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新しい出会い

 馬車は大自然の中をのんびりと進む。


 幸いなことに敵性生命体らしい反応はあちこちにあるものの馬車は襲われることはなく森の中の林道に差し掛かるが、流石に荒れ地や草原よりは危険地帯らしく馬車が襲われる。


「これ売れるんだっけ?」


「魔石だけですね。ケティの薬に使えるのでそれだけは取りましょうか。武器は荷物になるので要らないですね」


  最初に襲ってきたのはゴブリン達で無人島と違い鉄製の剣や木の弓を持っていたが、ジュリアにより瞬殺されてしまい敵性生命体の証となる力の結晶の魔石を確保すると森に放り投げて先に進む。


 ボロボロの鉄製の剣なんかは持っていけば僅かばかりのお金にはなるらしいが基本的に汚い物が嫌いなエルが要らないと言うのでこれも放置していく。


「あら、前方で戦闘が起きてます。敵性生命体はオークのようで相手は狼ですね」


 森にはやはり敵性生命体が多くレーダーには敵性生命体を示す赤い点滅が無数にあるが、エルが珍しく驚いたような表情をしたのは馬車の前方でオークを相手に一匹の狼が戦っている映像が馬車のモニターに映ったからだろう。


 レーダーの反応から狼は魔物ではない狼らしいが流石にオーク相手には厳しいようで血まみれで今にも倒れそうだ。


 それでも狼は唸り声を上げて戦いを挑むがオークの持っていた木の棒に叩かれて悲鳴を上げて吹き飛んでしまう。


「死にな!」


 しかし次の瞬間にはそれを見たジュリアは見てられなかったのか馬車から飛び出すと、オークの首をバスタードソードの強烈な一撃で落とす。


 ジュリアはそのまま首を落としたオークなど無視して傷付いた狼に歩み寄るもののすでに狼は息絶えていて、狼には子供が二匹居たようで乳飲み子の子狼が息絶えた母親の狼を舐めている。


「おいで。大丈夫だから」


 立ち尽くしたジュリアの姿にオレ達もすぐに駆け寄るがその余りに悲しい光景にオレは自然と子狼を抱き抱えていた。


 まだ外敵も理解できない本当に産まれたばかりの二匹の子狼はオレが抱いても敵意を示すわけでもなくペロペロと指を舐めてくる。


「司令。連れていくんですか?」


「ダメか?」


「いえ、構いませんが」


 ここでオレ達が見捨てると確実に死ぬ二匹の子狼にオレは置いてなど行けなかった。


 小さい頃家で飼っていた愛犬が亡くなってからは犬も飼うことがなかったのに。


「犬用のミルクを急いで取り寄せます」


 母親の方は迷ったが穴を掘り埋めてやると何も分からぬだろうが、二匹に最後の別れをさせてオレ達は新たな仲間を二匹加えて馬車を走らせることになる。


「可愛い」


「本当ね」


 馬車が森を走る最中に急遽要塞シルバーンから小型のシャトルを使ってまで取り寄せた犬用のミルクを哺乳瓶に入れてオレとエルで飲ませてやると、二匹はお腹を空かせていたのか慌てるように飲み始めた。


 その姿にはケティやジュリアも見入っている。


 要塞シルバーンには家畜は居るが犬や狼なんてのは飼ってなかったので彼女達には初めてのことなのだ。


「まだ目が開いてないから産まれて一週間も経ってないかも。名前考えなきゃな。何かみんなで考えようか」


 エルはミルクの他にも二匹を入れておく籠に毛布も取り寄せていて馬車のソファーの一角は二匹の指定席になりそうだ。


 ミルクを飲み終えるとゲップをさせて口の回りと少し汚れてる身体もついでに拭いてやり籠に入れると、二匹は慣れない場所に少し落ち着かないが次第に慣れたのか体を丸めて眠りに就きオレ達は名前に頭を悩ませることになる。



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