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とんこつ彼氏とポンコツ彼女  作者: トン之助


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テスト終わりも見せつけて


 試験勉強を自宅で行うようになってからのルーティンはこんな感じ。



 朝『はがねと登校』

 教室『前田まえだにおにぎり貰う』

 授業中『片原かたはら君と隙を見て談笑』

 休み時間『不屈ふくつのダンスショー』

 昼休み『はがねの愛妻ラーメン』

 放課後『皆で集まって試験勉強』


 そんな楽しい日々を繰り返していたらあっという間に試験当日を迎えた。


 ありがたいのかそうじゃないのか……試験は1日を通して行われる。それが終われば晴れて自由の身になる。


 俺達は昇降口に集まって何故か円陣を組んでいる。声を出してもいいという事で外を選んだのだ。


「それじゃ、ソウジよろしく!」

「えぇ、俺?」


 はがねからのご指名に若干焦るけど、周りを見れば暖かな目で頷いている。大役を任されたのなら応えるしかないだろう。



「よーしっ、赤点回避するぞー!!」



「「「「「「そこは平均点超えろよ!!」」」」」」


 皆でハモれば怖くない。


 はがねとギャル子ちゃんのクラスで別れ俺達は自分達の戦場へと闊歩する。



 キーンコーンカーンコーン



「うぃーす、それじゃあ教科書しまえー」


 チャイムとともに入ってきた担任の宗像むなかた先生。ジャージ姿が似合うダンディなオジサンだ。


「毎度の事ながら赤点は30点。赤点取ったヤツは夏休み補習だからな」


 ピリピリとした緊張感で試験を迎える。夏休みははがねと遊びたいし、もう一回デートに行く約束をしたんだ! テストなんかに負けてられない!


総司そうじ

「ん? どうした不屈」


 隣の席の不屈はいつものおチャラけた雰囲気じゃなく真面目モード。そんな彼から一言。


「……僕達親友だよな?」

「んぉ? お、おぉ……そうだな。一緒に試験勉強した仲だしな」


 言わんとする真意は謎のままだが、ここで「いや違う」と言える俺ではなかった。

 不屈の事も、前田の事も、片原君の事も、後神うしろがみさんだって美多目みためさんだって俺にとっては大切な友達……親友になっていた。


「うん……ありがとう」


 試験開始の先生の声と重なるようにして不屈は朗らかに笑うのだ。


 ………………

 …………

 ……


 キーンコーンカーンコーン


 試験の全日程が終わった。

 流石に今日のお昼ごはんは、はがねに作ってもらう訳にはいかず皆で学食に食べに行った。


 初めて食べる学食だったけど、味はとても美味しくて、はがねのナポリタンと俺のカツ丼をシェアしながら食べた。

 それを見ていた不屈と後神さんは写真をパシャパシャ。前田と片原君はおにぎりを交換したりおかずを交換したり。ギャル子ちゃんは「おかしい、ブラックコーヒーが甘い」なんておかしなことを言う。



 そして放課後にもう一度校門前に集合しようという事になり集まっている。



「お待たせソウジー」

「おい、はがね走るなちゃ!」


 鞄をブンブン振りながら猛ダッシュでこっちにやってくる可愛いはがね。


「一応俺達もいるんだがな、がははっ!」


 前田の呟きはごもっともで、彼女は俺しか見えてないらしい。そんな彼女は真っ直ぐにこっちに駆けてくる。前だけを見つめて……


 何か既視感を感じた俺は鞄をいつもの片原君に預けて彼女へとロケットスタート。


「ソウジ〜どげんやった?」


「はがねっ! 足元っ!!」

「ふぇ?」


 カツンッ


 案の定見えていない足元の石につまずく。


「言わんこっちゃないぃぃぃぃ」

「ソウジ!」


 彼女からは俺の名前しか聞いてない気がする。それはそれで嬉しいのだけど、こんな所でポンコツ属性を発動しなくても。


「手ぇ伸ばせー!」

「ほいっ!」


 緊張感の欠けらも無い掛け声でヘッドスライディングの姿勢を取る彼女。その瞳は以前見た絶望の色ではなく、俺が助けると確信しているような虹色をしていた。


 ったく……可愛いなちくしょう!


 俺は野球の捕手の気持ちでホームベースに向かってくる彼女を正面から受け止める。



 ドンッ



「えっへへ! ナイスキャッチ……セーフやろ?」

「アウトだバカ! 心配させんなっ」



 彼女には傷ひとつ負って欲しくない。時折見せる寂しい顔が過去に何かあったのだと物語っている。だからこれからの未来は彼女の笑顔の為に俺は頑張ろう。



「あの……ソウジ?」

「もう少し……もう少しだけ、抱き締めさせてくれ」

「あぅあぅ……めっちゃ恥ずいんやけど」



 周りの生徒がこちらを見ているけど気にしない。気にしたって仕方ない。一緒に過ごすうちに俺はもっともっと……彼女を好きになったのだから。


「知ってるか? アイツらまだ付き合ってないんだぜ?」

「時間の問題やない?」

「若いわねぇ」

「先生も十分若いっすよ!」

「この間2人で歩いてるの見た!」

「私も」

「「「いいなぁ」」」


 気にしないとは言ったけど聞こえてるよ。


 しかしここからどうしたものか。彼女を抱き締めたまま動けなくなってしまった。単に抱擁を解けばいいのだが、ここで解いてしまっていいのだろうか。


 悶々としていると胸の中の彼女がぷはっと顔を出す。


「……ねぇソウジ」

「……なんだはがね」


「テストできた?」

「多分……大丈夫」


 この状況を気にしなくなった彼女は満面の笑みで頷くとこんな提案をしてくれた。


「じゃあさ……今日、ウチで打ち上げせん?」

「それって、はがねの家って事?」

「うんっ! オトンとオカンに紹介したかぁ〜」



 これはアレだろうか……娘さんを俺に下さいという例のやつ。




 まだ彼氏彼女じゃないのにそんな事を考えてしまう。どうやら俺はとっくの昔に抜け出せないとんこつ沼にハマってしまったようだ。

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