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クリスティーナの憂鬱

「お嬢様。お飲み物をお持ちしました」


 王都を目の前にした突然の真相に一番戸惑っていたのは、まだ幼いクリスティーナ様だろう。


 この日は朝からロボとブランカの相手をしつつ、二匹が眠るとそれを眺めてるだけの時を過ごしている。


 今回の一件で知ったが、クリスティーナ様の母もすでに病で亡くなっていて、お付きのメイドであるメアリーさんが母のような姉のような存在だったみたい。


 そんなメアリーさんがこの国では貴重なココアを入れても、いつものように喜ぶ笑顔は見られない。


「ねえ、メアリー。王族ってバカなの?」


「城の外を本当の意味で知らないのでしょう。私も王都はあまり存じませぬが、伯爵領のように一緒に収穫をしたり祭りをしたりはしないようですから」


 貴族自体に憧れや未練があるようには見えないが、王族やお姫様には憧れや敬意は当然あったんだろうね。


 封建世襲の闇を知るにはまだ少し幼いのかもしれない。


「王都楽しみにしてたのに。アレックスやみんなと行きたいお店もあったのに」


「今回は無理でも落ち着いたら行けますよ。昨日乗った飛行機なら移住先の島から王都まですぐです。なんなら噂に聞く帝国の帝都にでもお連れしますよ」


「本当?」


「ええ。必ず」


 ああ、他にも王都を楽しみにしてたのもあるんだね。


 気持ちは分かる。


 田舎者にとってたまに行く大きな町は、楽しみで仕方ないんだよね。


 でも本当馬車に拘らないなら、電車で隣町に行くより気楽に行ける。


 そう言えばジョニーさんどうしてるかな?


 あの人ならどっかで、勇者にでもなってそうで怖いけど。





「アレックス。貴方王様になれば? 悪しき王家を倒して国を興した、異邦の勇者のおとぎ話みたいに。出来るんじゃないの? 貴方達なら」


「それは嫌ですよ。この国の建国の英雄のタクヤ様という人は王様にならなかったのでしょう? 多分同じですよ。お城から自由に出られない王様なんて頼まれてもなりたくありません」


「異邦人って変わってるわ」


「クリスティーナ様が女王となり、国を治めるなら力になりますけど」


「遠慮しておくわ。多分貴方の島に居た方が楽しいもの」


「同じですよ。オレ達も」


 流石に子供でもオレ達の異質さが分かるよね。


 クリスティーナ様はオレ達が現状を、物語の勇者のように解決してくれることを願ってるみたい。


 正しいものが勝つなんて思いたい年頃なんだろう。


 でも客観的に見たらデメリットしかない。


 国の統治体制なんてどれも一長一短あるし、馬鹿みたいに民主化したらいい訳でもない。


 アンドロイド達が居るから出来なくもないけど、そこまでしてやる義理もない。


 魔物を減らし人の支配圏を拡大して、情報の透明化と共有化で中央集権国家を作る。


 貴族を残しつつ貴族以外の政治参加を進めて、民衆の意識と民度を変えていくのに何年かかるだろうね。


 その間の苦労と流れる血を考えると頼まれても御免だ。


「まあ、妻は夫に従うものだし、未来の夫に従うわ」


「誰が妻で誰が夫なんです?」


「私が妻で貴方が夫よ」


「そんなこと言って、すぐに別の好きな人でも出来たらどうするんです?」


 クリスティーナ様も自分なりに今回のことを受け止め、すぐにいつもの彼女に戻るだろう。


 それにしても、おませな子供だね。


 隙あらば結婚の話を持ち出すし。


 もっと大人なら、もう少し真剣に考えなきゃダメなんだろうけどさ。


 まだ小学生と同じ年齢なんだよね。


 クリスティーナ様って。


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