太陽とキロンとセミスクエア
Aspect/ 太陽-キロン セミスクエア Lv.5
ヒール作用のあるキロンが、魂(太陽)を傷つけ続ける。
生きるだけで苦しい。
Affirmation/ 私より冷静で頭のいい、素敵な人を見つけています(ひつき)
――――
呼吸をする。身体がある。この世に存在する。
その全てが、辛いと感じていた。
僕は、必死に存在していた。人間という器を保つだけで精一杯で、楽しく生きるとか、幸せになるとか、あまりに夢物語のような物でしかなかった。
「生きる」才能を持つ周りの皆が羨ましくて、だから僕は別の才能を使って存在したいと思った。
救ってくれたのは、音楽だった。幼い頃から続けていたそれは、きっと僕の才能で、音楽で僕は「生きる」ことが出来ると信じて、ただ、存在するのが精一杯なことは変わらなかった。
学校にろくに通えず、音大も休学を繰り返した上で中退。病院を転々とし、同人活動も何度も挫けた。刹那の救いを求め続け、社会のレールは地平線に走っていて、未来を考える、希望を抱くにはあまりに苦しい。
何かを頑張った日は、翌数日間の無力さを見据えて嘆くのだ。明日もまた、頑張れなくなってしまうんだなと。
それでも、諦めないで存在はしていた。
――――
彼女、ひつきは、歌がやりたいと言っていた。
「一緒にやってみます?」
と声をかけ、会ってみることになった。
占星術の活動をしている彼女には興味があった。どこか引き寄せられるように、歌声さえ聞かずにそういうことになった。
「お名前なんでしたっけ、かすみ……さん?」
顔見知りではあったけれど、そうなるのも無理はない程度の関わりしかなかったし仕方ないなと、少々気まずいところから始まった。
……実際のところ、名前を忘れられていたのは僕の存在が消えかかってたからだそう。この話は後ほど、どこかで。
僕が音楽活動を広げていきたい話、少し調子を取り戻せたところで声を掛けたという話、そういうやりとりをする内に、占星術による才能鑑定をしてもらうことになった。
キロンという小惑星がある。
その人の傷やコンプレックスを表し、乗り越えることで自身や他の人を癒すことが出来る力を持つ。
僕にはそのキロンと太陽に、Lv.5の強い結びつきがあった。ただし、「セミスクエア」という厄介な角度で。星のことを知らない僕は、ただ暴発するキロンに、太陽、即ち根源的な魂と身体を傷つけられ続けていたということだ。
「よくここまで生きてこれたね」と、彼女は笑いと深刻さを混ぜた声色で漏らした。
話は飛んで数日後、僕は彼女から『ハードアスペクト(スクエア、セミスクエアなど)をソフトアスペクトに変換するバフ』をかけてもらった。
信じられないくらいに楽だった。
痛くない、息苦しくない、活力がある、幸せを得る余裕がある。
皆、ズルいよ。「生きる」ことが、こんなに苦しくなくて済むなんて。これなら何だって出来るじゃないか。
その日、
「やっと人生が始まったね!」
と二人で笑いあった。