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初めての宿屋

 オレ達が村に着いたのは本当に日が暮れる寸前だった。


 川を越えた先から幾つかの別れ道がありオレ達はとりあえず王都に向かう道を進んで来たが、今度の村も最初の村と外観はあまり変わらずのどかな田舎の村といったところか。


 家々からは夕食の時間なのだろう。料理のいい匂いがしてくる。


 オレ達はこの惑星に来てからは船や馬車以外だとボルトンさんの屋敷にしか泊まったことがないので今夜は宿に泊まろうと村の宿の部屋を取った。


 部屋は二部屋にしてオレが一人用の部屋でエル達が三人で大きめの部屋にしようとしたけど、安全を確保出来ないと言われ彼女達の反対で同じ部屋になってしまった。


 内装は石と木を組んだだけのシンプルな作りで窓には質の良くないガラスがはまっていて、部屋には木製のベッドが四つとテーブルに椅子が人数分あるだけの素朴な部屋だ。


 部屋もベッドも清潔そうだし意外に悪くないなと少し失礼な感想を抱きつつ夕食を食べる為に一階の食堂に向かう。



「お客さん何にします? おすすめはラビィの香草焼きとスープですよ」


「ではおすすめとあと飲み物を。ワインを二人で蜂蜜酒を二人でお願いします」


 川止めがあったからか昨日の砦や一昨日の村で見た顔がほとんどで食堂は賑わっている。


 室内はランプの明かりで少し薄暗く感じなくもないがボルトンさんの屋敷でもそうだったしこれが普通なのだろう。


 砦にあった食堂はどうも兵士の食事のついでに旅人にも出してるようであまり味が良くなく、川止めにあった人達はやっとまともな食事にありつけると喜んでいる。


「あら美味しいですね」


「ありがとうございます。うちは料理が売りですから!」


 給仕は宿の娘さんか村の若い子だろう。


 運ばれてきたラビィの香草焼きはこんがりきつね色の焼き目に香草の香りがとてもいい。


 思わず美味しいと口にしたのはエルで給士の子も嬉しそうに顔を綻ばせた。


 皮がパリっとしているのにナイフが程よい弾力を感じながら入るし、口に入れた時の香草の風味と塩が絶妙だし何より肉に臭みらしい臭みがない。


 比較的さっぱりとした肉でレッドボアーより肉自体の旨味は少ないようだが、濃すぎず薄すぎない味付けと香ばしい焼き目が食欲をそそり美味い。


  スープの方は野菜のスープだが何か肉か骨で何かで出汁を取ってるのか味にコクと深みがあり、固い黒パンを浸して食べると丁度いい味わいになる。


 考えてみれば地元の野菜と獲物で料理をしてるんだし、ここは海も近いので新鮮でいい素材が手に入りやすいのだろう。


 ファンタジー世界もなかなか侮れないなと思いつつオレ達は食堂の賑わいをBGMにゆっくりと夕食を食べていく。





「すいません! お客様の中にどなたか薬師か回復魔法の使い手の方は、いらっしゃいませんでしょうか!?」


 食事も終わりそろそろ部屋に戻ろうかという頃になると、食堂と併設されている宿の入り口から、少し慌てた様子の女性が入って来た。


「何か用?」


「あの魔法使いの方でいらっしゃいますか!? 村長のところに宿泊されてる御方の連れの子供が熱を出してまして」


「分かった。すぐいく」


 どうやら急病人が出たようで診てくれる人を探してるらしい。


 誰も名乗りをあげないので知らぬふりをするのもどうかと思ったのだろう。


ケティは名乗りをあげると女性に案内されるまま村長さんの家へと向かった。



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