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指摘点

「まず、一番に思ったことは価格の妥当性です」


 江頭先輩への誠意のつもりで、僕は頭から指摘点を言っていくことにした。まずは、価格。


「プラネタリウム製作に必要な材料と、その材料がいくつ必要か。それをキチンと明記しているのは良いと思うんです。ですが、その隣に書かれた単価。これはいくらなんでも、高すぎる」


 何せ、骨組み。骨組みのつなぎ。ビニル袋で二万だからな。それはいくらなんでも、高すぎる。


「正直、それは思っていた。一応、ネットで価格を調べたりしたんだが。ネットの価格に何割か上乗せして、その価格に設定したよ」


「敢えて高め、の設定にするのは悪いことではないと思います。でも、あまりに妥当性のない価格を書くのは良くない。それは向こうサイドからの突っ込みどころを生みますし、こういう如何に信用を勝ち取るか、という資料において、デメリットも大きいです」


「……わかった」


「値段はむしろ、ネット価格よりも安くするべきだ。向こうがもし値段をネットで調べた時、相場よりも安かったらこいつら頑張ってるじゃんと好印象になるでしょう?」


「でも、無闇に価格を下げても良いのか?」


「勿論、駄目です」


 そう言うと、一同首を傾げた。


「値下げ交渉をするんですよ。もしくは、色々探して相場より安いサイトを見つける。設定単価は一先ず保留しましょう。ただ今の価格では駄目、とだけ」


「わかった」


「次に、購入するつもりの材料についてです」


「……材料、か?」


 江頭先輩は、再び懐疑的に首を傾げた。


「一応、今必要な材料は全てリストアップしたが」


「でも、投射機がないですよ?」


「それは壊れていない」


「壊れてなくても。二十年前のモノですよね」


 江頭先輩はうぅむ、と唸った。


「壊れてないから、必要じゃない、は少し違いますよね。プラネタリウム製作に置いて必要なのは、ここに書かれた三つに加えて、投射機の四つです。

 どうせならそれも買い付けた方が、より良いプラネタリウムになるでしょう」


「確かに」


「もっと言えば、投射機分上乗せして二万円を設定出来るようになるから、今よりも無理な単価設定にはならない、と」


「なるほどね」


 これは一先ず、納得してくれたらしい。

 まあ、部品を追加した分予算オーバーするかも、と言う懸念もあるが、僕も事前に色々調べた感じ、安価な投射機であれば今の部品群にプラスして加えても、予算内には収まるだろう。


「……そして、これが正直、今この見積書で一番気になっていることです」


「それは?」


「数量ですよ」


「数量、か」


 江頭先輩は、再び唸った。僕の言いたい意味を考えているようだった。


「……骨組みは、プラネタリウム製作においていくつ必要な予定ですか?」


「見積通りだが?」


「じゃあ、骨組みのつなぎも?」


「そうだ」


 僕は、やはりと思って、頷いた。


「ピッタリだと色々まずいです。例えば組立の時、もし骨組みをへし折ったりしたら? そうしたら、プラネタリウムはもう完成出来なくなるか、もしくは自腹切って追加部品を買わなければならなくなる。

 今後の破損を見越すのと、組立の歩留まりを見越して、多めの数量は設定しましょう」


 江頭先輩は、納得げに感嘆の声をあげた。


「確かに。組立失敗した時のことまでは考えていなかった。わかった。そうしよう」


 ……一先ず、僕から指摘したいことは以上だった。

 一つため息を吐いて、まずは僕の意図が通じたこと。上手く説明出来たことを、安心した。


 ふと、視線に気付いてそちらに視線をやった。


 そこにいたのは、成り行きを見守っていた優子さんと宮本君。


「青山、お前この前の横断歩道の時から思っていたけど。なんだかこういうことにすげえ手慣れてるよな」


 そりゃあ、伊達に社会人時代を経験してきてはいない。


「まさかお前、年齢詐称してるんじゃねえの?」


 惜しい。


「まさか」


 僕は誤魔化すように笑った。


「まあ、とにかく江頭先輩が事前に見積書を作ってくれたおかげで、今の問題点と今後の課題は見えてきましたね」


 ……整理すると、これからやらなければならないのは、各材料の価格交渉。投射機の価格設定と価格交渉。そして、数量の妥当性調査、か。


 ……。


「ねえ皆、やっぱりまずは見積の前に、したいことがあるんだけど」


「え」


 僕は、思うところがあったので前提の話をひっくり返した。


「どういうこと?」


「見積製作も重要ですし、見積を作る上で何をしなければならないか。それも見えてきたわけですが……ただ、じゃあ今の状態で本当に、失敗含めて骨組みが何個いるとか、多分結論つかないでしょ?」


 結局皆、思い描いている机上の空論……にも満たない草案レベルの状態で見積を作っているからな。

 多分まだ、正直に言えばプラネタリウム全体の構成も見えていない人だっていると思う。少なくとも、僕はそうだ。


「……まあ、確かに」


 納得してくれたのは、藍だった。


「そこで、まずは見積の前に作業書を作りたいんです」


「作業書?」


「プラネタリウムは骨組みをこう組み合わせて、こうつなぎを繋いで、ビニルを被せる。完成図はこんな感じ。そんな資料を作りたい。駄目、ですか?」


 一同は、唸った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 名字知ってもまだ名前呼びするのか…鈍いなんてもんじゃないな(笑) 高校生が部活で作業(計画)書の提出かぁ発想が技術職の現場管理者だな、この部顧問いらないね。
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