帝国争乱?
side・ジョニー
「勇者殿にこれほど仲間が居たとは。まあ、深くは追求すまい」
「バルバドスが動いたようだ。予定にはなかったが、先に皇宮と帝都から奴の手先を排除したいがダメか?」
「構わん。勇者殿に全てを委ねよう。思うままにやるがよい」
やはりバルバドスの野郎は計画を知っていたみたいだな。
あっちはアレックス達に任せておけばいいだろう。オレ達は皇宮と帝都の掌握を急ぐ必要がある。
「了解。少々手荒になるかもしれねえが、なるべく穏便に済ませるようにする」
「これを持っていかれよ。皇帝の三種の神器の一つ。その昔魔王との戦いに挑む勇者に貸し与えたこともある聖剣と。ついでに近衛大将軍の任命書だ。近衛大将軍は危急存亡の場合に、ワシに代わり帝国の全権を委任する臨時の役職になる」
「おいおい、いいのか? オレは帝国に忠誠なんぞ誓わねえぞ」
「忠誠など必要ない。貴族というのは面倒でな。地位もない勇者殿の言葉には素直に従えぬ者も居よう。だがワシの名を使えば降れる者も出るはずだ。勇者殿の好きなように使えばよい」
皇宮と帝都に滞在する軍や衛兵はおよそ三万。そのうちバルバドスに忠誠を誓うのが三割ほど居るらしい。
ただ宰相の話だと皇帝の命令に逆らってまで反旗を翻すのは、そのうちのごく一部だという話だ。
大将軍ねぇ。ずいぶんとまあ大層な名前だこと。だけど使えるモノは何でも使う皇帝のやり方は嫌いじゃない。
「オーケー。任せとけ」
「気になるのはサミラスの方だな。バルバドスのことだ、勝算はあるのであろう」
「ああ、そっちは心配要らねえよ。こっちも奥の手が動いたんでな」
鬼が出るか蛇が出るか。まあ何が出ても心配する程じゃねえだろ。
皇帝とミレーユのお袋さんの護衛を残して、オレはジュリア達と仕事に取り掛かるかね。
「ジュリア。そっちはどうだ?」
「皇宮内は制圧したよ。むしろこっからが大変だね」
元々皇宮の奥は軟禁状態の皇帝を見張る最低限の兵しか居ないんで楽だったが、皇宮の中でも宰相なんかが居る表の方は少し難儀した。
ただ流石に皇帝から借りた聖剣と宰相の協力があり、大半は大人しく従ってくれたがね。
中には反発する者や激昂する者が居たんで、そいつらはお寝んねしてもらった。
皇帝は言わなかったが、サミラスと宰相からはなるべく殺さないでくれって頼まれてるしな。
味方はアレックスのとこの戦闘型アンドロイド十人に、人に擬装させたロボット兵が千体だ。ロボット兵は貴族や捕らえた兵の監視なんかさせてるだけで、戦闘はオレとヒルダとジュリア達で済ませたがね。
「勇者殿。陛下の命に従う者達を集めました」
「了解。これより反逆者の捕縛に向かう。なるべく殺すなってことだ。ただし一般市民を巻き込むような奴は遠慮なく殺ってくれて構わねえ。異論はあるか?」
皇宮の制圧を終えたオレ達は宰相が集めた味方の軍や衛兵と共に、バルバドス派の捕縛をすることになるが、なんでオレが指揮官なんだ?
臨時の名目だけの大将軍ってのが理由らしいが。オレには軍の指揮なんて出来ねえ。
命令だけははっきりさせて、後は臨機応変にやらせるしかねえか。
しかもヒルダもジュリア達もこんな時に限って、知らんぷりしやがるし。
オレ以外は全員防護服とヘルメットの完全武装だから、素顔を晒してるのオレだけだしよ。お前ら全員素顔を晒したくないだけで、ヘルメット装備しやがっただろ?
面倒な後始末から逃げる気満々じゃねえか。




