表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

211/214

ゴキブリ退治・後始末

side:宰相


「そうか。ご苦労であったな」


 ようやく落ち着き、先の騒動に関与した者達に恩赦を与えたばかりだというのに。


 まさか恩赦を与えた近衛兵がダンジョンで人狩りをしていたとは。しかもダンジョンを管理する者がそれに密かに協力して臣民を売り飛ばすのに協力していた。


 本当に帝国の面子は丸潰れだな。


 殿下は問題を内々で処理しようとしたが、アレックス殿は拒否。まあ当然だろう。勇者パーティは帝国に貸しはあるが借りはない。


 元々帝国に協力していたのもミレーユ様を保護した義理からだ。彼らは誇り高い。信義に反する行動を拒否するのも分からなくはない。


 非は帝国にあるのだ。地方ならいざ知らず帝都の近衛兵からこのような不届き者を出した責任は帝国にある。


「問題は後始末だな」


 連中に協力していた奴隷商人はすでに捕らえた。売り飛ばされた臣民の全員の買い戻しをせねば、一族連座で処刑にすると脅してやらせている。


 だが連中に歯向かい殺された者もそれなりに居るらしい。


 近衛兵と協力していた騎士は貴族だが、実家は領地と爵位を召し上げの上に本人は生涯幽閉されるだろう。


 処刑してしまえという意見は多い。


 しかし腐っても帝国貴族。処刑するには陛下の勅命がいる。ここで問題となるのは、初代様が処刑を禁じた法があることか。


 政争などで破れた者や罪を犯した者の処刑を可能な限り禁じた帝国の法だ。


 幽閉なり奴隷にするなりして命ある限り生きて償わせろという初代様の法は、帝国の繁栄の原点でもある。


 まあ歴史は流れ、いつの間にか平民の凶悪犯罪者は処刑にしているが。それでも大半は生きて償わせている。


「ふむ。爵位の召し上げを先にするか」


 処刑は帝国に亀裂が入る。が幽閉ではせっかく即位した皇太子殿下の治世に傷も残る。


 ならば連中を先に平民に落として、奴隷にさせるしかあるまい。奴隷を売りさばいていた者には似合いの罰だろう。


 被害者には連中から差し押さえた財産で見舞金を払い、連中は帝都臣民の見える場所で奴隷として働かせる。


 むしろ奴らにとっては処刑より屈辱かもしれぬな。




「そうか。ならばそれでよい」


「問題はアレックス殿達です。妙な凝りを残しては帝国の為になりません。街ではすでに勇者が初心者狩りをしていた近衛兵を成敗したと評判です」


 陛下と殿下は今回の件の処罰に納得された。爵位の召し上げはやり過ぎだとの声も無くはないが、帝国の顔に泥を塗ったのだ。当然だろう。


 気になるなら親交があった者が残された家族を保護なりすればいい。


 そしてこの件で一番厄介なのは勇者パーティとの対立だ。何処まで本気だったか知らぬが、勇者自慢の空中船を複数隻、帝都近郊まで呼び寄せたのだ。


 それを各国から立太子式に参加した者達に知られたのも痛いな。



「困ったの」


 通常ならば褒美と地位や名誉を与えるのだが、褒美はともかく地位と名誉は欲しがらぬからな。帝国に繋がれるのが嫌なのであろう。


 勇者殿に連絡してもいい結果になるまい。


 それと皇太子殿下だ。悪いお人ではないが、争いや揉め事を嫌うのか内々に収めたがる性格らしい。


 貴族やただの皇族としては満点を付けたくなるが、独裁権のある皇帝になるにはもう少し悪人になってもらわねば困る。


 今回もアレックス殿を利用して、近衛兵を一新する好機だったのだ。言葉は悪いが時には恨まれるのも覚悟せねばならぬのが皇帝になる。


 まあその辺りは陛下がよく理解して居よう。


 元々バルバドス殿下はその辺りが上手かった。本来ならば兄弟が協力してくれれば良かったのだがな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ