雨の旅路
騒ぎも収まりオレ達は寝ることにしたものの、ロボとブランカは夜中と朝方にもミルクを欲しがってしまいそのつどオレ達は起こされていた。
ただまあ狼に限らず赤ちゃんは大変なものだと聞くし、このくらい当たり前なのだろう。
ケティは早くも犬の躾に関する情報に目を通しているし、ジュリアは狩りの仕方を教えるんだと楽しみにしてる。
そう言えば昨日の商人の男性の名前も聞かなかったなと思いつつオレ達は朝食を終えると出発した。
「雨が降りそうだな」
ただこの日はあいにくの雨模様で空にはどんよりとした雲に覆われていた。
オレ達はあまり関係ないから出発したが、他の旅人なんかは出発を控える人もそれなりに居るようで急ぎの行商人なんかが出発をしたくらいらしい。
「雨が降ると魔物と戦うのも大変だしね。気配も察知しにくくなるわ」
馬車にはレーダーがあるオレ達には無縁の苦労がこの惑星の旅にはあるのだろう。
ジョニーさんの話にも雨はあったがあの人は普通じゃない精神的な強さがあるしね。
その後も降らなきゃいいと思いながら進むが二時間ほど進むと雨が零れてくる。
ジュリアが言うように雨が降ると雨音で周囲の音は聞きにくくなるし、道はぬかるみ下手をすると馬車が轍にハマることもあり得そうだ。
うちの馬車は雨が幌に当たっても音などしないから中に居る限りは苦労もしないんだけどね。
暇なので馬車の中では昔の映画を流して見ていた。
ギャラクシー・オブ・プラネット時代にオレがリアルからダウンロードしてそのうち見ようと貯めておいた古い映画やドラマにアニメなんかのデータが要塞シルバーンにあったみたい。
オレ自身は村を出た頃からお昼にはラーメンにしようかと昨日のレッドボアーの肉でチャーシューを煮込んでいて、その作業をしながら見てる程度だけど。
ついでにラーメンの出汁も取っていて本格派の醤油ラーメンになる予定だ。
ロボとブランカは初めてのチャーシューを煮る醤油や酒の匂いにちょっと反応していたけどミルクを与えると睡魔には勝てないのか寝てしまった。
この調子でいけばなかなか大物になるかもしれないね。
「何? 敵? 今いいとこなんだけど」
そのまま馬車は映画の鑑賞をしながら進むが映画がクライマックスに入ろうとするとレーダーが反応して警戒音が響く。
「またゴブリンですね。ちょうど人目もありませんし馬車の対人レーザーで排除します」
現れたのは昨日から何度か見掛けて戦闘にもなったゴブリンで四体居るが、ジュリアも雨の中にわざわざゴブリン相手にしたくないようでパスと一言で済ませるとエルやケティにオレはもっとやりたくない訳で最終的にエルは馬車の装備の対人レーザーでゴブリンの排除をするらしい。
馬車の前方に小さな穴が開くとそこから対人レーザーが馬車の前方を塞ぐようにしていたゴブリンに命中するが……。
「うわ。弾けちゃったし。威力有りすぎか?」
「いえゴブリンが弱いだけです。オークの上位種らしい存在を想定してましてこのくらいは必要と思われますから」
ゴブリンは上半身が弾け飛ぶように爆散してしまい下半身だけが道端に倒れる。
オレは対人レーザーの威力に少し疑問を抱くも想定がオークになってるようでゴブリンが相手だとこんなものらしい。
ただまあ昨日の銀髪の女性を見る限りこの世の魔法を使っても似たような結果になるのだろうし、あまり気にしないことにして魔石も爆散して見つけられないのでオレ達の馬車はその場を何事もなく通りすぎて行った。




