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新しい町

「へー、なかなか大きな町ですね」


「オスカラの町は古くから鉄鉱石が産出される鉱山がある町でして王国でも有数の鍛冶の町なんですよ。町の住人の半数はドワーフ族でして統治するオスカラ子爵はドワーフ族の長老でもあります」


 村を出て三日程過ぎたこの日、一行がたどり着いたのは少し赤茶けた山の麓にある町だった。


 三メートルはあろう城壁に囲まれているが町の中から鍛冶らしき煙があちこちからたちのぼる異世界版工業都市といったところか。


「あとこの町には天然のお湯が湧いてまして入ると神の力が得られるとの伝説から貴族から庶民に至るまで人気です」


「神の力ですか?」


「はい。元々ここはワイマール王国建国前から鉱山と鍛冶の町でしたが、ワイマール王国を建国したワイマール一世陛下と共に建国に尽力した親友とされるお方が、この町のお湯に目を付けて温泉と名付けたと言われてます。伝説ではその方は神が使わした使徒だったと言われておりまして、そのお方の名前を頂き後にタクヤ温泉と呼ぶようになり、神の使徒がここの温泉を好んだとの話から神の力をここで得られると噂になったそうですよ」


 物知りな侍女のメアリーさんが町の解説をしてくれて、まるでバスガイドさんの説明を聞くように、町を見ながら聞いていたけどとんでもない情報が混ざっていた。


 《温泉》と《タクヤ》という二つの言葉。


 そのどちらか一方だけならまだ気にする必要がなかったかもしれないけど、その人って日本人みたいな感じだよね?


 まさかの情報にオレ達は表情にこそ過剰に表さないようにしたけど、内心ではみんな驚いてるだろう。


「神の使徒というのは本当に実在したのですね」


「当時から議論はあったようですし、国や教会の中には当時から現在ですら認めてないところもあります。 しかしこの国では実在したと言われてまして、旦那様やクリスティーナ様もタクヤ様の血を受け継いでいますから。旦那様の槍も雷神の槍という異邦の神の名を取り、タクヤ様が自ら造られた神槍の一つだと言われてます」


 エルはそれとなくタクヤという人物についてメアリーさんに聞いたけど、伯爵様のあの槍が雷神の槍なんて名前で異邦の神の名をと言われるとその人は日本人で確定だな。


 タクヤという人については要塞シルバーンの方で調査すれば何か分かるだろう。


 オレは仮に帰れるとしても帰る気はないけどジョニーさんは帰れるなら帰りたいかもしれないし調べて損はないと思う。





「オレ達も素通りでいいのかな?」


 思わぬ情報に驚いたオレ達だけど馬車はオスカラの町の門を越えて中に入っていた。


 一般の旅人は荷物のチェックが行われていたけど伯爵様の馬車と一緒のオレ達はノーチェックで町に入れた。


 オスカラの町は何故かは知らないがレンガ造りの家と石造りの家が混在してる。


 多分石造りが古くからある建物でレンガはそれよりは新しく最近のものもあるようだ。


「本当にドワーフがいっぱいね」


 そして何より印象的なのは小柄でひげを生やした男ドワーフと、同じく小柄でひげのない女ドワーフが町に多いことだろう。


 ヴェネーゼの町でちらりと見かけたがほとんど居なくて、ちゃんと見るのは初めてになる。


 なんかファンタジーに来たって感じがするね。


 この惑星のドワーフも酒好きなのかな?


 無人島で芋を植えたら焼酎にして持ってきてみたい。


「温泉入りたいわね」


「温泉」


「タクヤ温泉は気持ちいいわよ!」


 一方の女性陣とクリスティーナ様は早くも気持ちが温泉に移っている。


 そう言えばクリスティーナ様と侍女さんはオレ達と一緒に旅をするようになってからは、馬車のシャワーやトイレに感動してトイレは馬車のを使うしシャワーも毎日浴びてるんだよね。


 いままではクリスティーナ様は貴族なのでメアリーさんが布で隠しながら外でトイレをしてたらしいけど、そりゃ女の人は出来れば外は嫌だよね。


 しかもうちの馬車は温水洗浄のトイレだから最初の時はビックリして悲鳴を上げたほどだ。


 この惑星で最初に温水洗浄トイレを使った人はクリスティーナ様になる。


 まあそんな歴史は残さないだろうけど。


 伯爵様もクリスティーナ様から話を聞いて馬車の中を見に来たけど普通に驚いてた程だ。


 ジュリアやオレ達の強さや武器についても未だに何も聞かれないし、いろいろ察してくれる気遣いが凄いんだよね。


 英雄の伯爵様なのに。



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