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伯爵様出陣

 それから二日この町に滞在して王都の情勢を探ったが、いい情報は今のところほとんどない。


 現在の国王陛下は悪い人ではないようだが、周りを固める貴族に流されているというか丸め込まれているようで、第二王子の悪い噂を聞かされてなく知らないらしい。


 クリスティーナ様の側室の話も、陛下は伯爵様と本人が望むならば構わないと言いつつ、断られる事を考えてないような態度だという。


 有能でも無能な働き者でもない陛下だけに、中央貴族からの評価はいいみたい。


「クリスティーナ。お前達は先に島に行きなさい」


「お爺様も一緒に!」


「ワシは陛下にきちんと挨拶をせねばならんのじゃ」


「ダメですわ! 絶対帰してくれませんわよ!」


 そして伯爵様はオレやエルと相談して、クリスティーナ様とメアリーさんを先に拠点の島に行かせることを決めていた。


 理由はまあ幾つかあるが、守るべき存在が少ない方が伯爵様を王都から脱出させるのが楽なことが一番大きい。


 王都には伯爵様の屋敷があるが、近年は来ることもほとんどなかった程で、持っていきたい物もほとんどないみたいだしね。


 ただクリスティーナ様は、やはり伯爵様の王都行きを反対した。


 まあここ数日の情報は流石に教えていたので、貴族や王族に幻滅したというのが現状だろう。


「大丈夫です。私達が必ず伯爵様をお連れしますから」


「でも!」


 行けばすんなり帰してくれないのは、やはり子供でも分かることなんだよね。


 エルはなんとか宥めて説得をしてるけど、今回ばかりは簡単に納得してくれそうもない。


 ただ正直なところオレは、伯爵様よりクリスティーナ様の気持ちの方が理解できる。


 このまま失踪してしまえばいいって、今でも思ってるんだよね。


 馬鹿につける薬はないっていうしさ。


 伯爵様が失踪したことで理由を調べて察することすら出来ない王様なら、行っても無駄だと思うんだけどな。


「クリスティーナ。ワシは王国の貴族なんじゃよ。貴族としてけじめをつけんといかんのじゃ」


「けじめが必要なのは、王家ではありませんか!」


「心配無用じゃ。必ず戻る」


 クリスティーナ様の説得には一晩かかった。


 結局オレ達はクリスティーナ様とメアリーさんと一緒に、この町で伯爵様達と別れることになった。


 無論伯爵様達だけでは王都から脱出するのは難しいので支援はする


 ただオレ達が堂々と一緒に行けば、最悪賞金首にでもされかねない。


 オレ達は伯爵様とは別に町を出て、監視を振り切り一旦拠点の島に戻ったのちに伯爵様の支援をすることにした。


 作戦はすでに打合せ済みで出来ているし後は決行するだけ。


「大丈夫ですよ。必ず伯爵様を連れ帰りますから」


 不安なのだろう。


 涙を浮かべながら伯爵様を見送るクリスティーナ様の様子に、オレは両親と別れた頃を思い出す。


「でも……でも……」


「伯爵様の近くにはうちの人間も密かに護衛に付いてますから」


 伯爵様が馬車に乗り出発すると、クリスティーナ様はメアリーさんに抱きつき泣き出してしまう。


 オレ達はそんなクリスティーナ様を慰めながら王都とは反対方向に出発した。



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