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旅の終わり

「おお。ロイスブルッグよ。久しいな。突然の用件とは如何した?」


 翌日伯爵様は朝一で登城を許され国王に謁見している。


 国王は人畜無害で穏やかそうな人だが、今となればただの無能な王様にしか見えない。


「お別れを言いに参りました。某、爵位と領地を陛下に返上致しまする」


 何も知らぬ国王は素直に伯爵様が来たことを喜んでいるようだけど、伯爵様はきっと怒り狂う気持ちを抑えているのだろう。


 周囲には貴族や騎士が居るが、国王と周囲の半数ほどは驚きの表情をした。


 驚いたのが王太子派なのだろう。


「突然何を言い出すのだ!?」


「建国の盟約に従い、某にはもう陛下にはお仕えする気はありませぬ」


 一番慌てたのは国王だ。


 建国の盟約とは王家と貴族が交わした契約らしい。


 それは王家が国民と共に国の為にある限り、貴族もまた王家と国民と共にあるという誓い。


 今では有名無実化して形骸化している誓いだが、貴族が王家に忠誠を誓うのはその盟約により忠誠を誓うようだ


 ちなみに王家が国民や国を蔑ろにした場合には、去るもよし討って倒すもよしというかなり過激な誓いだけど。


「二度とお会い出来ぬでしょうが、どうぞお元気で。某のことを少しでも考えて頂けるならば、もう少し市井の声を聞くことをお勧め致しまする」


「待て! ロイスブルッグ! 何が不満なのだ! 爵位か? 領地か?」


「陛下。しっかりなさいませ。このままではこの国は滅びまするぞ」


「だから何が不満なのだ!」


「それが分からぬ陛下が不満なのですよ」


 国王の慌てっぷりは面白い。


 半分逆ギレしたように慌てるその姿は国王の器ではない。


 まだミューラー公爵の方が王の威厳があった。




「ロイス……ブルッグ……殺す!」


 その時だった。


 突然行方不明になるはずの第二王子が、謁見の間に姿を現した。


 顔が青黒く変色していて、全身から黒い煙りが吹き出す第二王子に伯爵様を除くその場に居た者全てが驚き言葉を失う。


「まっま……魔族化してる?」


 第二王子の変化に最初に気付いたのは、大きな杖を持ったお爺ちゃんだ。


 宮廷魔術師かなんかだろう。


「攻撃用意。撃て」


「了解。対地レーザー砲発射」


 物語なんかだと、ここで伯爵様と協力して倒すのかもしれないけど、オレ達が相手に合わせてやる必要はない。


 王城の真上に迷彩バリアで待機させてる空中戦闘艦から、可能な限り威力を絞った対地レーザー砲を第二王子にピンポイントで放つ。


「ロイスブルッ……」


 その瞬間王城の謁見の間には人のサイズの穴が空き、青黒く変色した第二王子を跡形もなく一瞬で消し去った。




「陛下。第二王子殿下は堕落し、市井の人を苦しめておりましたぞ。そして王太子殿下はオルボア公国の操り人形です。禁忌の魔法にて第二王子殿下をあのような姿にしたのは、王太子殿下の侍従ハリフスですぞ」


「ロイスブルッグ貴様何を血迷ったことを!」


「待て! ロイスブルッグ。それは真か?」


「陛下。私はもう貴方の臣下ではない。その答えは自分で見つけなされ。某はもう行きまする。今のは某の最後の御奉公だと考えて下されば、某も先祖に申し訳がたちまするが」


 あまりに急展開な出来事に、国王も第二王子派も王太子派も何が起きたか理解してないようだね。


 答えはそう複雑じゃない。


 ミューラー公爵の懸念は当たっていただけだからね。


 王太子は母の祖国のオルボア公国のいいなりでしか無かった。


 拉致され始末されるはずだった第二王子は、オルボア公国の工作員により魔族化させられて王城に送り込まれた。


 王城内にも貴族にもオルボアのスパイはいるようだ。


 オレ達は昨夜のうちに第二王子を王都の外に連れ出した連中から、今度はオルボアの工作員が第二王子を拉致するのを見ていた。


 悩んだけど事前に阻止するのを止めて、わざわざこの瞬間を待ってたんだよ。


 伯爵様が祖国に目を覚まして欲しいと言うからさ。


「ケティ。エル達と伯爵様を収容して帰ろう。あんまり遅くなるとクリスティーナ様に怒られるしね」


「了解。三人が王都から出たらすぐに牽引ビームで回収する」


 最低限の義理は果たしたし、お家に帰ろうかね。




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