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宰相閣下と勇者

side・宰相


 サミラス殿下が立つことを決断された。


 本当に良かった。これで帝国の崩壊は阻止出来るであろう。


 ただ驚きだったのは、やはり目の前の男か。


「本当に陛下と殿下は私に宰相を続けろと?」


「そんな嘘ついてどうするよ」


 頭痛の種でもあった男。空の勇者の名を持つこの男が陛下と殿下の手紙を持って、人知れず私の部屋に来た時には寿命が縮まるかと思った。


 まさか空の勇者が影働きをしていたとはな。


「国を割らない為には宰相殿の力が要る。そういうこったろ?」


「私に異論はない。陛下に逆らった罪を働いて償えと言うならば、喜んで償おう。だが狂信的にバルバドス殿下を支持している者はどうする? 皇宮警備をしてる近衛隊は、ほとんどがそんな者達だぞ?」


「心配するな。皇帝の身辺はオレが守る。近衛隊とやらも、逆らうなら叩き潰して構わねえって話だしな」


 私が陛下に会いに行けなかったのは、偏に皇宮警備をしているのがバルバドス殿下の子飼いばかりだったことが原因だ。


 奴らは殿下に忠誠を誓っていて、私の話でさえ聞きはしないからな。


「しかしミレーユ様を、まさか勇者殿が保護していたとは。しかも帝都で堂々と観光していれば疑うはずもない」


「一応言っておくが、嬢ちゃんの警備は完璧だぜ?」


「分かっている。今更勇者殿を騙してまで裏切る気はない。ワシは別に帝国を我が手に握ろうとした訳ではないのだ」


 問題の発端であるミレーユ様も、まさか本当に勇者が保護していたとは。


 しかも無関係な者達と一緒に、変装して観光をして楽しんでいたのだから、探しても見つかるはずがない。


 良かった。本当に良かった。正直半分死んでいるかと諦めていたが、これで帝国が割れなくて済む。


 帝国を破滅に導いた愚か者の謗りを受けなくて済むのだ。


「海竜の討伐もカモフラージュか?」


「いや、あれは別件でな。海竜の領域に行かなきゃならなくて、ついでに狩ったもんだ」


「豪快な勇者殿が、実は影働きも得意とは。お伽噺になればさぞや愉快なことになるな」


「よしてくれ。世の中には残さなくていい歴史もある。オレのことは忘れてくれていい」


「ならば何故、帝国にこれほど力を貸すのだ?」


「子供を守るのに理由がいるか? 助けた子供に、親も助けて欲しいと頼まれて断れなかっただけさ」


「勇者殿。感謝する。貴殿のおかげで帝国もわしも守られた」


 勇者とはやはり次元の違う存在なのだな。


 たった一人で帝国を救うのだから。


「最後まで気抜くなよ。バルバドスって奴は、なんか嫌な予感がするからな」


「任せてくれたまえ。こう見えても一国の宰相なのだ。腹芸は得意だ」


 あとはバルバドス殿下を、なんとか穏便に捕らえることが出来ればいいだけだ。


 バルバドス殿下を殺せば、しこりが残るからな。


 元々聡明な御方だ。最後は理解してくれると思うのだが。



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― 新着の感想 ―
誰が呪いをかけたのかも解けてないのに話だけが進んでいくのが不気味で。
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