第3夜 森の狩猟
夜だった。
私は一人石造りの古城の望楼に立っていた。
彼方には狐狩りのラッパの音がこだまし、勢子たちの音声もかすかに聞こえてきていた。
なぜここに私がいるのか?私には皆目分からなかった。
やがて騎士たちが、帰着する物音がして、マーブルホールでは宴会が始まったようだった。
そのとき、彼方からこんな歌が途切れ途切れに聞こえてきた。
「森へさ迷いでよう。彼方まで、森の奥深く、
お前の渇きを癒す泉はある。
さあ、森へさ迷いでるのだ。何をためらう?
そこにこそ、お前が焦がれる姫君がいるのだ。
お前が求めた宝はそこにある。
賢者の石も、黄金も、珠玉も、
さあ、森へさ迷いでよう。
泉は懇々と湧きでて、永遠の青春をつむいでいる。」
その歌をきくと私は我を忘れて、
思わずこう、叫んでいた。
「今行くよ、そうだ。森の中にこそおれの青春の宝が隠されていたんだ。」
私は憑かれたように、漆黒の夜の森へ飛び出していた。
暫く行くと、月光が雲間から顔を出し、一本の古木があって、そこに駿馬がつながれていた、
私はためらわず、それにまたがり、草原を抜けて走らせた。
月光は夜露を光らし、虫達のさんざめきも、聞こえていた、
突然、雲がよぎり、あたりは闇に包まれた、
夜空に怪しげな鳥の鳴き声がけたたましく響いた。
私はどうしたのだろう?思わず弓に矢をつがえると、
ひょうとばかりに、暗闇の空めがけて、射ていた。
どさっと、何かが落ちる音がして、獲物が落ちたようだった。
そのとき、雲が流れて、再び月光さんさんと夜の森を照らし出した。
馬の足元に何かが落ちていた、
馬から下りて近づき目を凝らすと、それは、
胸を一発で打ち抜かれた、嬰児の骸だった。
第3夜 終わり。




