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山越えと冒険者

 ワイバーンの解体が終わるとすぐに馬車は出発した。


 日頃の旅でも同様だが山越えの場合は、特に安全な休憩場所が限られてるため、あまりのんびりしてると大変なことになるようだ。


 特に現在オレ達が通るルートは比較的安全なルートであるらしいが、その分山中で一夜を野宿しなくてはならないところだという。


 野宿の場所はほぼ決まっていて、夜までにそこに到達しなくてはならないみたい。


「肉は食べられないんですね」


「はい。私も食べたことありませんが、かなり癖があるようでして。スラムの住人くらいしか食べないと聞いた記憶があります」


 ワイバーンに関しては肉は崖から捨てていて、日本人とすれば一瞬勿体ないなと思ってしまうけど、よく見たらハ虫類みたいなワイバーンだからね。


 食べられないのかと考えた時点でオレもこの惑星に染まってきたのかもしれない。


「またこの音だわ!」


「あれはロックゴーレムですね」


 お昼までまだ二時間ほどあるが、どうせならとエルとメアリーさんは肉と野菜の簡単なスープを煮てる。


 日頃の旅では昼食は馬車を止めてゆっくり食べるが、山越えは黒パンと干肉をかじる程度で済ませてとにかく先を急ぐらしいので、一緒に飲めるスープをみんなに提供することにしたみたい。


 しかしこの時にまた警報音が鳴るとクリスティーナ様は少し怯えた表情を見せた。


 どうやら警報音からワイバーンがまた来たのかと勘違いしたようだが、行く手を塞ぐように現れたのはゴツゴツとした岩で身体が出来ているロックゴーレムだった。


「おっしゃ! 行くぜ!」


 ただ今回はワイバーンほどの緊張感はなく冒険者の剣士と槍使いが嬉々として飛び出していく。


 どうでもいいが何がそんなに嬉しいのだろう?


「ねえ、さっきの光は出さないの?」


「冒険者の皆さんの様子を見てると不要かなと」


「確かに要らなそうね」


 クリスティーナ様はロックゴーレムはワイバーンほど怖くないようで落ち着くと、さっきの対艦レーザーがまた見たいのかエルにちょっと期待した表情で声をかけてたけどあの様子だと要らないよね。


「ロックゴーレムは希にですが内部に宝石の原石があると言われてまして。 冒険者の方はそれを期待してるのではないかと」


 嬉しそうな理由は宝石目当てか。


「ありませんね。体内をサーチしましたが」


「うげぇ! オレの黒鉄の剣が欠けた!」


「こいつ意外に固いぞ!」


「宝石が出なきゃ赤字だ!」


 体内のどこに宝石の原石があるか興味があったのだろう。


 エルはロックゴーレムをサーチして調べたが結果は無情にも外れらしく、そんなロックゴーレムと戦う冒険者の一人はロックゴーレムの固い身体に武器が欠けたようで半泣きになりながら戦ってる。


「クッソ。だからゴーレムは嫌いなんだ」


「一番に駆けて行ってたくせに」


「ミランダちゃんに宝石をプレゼントしたかったんだよ!」


「お前さ。娼婦に貢ぐの止めたら?」


「うるせえ! ミランダちゃんはオレの運命の人なんだ!」


「はいはい。運命の人の前に剣は直せよ。伯爵様がワイバーンの報酬分けてくれて良かったな」


「クッ。ミランダちゃんに会いに行く金が!」


 武器が欠けた冒険者は倒したロックゴーレムの身体を必死に破壊しながら宝石の原石を探していたけど、無いと知ると先程の表情とは真逆の暗い表情で落ち込んでる。


 仲間達が少し呆れたように声をかけてるけど、どうやら彼は娼婦に貢いでるのか。


 しかも彼の武器は高価らしくワイバーンの分け前がそのまま修理代に消えそうなんだって。


 いつの間にか兵士達は同情とも呆れとも受け取れる視線を向けてるし、うちの馬車に居る女性陣は少し冷たい視線を向けてる。


 冒険者にはなかなか愉快な人達も居るみたいだね。



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