輩の結末
「大変申し訳ありませんでした」
そのまま輸送機で出発を待っていたら、冒険者ギルドの副ギルド長という人が来て、突然頭を下げられちゃった。
「何のことです?」
「飛竜の牙の件です。彼らのことは処罰するので、お許し下さい」
「こちらが口を挟む問題ではありませんから。そちらの好きにされて構いませんよ」
何処か苦労人みたいな副ギルド長で、疲れた表情で何度も謝って帰って行った。正直そこまでするとは思わなかったな。
マルク君の家のイースター商会向けの謝罪か?
「冒険者ギルドも国や地域により様々ですからね。帝国ではギルドの力は弱いんです。問題を起こした冒険者は厳格に処分してますからね」
マルク君に迷惑をかけたかもしれないので謝っておいた。
ただ、副ギルド長が来たのはイースター商会の関係者だと思われたからだろうけど、帝国では元々冒険者ギルドの力は他より弱いみたい。
何代か前の皇帝が冒険者ギルドと争い、 国外追放の寸前まで行ったんだとか。
ワイマール王国の時のように、冒険者ギルドが必要以上に権力を持ち、町の防衛にまで影響を与えた冒険者ギルドの支部があったことを嫌った皇帝が居たんだって。
冒険者の主な役割である魔物退治について、冒険者ギルドに所属しない国民を対象に、帝国が独自に褒賞金を出したりして努力してるみたい。
「素晴らしいですね」
「ええ。冒険者の方を否定はしませんが、国は自分達で守るというのが帝国の基本理念になりますから」
エルはそんな帝国の方針に感心してる。
冒険者ギルド云々より、自国の防衛をギルド任せにする国に問題があるのは確かだからか。
国によっては冒険者ギルドに財政支援してるところがあるみたいだけど、帝国では財政的な支援もなく帝国の国民は冒険者ギルドに加入しないフリーの冒険者が多いみたい。
冒険者ギルドに加入すると、国からの褒賞金が貰えなくなるんだってさ。
ただまあ、大国だし優秀な冒険者が周囲から集まるのも確かで、優秀な冒険者はそれなりに需要はあるみたいだけど。
「ちゃんとしてる国もあるんですね」
「基本的に帝国内の冒険者は善良ですよ。ここは国境沿いですから、他国から来たばかりの冒険者が、騒ぎを起こすことはあるみたいですけど」
つまり国に睨まれてる組織の中間管理職が、さっきの副ギルド長だったわけだ。
「外国だと帝国で一攫千金なんて言われてるみたいですけど、中途半端な冒険者に仕事なんてないですからね。皆さんに絡んだのも国境沿いをウロウロしてるだけの連中です。運が悪かったのかも」
冒険者ギルドの問題は前からあったけど、大国では意外に上手く付き合ってるのかもしれない。
ワイマール王国は国王があれだしねぇ。
結局オレ達は辺境の町をこの日のうちに出発した。
帝都に運ぶ新しい荷物の積み込みが終われば、あとは用はないからね。
普通は一泊くらい泊まるらしいけど、天気がいい時は出発することもあるみたい。
オレ達は輸送機でゆっくり寝られるしね。
それにしても死神さん。この町でもジョニーさんを、きっちりガードしてたね。勇者様に憧れる女の人達から。
異世界では勇者様はハーレムを作るのも、優秀な遺伝子を残すお仕事なのに。
対するオレの周りには、何故か子供ばっかり集まるし。ロボとブランカとかクリスお嬢様とかミリーお嬢様とか。
いや、文句はないよ。子供は嫌いじゃないし。
ただねぇ。ちょっと羨ましいと思わなくもない。
まあ知らないところで、子供が産まれてたなんて事は望んでないけど。
ジョニーさん。大丈夫かね? 実は子供が産まれてた、なんてなれば修羅場になりそう。




