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久々の拠点

「凄い。本当に島だわ」


 久々に戻った島はまだ工事中の部分があるものの、見違えるように変わっていた。


 すでに無人島だった面影はなく、島の中央部から東部にかけては石畳を敷いた町が出来ている。


 東部には予定通り小さな入り江と港が出来ていて、セレスに任せた帆船が停泊している。


「本当ですね。こんな海の真ん中に……」


 クリスティーナ様とメアリーさんは輸送機から見える島に驚いてるけど、これが普通の反応なんだろうね。


 町には建物が50戸から60戸はあるだろうか。


 あいにくと畑にはまだ何も植えられてない。


 まだ秘匿港は完成してないようで輸送機は中央部の町の広場に着陸する。


「お嬢様!」


「みんなもう来てたの!?」


「はい。準備の済んだ者から引っ越して来てます」


 島にはすでに伯爵様の領地から移住して来た人達が居て、オレ達を笑顔で出迎えてくれた。


 クリスティーナ様も馴染みの人達の顔にホッとしたようで、ようやく笑顔が見られる。


「不自由ない?」


「はい。皆さん良くしてくれてます」


 町の建物はまだ内装が済んでなかったりと大半が未完成みたいだけど、アンドロイドや擬装ロボットと一緒に移住して来た人達も手伝ってるみたい。


 移住して来たのは代々伯爵家に仕えている、家臣や使用人と家族や親戚がほとんどだけど、農家や職人も居るようで精力的に働いてる。


 伯爵様が心配なはずなのに、笑顔でみんなに声をかけるクリスティーナ様は、やはり貴族なんだなと思い知らされるね。


「クリスティーナ様。じゃあオレ達は伯爵様の方に行くから。困ったらセレス達に相談して」


「必ずみんな無事で帰って来なさいよ」


「ええ。必ず」


 クリスティーナ様とメアリーさんに、ロボとブランカもここでお留守番だ。


 今度は輸送機ではなく小型の戦闘艦で行き、オレ達は伯爵様の近くで待機して支援する予定だ。


 王都の遥か上空の大気圏外には支援艦隊も待機しているし、すでに王都内には複数のアンドロイドが潜入していて如何なる脱出劇でも対応出来る体制を敷いた。


 我ながら大袈裟に感じる部分もあるが、手を抜く必要もないし、こちらはこちらのやり方で最善を尽くすだけだ。


 ファンタジーを舐めてはいけない。


 それは今回の旅で明らかだった。


 相手はコンピュータで作られた敵ではなく生きた人なんだ。


 何が起きるかは誰にも分からない。


「さて、行きますか」


「了解しました。発進します」


 いっそ大気圏外から支援艦隊を下ろして、堂々と圧力でもかけてみたい気もする。


 見送るクリスティーナ様の表情に涙はない。


 人前で涙を見せぬクリスティーナ様は、少しだけ大人びて見える気がした。


 発進した戦闘艦からはすぐに島が見えなくなり、オレ達は島の優しい空気から戦場の緊張感へと変わる。


「司令。前より更にいい顔するようになったね」


「そうか? 少しは成長したのかもな」


 しばし無言が続く中で、ふとジュリアが妙なことを口にした。


 見た目は十代半ばでも中身はアラサーの大人なんだから、いい顔をすると言われると少し恥ずかしい。


 でも……。


 人を助けることにここまで本気になるなんて、多分旅に出なければなかっただろう。


 伯爵様の貴族としてのケジメ。


 しっかりと見せて貰おうかね。



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