襲撃!
再び鳴子が鳴ったのは東の空が明るくなり夜明けが間近な頃だった。
「来たぞ!」
今度こそオーガ一体がゴブリンやオークを従え現れた。
オーガの身長は三メートル五十は軽くあるだろう。
従えてるゴブリンやオークは二十体ほど居て、それが多いのか少ないのかオレには判断できないが。
盗賊達を捕まえたことで作戦は変更されていて盗賊達は縛られたままオーガを誘き寄せて少しでも腹を満たさせる生け贄にされた。
可哀想などと口にした人間は誰もいない。
奴らが野菜泥棒をしたせいで幼い子供を奴隷商人に売らねばならなかった家もあるし、稼ぐ為に森に入り亡くなった人も居るのだとエルが聞いたらしい。
動物や魔物ならまだ諦めがつくが盗賊だけは許せないというのが村人の総意なのだ。
「弓構え!」
迎え撃つ村人と兵士の主力武器は弓だ。
特別な効果などないただの弓だが数だけはあるので、命中率の良し悪し以前にとにかく射って射って射ちまくることで倒せないまでも傷を負わせるのが目的だ。
「射て!」
指揮しているのは伯爵様自身で伯爵様もまた弓を射っているし元々弓を持ってるケティのみならずジュリアとエルにオレまでもが弓を射ってる。
正直オレはさっき少し練習したっきりで前に飛ばすのがやっとなんだけど。
「ギャオオオオ!!」
先に動いたのはゴブリンとオークどもだ。
エサの盗賊達を攻撃して食らおうとするがそこにオレ達の弓が飛んでいく。
盗賊達にも矢は当たってるがゴブリンは弓で簡単に倒せるしオークも当たりどころが良ければ一撃だ。
特にエルとジュリアとケティの三人はオークの目や口を正確に射ち抜きあっという間に倒したり行動不能にしていく。
三人とも弓なんてほとんど使ったことないはずなのに流石に高性能アンドロイドだけある。
「ギャオオオオ!!」
「目と口を狙え! 他は普通の矢は通じぬ!」
ゴブリンとオークはエル達と兵士達の矢でほぼ無力化して盗賊達と一緒に倒すか倒すまでいかなくとも行動不能に成功するが、ここでオーガは自ら連れてきた者達を殺されたことに怒ったのか怒りの雄叫びを上げた。
ケティの矢だけは特殊な軽くて先端が鋭利な合金だが他は木の矢に鉄の矢尻なため、どうやらオーガの皮膚はほとんど傷にもならないらしい。
身体が大きいので矢が当たってはいるがオーガは痛がるでもなくうっとおしそうに両手で払うようにするだけでダメージがあるようには見えない。
「ギャアア!!」
最初にダメージを与えたのは矢の違うケティだった。
ケティの矢が大きく開けた口に吸い込まれるように刺さると喉に突き刺さったらしくオーガが暴れる。
「弓を止めよ! 我につづけ!」
かなり痛いようで矢を抜こうとしたり折ろうとするオーガの姿に伯爵様は弓を止めるように指示をすると、自ら何やら普通には見えない槍を持ちオーガに突撃していった。
「ハアアアア!」
伯爵様が槍を構えオーガの右足の太ももに突き刺すと、その瞬間バチバチと雷撃のようなスパークが起こりオーガは暴れながらも右足から体勢を崩して倒れてしまう。
そんな伯爵様の姿に兵達の士気は上がり次々と槍や剣でオーガを攻撃する中、残る左足で立ち上がろうとしたオーガの左足がジュリアの強烈な一撃により根本から切断された。
それでもなお暴れるオーガに兵士の何人かは吹き飛ばされたりしてダメージを受けるが、次の瞬間には伯爵様の槍がオーガの心臓に突き刺さり再び雷撃のスパークとともにオーガは動かなくなり村人や兵士から歓声が上がった。




