歓迎の宴と勇者様御一行の旅路
「美味しい」
夜になると村総出で勇者様御一行の歓迎パーティが開かれた。
魚は村で獲った物だし肉も一部はこの世界の肉だけど、他の調味料や野菜に果物なんかは宇宙で生産した物だ。
聖女さん達、ビックリしながらも嬉しそうに食べてる。
ジョニーさんには今も補給として食料送ってるし、最近は聖女さん達の分も送ってたはず。
この世界の食事も美味しいけど、基本的に美味しい物は安くないのが実情だ。流通が基本的に死んでるからね。
「旅先の教会に寝泊まりして、塩辛い干し肉と固いパンで旅をして来たんですよ。勇者様も同じ苦労をなさっているのだろうと思ったら、毎日温かい食事を頂いてるじゃありませんか。本当に驚きました」
「あれそんなに高くないんですよ。元々軍用のレーションですから」
村人に請われて聖女さんは旅の途中の苦労話を話していたけど、話は途中からジョニーさんの旅と自分達の旅の違いに変わった。
元々聖女さんと女騎士さんの他にも護衛が何人か居たらしいが、危険な旅路の途中で命を落としたり、怪我をして離脱してしまったらしい。
旅費は支給されていたし、旅先で人を助けて謝礼を貰っていたようでお金に苦労はしなかったらしいが。いかんせん女の二人旅は危険だし、食事も最低限に切り詰めて旅をしていたんだって。
きっと勇者様も苦労してるからと耐えた旅をしたけど、当の勇者様はお金はあるし、毎日三食温かい食事を食べるもんだからかなり衝撃だったみたい。
「ヒルダさんの船は快適だし、毎日新しい食料が空中船で運ばれてくるんだもん。ビックリするわよね」
一方のジョニーさんを追い掛けてきたエルフさん。彼女は聖女さんよりは世渡りが上手いらしく、商人の護衛なんかをしながら比較的安全に旅をしていたらしい。
ただそれでもジョニーさん達の旅には驚いたみたいだけど。
ジョニーさんも含めて彼女達は、死神さんの海賊船風の空中船で寝泊まりすることが多かったようだ。
そりゃ野宿してたのに、お風呂も水洗トイレも冷暖房も完備した乗り物で旅をすれば、価値観どころか生き方すら変わりそうだよね。
ちなみに死神さんの船はせっかく戻ってきたから、メンテナンスのために秘匿ドックに運ばれて現在点検中だ。
ジョニーさんのシューティングスター号は無人で戻ってくるからまめにメンテナンスしてるんだけど、死神さんの船は輸送機で燃料や弾薬を送るばかりだから、戻ってきたのは半月ぶりか。
「私の船もジョニーの船も補給がないと駄目なのは、この世界の空中船と同じなのよね。しかも技術がこの世界と全く違うから。アレックスが居なかったら、今頃は本当に干し肉と固いパンで野宿してたかも」
「ジョニーさんなら、それでもやっていけそうですけどね」
「勘弁してくれや。野宿なんて嫌だぜ」
この世界の物語なんかだと勇者様の旅路は過酷で厳しい物がほとんどらしく、実際に楽な旅路はないんだとか。
ところがうちの勇者様は、SFの戦闘機で楽々気ままな旅してるからね。周りは現実を知ると驚くんだろう。
オレとしてはジョニーさん達の苦難の旅路の方が、見てみたい気もするけどね。途中で子供でも出来て旅を辞めそうな気もする。
確かケティが死神さんに頼まれて避妊薬あげてるらしいから、今のところは大丈夫だろうけどさ。
勇者様、子持ちで魔王討伐の旅に出る。とか物語だと完全にネタだよね。
リアルって怖いわ。




