出来なかったが、それはいつものことなのでスルーすることにする。あの青年はいつも突飛なことをするからだ。
「…僕に会いたい人って誰なん………」
「紫悠君っ…!!」
だろう、と一人でボヤいだのを遮り、一人の少女が少年の前に現れた。
急に現れたその少女のことを少年は知っている。…あの青年以外で唯一と言ってもいいほど個人で少年によくしてくれた人だからだ。
「絢辻さん!? どうしてここに…」
「その…名取君に教えてもらって…ううん、聞き出したんだ」
少年はクラスの誰一人にも出発の日にちも時間も伝えていない。唯一それを話したのは先程の青年だけだ。
だからその原因はわかる、けれどその理由はわからなかった。
紫悠遥稀は今まで通っていた学校にあまり執着を覚えていなかった。
確かにクラスメイト達は少年によくしてくれたと思う。
特に少年の格好を揶揄うわけではなく、そっと見守ってくれたのがその証だ。
けれど、その優しさは無関心であり、少年が望んでいたこととはいえ長い間友好を築くことはなかった。なのでクラスメイト達に対して感情の育みようがない。
だから何も教えずに立ち去ろうとした、自分の心にほんの少しの沈黙を命じて。
「…ふぅ」
少女は走って少年の下まで来たのだろう、その息は乱れている。
少年はその少女があまり運動が得意ではないことを知っていた。いつかの雑談で走ることが苦手と言っていたことも覚えている。
「…ちょっと薄情じゃない? 私、これでも君の友達のつもりだったんだけど! …出発の前日に一声くらい掛けてくれてもいいと思うんだけど」
だから、そんな少女が自分に向かって走って来るとは到底信じられなかった。
「いや…その。…ちょっとゴタゴタしてて…」
その事実に動揺し、何の意味もない言葉を返してしまう。
「まぁいいけど。ちゃんと最後に会えたし…」
少女はそっと目を閉じ下を向く。
けれどもそれはほんの一瞬、その一瞬を過ぎれば彼女の目に迷いはなくなる。
それは、覚悟の表れでもあった。
「私、正直何が何だかわからない」
少女は当然のことを言う。
「紫悠君が何か大きな問題を抱えていることはわかってもそれに関わることは出来なかった。きっとそれに触れられたのは彼だけなんだよね」
「……」
その言葉は正しい。
少年は誰にだって自分の事情を話すつもりはなかった。青年に対しては様々な経緯により話すことにより、それで事情のほぼ全てが解決したと言っても過言ではないが、それは青年が特別な存在だったからこそ。
ごく一般的な人生を送って来た一般人に伝えるには少年の事情は重過ぎる。だからこそ何も言わなかった。敢えて関わるのを避けた。
「でも、私はまだまだ関わることをやめるつもりはないからね」
しかし、少女はその拒絶さえも跳ね除けてそう言ってみせる。
「私ね、大人になったら絶対映画監督になるよ」
眩しい、少年はそう思わざるを得なかった。
「そしたらね…絶対君をスカウトしに行くから」
目を焼き尽くす程の極光などではなく、遠い日差しを浴びる様な眩しさを覚えた。
「いつか君に頼ってもらえる様に…君の悩みなんて吹っ飛ばすくらい凄くなって、…君の全てを受け入れる様になってみせる」
彼女はいつだってそうだった。
明るい笑顔を浮かべて、言動は少し辺なのに周りをよく見ている。
彼女は優しい、優しくてあったかい…少年にとって、その少女は爛漫と輝く花だった。
花だからこそ遠目で見つめる。触れないからこそその輝きは薄れない…だから何もかもを遠ざけた。
その花が萎れない様に、輝きを保っていられる様に。
「…私、君のことが好きだよ! …ちゃんと、恋愛的に」
「───」
真っ直ぐと向けられたその言葉、少年にとってはトラウマそのものだった。
多くの者が少年に触れる時にそう囁いた、汚泥を孕む声で幾度も少年を貪った。
吐き気を覚える。偽ることをやめた自分では到底触れたくない言葉、仮面を被らない限り絶対に言えないであろう言葉。
けれど、少年が今抱いているのはそれと真逆の感情で……。
「…君の気持ち、教えてほしいな」
その問い掛けに関する答えも一つしかなかった。
「…僕、めんどくさいよ?」
「うん、なんとなくわかる」
「自分で言うのもなんだけど、結構酷い目に遭っているし、割と人が嫌いだし…体だった色々と酷い。普通の人間とはかけ離れた存在だ」
「そうなの? なら私が支えるよ」
軽くそう言っている彼女の目には嘘はない。
少年は今までの経験からある程度心の機微がわかる。何となく嘘をついているな、適当なことを言っているな、誤魔化しているなということがわかる。
だからこそわかる。彼女の心はいつだって真っ直ぐだった。
思えばいつだってそうだった…彼女は表面的な部分だけではない少年を見てくれていた。
「ネガティブで、自分が嫌いで…」
「私は結構ポジティブだから釣り合いが取れているね。自分が嫌いだったらこれから好きになっていけばいいと思う」
「弱くて、自分に自信が持てない」
「誰だってそうだよ、むしろ自分の弱さを認められる人の方が強いと私は思うよ」
言い訳はそれくらいに、もう既に心は決まっているのだからそれを伝えればいい。
…そんなのはわかっていると、少年は改めて勇気を出す。これまで経験してこなかった緊張が少年の中に巡る。
「…けど、けどね? …どうやら、僕は君を諦めたくないと思っている」
自分の感情が信じられないとでも言う様に、自分の言葉に驚きながら少年は言葉を漏らす。
「和らいだんだ、君の何気ない一言が何度も僕を優しくしてくれた」
人とは関わりたくないと思っていた。ずっと思い出だけを守ればいいと思っていた。
そんな少年が唯一執着心を持った、それは他ならない彼女である。
「…僕も頑張るよ」
そうして、少年は遂に言いたくても言わなかった言葉を伝える。それが彼女の言葉に応えられる唯一の方法だと確信したからだ。
「ハンデを全部覆して、君の夢を叶えてみせる。…まだちょっと演技についてよくわからないことも多いけど、頑張って、勉強して…君の夢を一緒に目指したい」
建前も冗句でもなんでもなく心で決めた。少年はその少女に未来を誓う。
少年が幼き日の少年に戻ることはもうないのかもしれない。その全ては汚され、壊されてしまった。
少年はずっと佇んでいた。
諦念の道、何もしない道、ただ耐えることだけを続けて来た毎日、自分の心を殺し続けた毎日。
行き止まり、全てが朽ち果てた道だ。
そんな日々はもうやめだ。
「…僕も、絢辻さんのことが好きです。…そう、伝えてもいいですか?」
「……もう、伝えてるじゃん…っ!」
変わる日々を見つめよう、立ち止まらないで前に進もう。
死んだ魂に生の息吹を、もう絶対に、あの頃の自分には戻りはしない。
だって、少年を堰き止める苦難や不幸なんて、全て打ち壊されているのだから。
「…もう時間だ」
「…そうだったね」
別れは来る、それが名残惜しければ惜しいほど時間は早く流れ、唐突にやって来る物だと錯覚する。
「ね、紫悠君、引っ越し先って何処?」
「ん、…誰にも教えるつもりはなかったけど…綾辻さんだけ特別にね」
少年はそっと彼女の耳に内緒の言葉を伝える。冬空が彼女の耳をほんの少し赤く染め上げていた。
「…偶に会いに行ってもいい?」
「いいけど…ほんの少し時間を空けてくれると嬉しいかな。…そうだなぁ…」
少年は少しだけ悩む素振りをし、ちょっとだけ大胆に彼女の髪を払う。
「…もう少し、空気が暖かくなってから会おう。それまでには体を慣らしてみせるよ」
「キザな台詞。…でもカッコいい」
少年は少女から離れる。そしてゆっくりと別れを済ます。
「毎日電話するね」
「嬉しいけど…偶に出られない日もあるかもよ?」
「それなら次の日に二倍話す。…それと、ここは自分もって言うシーンだよ?」
「はは、ごめんね? あんまりこういうのに慣れてなくて…」
「慣れてたら逆に寂しいからそれでいい、…とにかく、絶対に電話に出てね…?」
「うん、わかったよ」
「……」
「……」
名残惜しさはそれまでに、とうとう約束の時間がやって来る。
「…ありがとう、またいつの日か…君に会える日を望んでいるよ」
「望む必要はないよ、楽しみに待ってて? …だから、私のこと忘れないでね?」
「うん、忘れない。…初めて好きになった人を忘れたりはしない。…それじゃあ、またね」
「うん、また…」
…
………
……………
立ち止まりたくなる足を無理矢理動かして少年は進む。
嫌いな街だった。
けど、嫌いな街なりに…愛着はあるらしい。いざ進むとなると様々な重荷が少年に寄り掛かる。
…また、この街にやって来てもいいかもしれない。そう思えただけ少年は幸せ者だと誇りに思った。
「よっ、話は終わったかい?」
「…全部君の仕業だね…?」
大柄で口を歪めて笑っている青年が少年を出迎える。
「そりゃ勿論、…でもよかったろ?」
「よかったよ。だからこそちょっとアレだよね。お膳立てされたみたいでフクザツだよね」
「はっはっは、あんま気にすんなよ。それに俺に最初声を掛けたのはあの眼鏡女子だぜ? 俺は親切心を出してやっただけさ」
「…はぁ」
それならば仕方ない…と、そう思えるくらいには少年は青年に対して感謝を抱いていた。だからため息だけで事済ます。
「もう電車が出る時間だ、早く行かないと乗り遅れるぜ?」
「わかってる、もう行くよ」
そう言って少年は青年の前を突っ切る。そしてそのまま新幹線の中に乗り込んだ。
「じゃーな、元気でやれよ」
「うん、君もね」
少年と青年の別れは簡素なものだった。先程の別れと比べたら一目瞭然。けれどそれでいいのだ。
だって、この二人が友達だってことは変わらない。恋人の様な感動な別れはいらない。というか友達同士でそんな感情は気持ち悪い。二人はそう思っていた。
スタスタと中を進み指定席に座る。少年の父は既に隣に座っていた。
「もう、いいんだな?」
「……」
多くのことがあった。そのどれもが辛く、苦しいものだった。
…けど、それだけじゃないってことはもう知っている。それを知っているのなら…きっと少年は何処ででもやっていける。
「うん、もう大丈夫!」
─
寒空の下、その光は既に通り過ぎた。辺りはすっかり静かになっている。
「…頑張れよ、遥稀」
青年の言葉は誰にも届かず、すぅーっと空気に紛れていく。
別れは突如やって来るものだ、それを否定するつもりはない。…ほんの少しの寂しさが胸を冷やすが、それもいつまでも続かない。
だったら誇らしく親友の旅立ちに幸福を祈ろう、絶対にこの先、幸せになるのだと思おう。
一歩、…いや、何歩も先に進み続けている少年に祝福を。
祈らず、願わず…ただ、ありったけの思いを込めて青年は呟く。
「…幸せになれよ」
やはり、その言葉も空気が包み込んで掻き消してしまう。
けれども、それはいつしか風となる。流れてきっと届いていく。
それでいいのだと、青年は密かに笑みを浮かべるのであった。
紫悠遥稀は戻れない完結です。
実はこの章、出そうか出すまいか悩みました。何せテーマが激重だったので。
そもそも最初は男の娘キャラって漫画とかでよく見るけど実際どうやったら現実でもそういう存在が出来るのかなぁと思ったのが切っ掛けです。
声が高い、中性的、見た感じ女性にしか見えない…それを実現するにはどうするのか…よくあるキャラクター設定だからこそそのキャラクターとの関係性をどう設定するのか…色々頭をぐちゃぐちゃにして考えついたキャラクターが紫悠遥稀君でした。
この作品の主人公は割と達観しているので余計にキャラの動きに悩みました。この主人公どうやってもドキドキしないんです、違和感と懐疑心しか抱かないんです…我ながら面倒な性格ですね…。
だからこそ男の娘を女性一辺倒でも男一辺倒でもなく、紫悠遥稀個人として見て、最終的に男の友達という関係に落ち着けたのだと思います。個人的に中々いい感じで男の娘キャラクターという存在との関係を着地出来たと思います。批判はあると思いますが、自分の中でのアレなんでね…許して下さい。
あとちょっとした裏話ですが、本来主人公には指一本落として貰おうと思ったんですよ。
自分のちょっとした拘りなんですが、現実世界のお話ならなるべく現実世界のルールとか事象を反映させたいなと思っていまして…普通に指一本切り落とされたらくっつかないよなぁと思ってました。
けど思い出してみれば親戚に指一本千切ってくっついた人も居ますし、そもそも調べてみると頑張ればくっつくし、あと単純に可哀想だったのでくっつけることにしました。以上裏話です。
物語も実は大詰めに近寄って来ています。自分の小説はわりかし納得出来ない展開もしてしまうのですが、それでも見てもらえると嬉しく思います。
それでは次の章でまた会いましょう。