立太子式
それからしばらくしたこの日、オレは久々にお祭り騒ぎの帝都に来ていた。
あまり目立ちたくないのと帝都の空中船の発着場は混雑してるようなので、帝都郊外まで輸送機で来た後は、以前旅に使用していた馬車に乗り帝都入りしている。
「すごいわね!」
「約四十年ぶりの立太子の式典ですから」
さて今回の帝都訪問の理由は、サミラス皇子の立太子の式典にミリーが参加する為であった。
バルバドス皇子の件から約二ヶ月が過ぎ、ようやく帝国内の処分や問題が解決したらしい。
宰相をはじめとした旧バルバドス派は、一定の重い処分を科されるが、今回のサミラス皇子の立太子式の祝いとして処分が軽減されることになったようだ。
宰相自身はやはり続投らしく、辞めることではなく続けることで償えということらしいね。
「街を見たいのう!」
「姫様、それは後で。まずは皇宮に挨拶に向かいませんと」
以前来た時とは違い、帝都内は祝福ムードのお祭り騒ぎになってる。
屋台も出てるし、大道芸やお芝居なんかもやってるみたいだ。村のみんなも連れてくれば良かったかな?
オレ達の馬車は混雑してる大通りをゆっくり進み、白亜の皇宮の前に辿り着く。
「アレックス殿。陛下より貴殿もご案内するように、命じられております」
ミリーと侍女のロマさんを下ろして、オレ達は適当に観光でもしながら時間を潰そうと思ったんだけど。兵士の人に止められて、半ば強制的に城の中に連行されちゃったよ。
何の用だろう。面倒な政治に関わるのは嫌だよ?
「やあ、ミレーユ。元気そうだね」
「うむ。わらわは元気じゃ!」
「羨ましいな。交換しない?皇帝になれるよ。美味しいもの毎日食べられるし」
「わらわは帝国の為にサミラス兄さまの為に、これからも立場を弁えて尽くしまする」
「うわ。立派な口上を覚えたね?」
「メルティが教えてくれたのじゃ!」
通されたのは謁見の間ではなく、皇宮の奥の庭園だった。確かに皇族の専用の庭園だったはず。
皇帝陛下にミリーのお母さんと他にも皇帝陛下の妃らしい人とか、ミリーの兄や姉も居るらしいね。皇族大集合だ。
相変わらずなのはサミラス皇子。少しお疲れの様子で元気一杯のミリーを羨ましげに見てたかと思うと、さらっとミリーを皇帝に誘ってるし。
サミラス皇子は少し残念そうだけど、ミリーに皇帝になりたいなんて気持ちは全くないんだよね。
「アハハ。帝国の為にも皇家の為にもそれが一番なんだよね。もう血を分けた兄弟で戦うのは御免だ。大きくなったら、それなりで楽な地位あげるよ。自由に生きたらいい」
皮肉かもしれないけど自由を満喫してるミリーの気持ち。サミラス皇子はよく理解してるみたい。
自由に生きる。言葉にするのは簡単だけど、この生存競争の厳しい世界でそれは非常に難しい。
庶民は生きるのに精いっぱいで、生まれた町や村から出ないのが当たり前だ。貴族には義務も立場もあるから、庶民以上に自由がない。
そんな世界で自由に生きることを認めるということは、ある意味一番贅沢で幸せなことに思える。
まあ、小さな子供を政争に使わないだけでも、立派だし尊敬出来る人だね。
帝国の将来は安泰かもしれない。




