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勇者様の憂鬱

 島に訪れたジョニーさんだけど、今夜は急遽勇者御一行を歓迎する宴を開くことになったんだけど。


「貴方は……!? 生きていらしたのですね。ロイスブルッグ伯爵」


「お久しゅうございます。エリーサ殿。大きくなられましたな」


 集落の建築現場で働く伯爵様を見て、聖女さんは心底驚いた顔で伯爵様の名前を口にした。知り合いだったの? 会わせて不味かったかな。


「フフフ。まさかそんな事情があったとは」


 とりあえず説明が必要かと家に連れて来て話をすることにしたけど、どうもジョニーさんは聖女さん達に帝国での一件やオルボアの件を大まかに話していたらしい。


 オレ達のことは勝手に話せないからと話してなかったようだけど、友人が居て手助けしてもらってるとは話していたみたい。


 少し悩んだけど下手な嘘はジョニーさんの顔を潰すことになりかねないし、痛くもない腹は探られたくないので、伯爵様の事情を含めてこちらの事情を聖女さん達に明かした。


「まさか、勘違いだとは……」


「ちょうどよいので、ここで楽隠居しておるのです。ワシが生きて居れば、皆がワシに頼りすぎますからの」


 聖女さんは笑ってるし女騎士さんは唖然としてる。


 ワイマール王国だと伯爵様は、救国の英霊としてどんどん美化され神格化されてるからね。


 最近ではいつの間にか神の使徒だったことにされてるし。


「牽引ビームを勘違いするなんて、みんな意外に単純ね」


 ジョニーさん達はここに来る前はワイマール王国に居て、国王や勘違いした原因の公爵と会ってたみたいだからな。


 伝説的な歴史の裏側がただの牽引ビームだと知ると、死神さんは呆れちゃってたよ。


「それにしてもジョニーさん。どんどん勇者らしくなりますね」


「そこよ。頭が痛い問題は。弱者を救うのは構わんが、責任を果たさねえでオレに戦えって奴は、気に入らねえ」


「居るんですか? そんな人」


「ああ、あちこちから使者や手紙が来るんだよ。魔族だ魔物だ隣国の侵略だから助けろって、勝手なことばかり言いやがって」


 ちなみに肝心のジョニーさんは少しお疲れの様子だ。


 気になって話を聞いてみると、あまりに勇者として名が売れたことで身勝手な連中が押し寄せてるらしい。


「大変ね。勇者も」


「ジュリア変わるか?」


「嫌だよ。アタシ達そんなのが嫌だからこの島に居るのに」


 勇者も名が売れると政治的というか、国家クラスの相手と上手く交渉したり駆け引きする必要もあるのかも。


 お願いだからそっち方面の面倒事は持ち込まないで。オレもそういう問題は嫌だよ。


「あまり騒がしいなら、帝国を頼られてはいかがでしょう」


「帝国か? あんまり借りは作りたくねえんだが」


「言い方はよくありませんが、ジョニーさんの立場になると憎まれ役も必要になります。それにジョニーさんは帝国の貴族なのです。貸しも大きくありますから、頼るなら帝国が最適でしょう」


 聖女さんも宗教家だから、この世界の宗教と同じで政治的な問題には口を挟めないみたい。


 ただここでエルがアドバイスしたのは、帝国を頼るというジョニーさんがあまり好まない方法だった。


 政治的な問題はオレ達でもどうしようもないしなぁ。利害が共通する国を頼るとも、利用するとも考えるべきかも。


「本当に世界のために勇者の力が必要か判断するには、国際情勢に精通する必要があります。それに時には非情な決断もせねばなりません。私達が知る中で、その条件に最適なのは帝国です」


 ジョニーさん個人は義理と人情に熱い素晴らしい人だ。


 でも世界規模で世界の危機なんかと個人が向き合うのは、いくらジョニーさんでも無理だよね。


 助けるにしても人を助けるのか、国や貴族を助けるのか判断もしなきゃならないだろう。


  言い方は良くないけど、ジョニーさんを利用しようとしてる人は多いだろうね。


 情報収集とアドバイスならばオレ達が引き続きするけど、憎まれ役はちょっと御免だし、オレ達には憎まれ役をする社会的な力はない。


 ジョニーさんも本気で世界と向き合うなら、今のやり方では厳しいのだろうし。考えなきゃいけない時期なのかも。




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