勝利の肉は美味かった。けどタバコが欲しい。
「マジでしんどいわ。」
なんとか狼を倒したアキトは木を背にもたれかかって座っていた。
「左腕は………思っていたほど酷くはないな。」
アキトの左腕は狼の牙で酷い状態だと思っていたが、意外と深く刺さっていたのは1本だけであとは浅かったみたいだ。
これは魔力を纏わせて防いだお陰でこの程度で済んだのか?
「とりあえず鑑定。」
名前: アキト
種族: 人間
年齢: 15歳
クラス: 無
Lv3
HP:36
MP:42
スタミナ:62
筋力:26
敏捷:31
魔力:23
知力:18
運 : 8
スキル
剣術 Lv2
体術 Lv1
魔力操作 Lv2
鑑定 Lv3
固有スキル
世界案内アーカイブLv2
レベルが2も上がってステータスもスキルも結構上がっている。
アーカイブがLv2に上がったのはデカいな。これで前よりはまともな回答が返ってきそうだ。
「とりあえずはここから動かないとな。」
周りにはアキトと狼の血が飛び散っていた。
このままだと血の匂いに引き寄せられて別の魔物が来るかもしれない。
アキトにはこれ以上戦う体力は残っていない。
狼を担いで川まで最短ルートで歩き出す。
筋力が上がったからかそんなに重く感じなかった。
川に着きまずは血抜きをする。
「ソフィア。魔物の肉って食べれるの?」
「食べれます。魔物の肉は強い魔物ほど、肉に魔力が含まれていて美味しいと言われています。」
じゃあ狼の肉はそーでもないな。でも肉は肉だ。
そこまで美味しくなくても久しぶりの肉なのだからしっかり血抜きして食べよう。
アキトは血抜きした後狼を拠点に持って帰った。
「うーん。刃物がない。」
拠点に持って帰ったものの刃物が無いので狼の解体が出来ない。
とりあえず、散策中に鑑定で見つけた薬草を左腕にペタペタと貼り付ける。
アオヅ草
薬草。ポーションの原料となる草。
患部に当てるだけでも微力な鎮痛作用がある。
この薬草を川で拾った石でゴリゴリと潰し、出た汁も左腕に塗っていく。
「ッツー!」
結構シミるけど仕方ない。とりあえず我慢我慢。
さてと、どうしようか。
俺の筋力なら石を研いでナイフみたいに出来ないかな?
川まで行き手頃な石を見つけ研いでみる。
うーん。筋力があってもやっぱりすぐには出来そうにないな。
30分経過
「うん!無理!やーめた。」
こりゃ無理だ。
いくら筋力が上がったからってすぐにゃできんわ。
それに技術がねーしな!
拠点に戻り狼の毛皮を腕力で強引に剥がしていく。
「おっ!なんとかなりそ…いてててて。」
左腕を痛がりながらなんとか皮を剥いでいく。
うーん。こういうのもただ力任せにやるだけじゃなく、魔力を通してやってみるか。
両手を見て魔力を集めていく。
そのまま力を込めて剥がす。
ベキッ!!
狼の足の骨まで勢いよく折れた。
「すげぇなコレ!」
魔力量と制御レベルが上がったせいか力加減を間違えてしまった。
このままだと皮も肉も粉々になりそうなので、手に集めた魔力を薄く伸ばしていく。
さっきよりも纏う魔力を薄くし尚且つ手刀のような形で鋭くしてみる。
そのままゆっくりと腹を裂いてみる。
スッー
腹が裂けた。
「え?ヤバくね?刃物いらなくね?」
だが集中がキレてすぐに纏えなくなった。
「これなかなか疲れるな。うげ!ゴホゴホッ、ウエッ。」
腹を裂いて内容物が出てきた。一緒に胃まで裂いてしまって臭いが出てきた。
とにかく中身を掻き出し、再び手に魔力を集中させて皮を剥いでいく。
川で肉を洗い、木の棒に刺して肉を焼いていく。
「あーくっそ疲れたし、くっそ腹減ったー。」
ジュージューと肉が焼かれていく。
「この匂いで魔物集まって来ないかな?頼むから来るなよ?いただきまーす。アグッ。」
ん!?不味くはない!だが美味しくもない!
食感はちょっと硬い鶏肉みたいな感じで噛みごたえがある。塩がないのが残念だ。
野性味溢れる味だが久しぶりの肉なので全部食べる事ができた。大きい狼だったがそんなに肉の部分は多くなかった。
「御馳走様でした。味が欲しいなぁ。あと牛とか食いたいなぁ。牛の魔物いないかな?」
兎にも角にも初めて戦闘し、勝利して食べた肉は調味料が無くても美味しく感じた。
今後はやはり人を探そう。
じゃないとこのままずっとサバイバル生活だ。
「塩も欲しいけどやっぱりタバコ吸いて〜〜!」
左腕の痛みよりも、食後の一服が出来なくて気分が下がるアキトだった。