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とんこつ彼氏とポンコツ彼女  作者: トン之助


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18/40

当日の衝撃



藤江ふじえさん。おかしくないかな?」

「なんもおかしくなか。男前や!」



 土曜日の朝。


 俺は藤江さんに向かって何度も同じ質問をしている。

 最近の俺の挙動は家でも現れていて、ふとした会話の中で「友達ができた」と漏らしていた。


 それを聞いた藤江さんはなんとも言葉にならない嬉しそうな顔をして、俺の大好物の炊き込みご飯を炊いてくれた。土曜日に友達と遊びに行くと言った時も同じ顔。


 誰がとは聞かないけれど、最近の俺の奇行を見てれば百戦錬磨の藤江さんには分かってしまうだろう。


総司そうじ。はいこれ」

「ん? これは?」


 藤江さんから渡された茶色の封筒。もしやと思って中を覗くと……


「お、お金っ!? 藤江さんこれは一体」


 見るからに俺のお小遣いを遥かに超える金額。俺は慌てて藤江さんに返そうとするけど、シワが刻まれた手で押し返された。


「ボーナスたい! しっかり働いた者にはご褒美をやらんとね」


 有無を言わさない藤江さんの瞳。俺は有難く心遣いをそっと受け取り、嬉しくて胸の奥が熱を持つ。


「藤江さん……俺」

「ん。わかっとるばい」


 無言でポンポンと頭を撫でてくれる優しい手。だから俺も正直に話す。


「俺……細川ほそかわに本当の事話すよ」

「うん」


「嫌われるかもしれないけど……このままじゃ嫌だから」

「うん」


 藤江さんの後押しでやっと踏ん切りが付いた。隠し事をしたまま彼女と向き合いたくない。それを理解した藤江さんは満面の笑みで送り出してくれる。


「はがねちゃんなら大丈夫。分かってくれるばい」

「うん! 行ってきます」



 俺の秘密を打ち明けて、それでも離れないでいてくれたら……ちゃんと告白しよう。




 ………………



 時刻は午前9時


 最寄り駅を集合場所にした俺はソワソワした心持ちで彼女を待つ。集合時間まで30分以上あるけど、いても立ってもいられなかった。


 分かっていても何度も時計を見てしまう。体感時間は1時間ぐらい経ったけど、時計の長針は全く進んでいない。


 早く来て欲しいような……もう少し心の準備がしたいような。


 やっと5分ほど針が進んだ所で俺の目は遠くから歩いてくるひとりの女の子に釘付けになった。


 直線距離50メートルからでもわかるあの姿。


 ふわふわに仕上げた髪が靴音とともに揺れ動く。夏を意識した薄いブルーのキャミソールは水をイメージしたもの。スカートは普段着ないフレアのミニスカで、ベージュの生地にオレンジのワンポイント。


 あと……20メートル。

 彼女との距離がどんどん近付くに連れて小物まで詳細に分かってしまう。


 肩から下げたピンクのハンドバッグのキーホルダーはラーメン茶碗。白い彼女の脚を彩るのはデザインと機能性を備えた黒のブーツ。


 あと……10メートル。

 彼女もこちらに気付いたのか一瞬驚いた顔をして髪をクルクル弄りながら駆け足になる。


 早歩きで近付く彼女に声を掛けようと思うけど言葉が出てこない。それぐらい普段とのギャップが凄いのだ。

 見れば彼女の頬が赤くなっている。多分薄く化粧をしているのだろう。



「ほそ…………」



 尚も速度を落とさない彼女の名前を呼ぼうとするが……それより先に。



 ドンッ



「……ずるい」



 彼女との距離……0メートル。


「えっ……ちょっ」


 突然俺の体に飛び込んできた彼女。衝撃過ぎる展開に頭の中がパニックになる。そんな彼女は俺の白のワイシャツの胸元にしばらく顔をうずめていたが満足したのか上を向く。


「今日はデートやけん。ウチのこと名前で呼んで?」


 この破壊力はとんこつ級。

 そんな事を言われたら惚れてしまう。いや……随分前から惚れている。


「わかった……は、はがね。じゃあ俺も……」


 言い終わる前に彼女の人差し指が俺の唇を捉える。そして猫のような甘い声で笑うのだ。




「今日も凄くかっこよかよ……ソウジ」


 それはこっちのセリフだ。


「はがねこそ……めちゃくちゃかわいい」




 こってりしたとんこつデートが今始まる。


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