呪いと難題
「呪いかぁ。呪いを解く魔法とかないの?」
「一般的に呪いを解くには聖職者の神魔法が必要です。ただし聖職者ならば誰でもいい訳ではなく、高難易度の呪いは相応に力のある聖職者が必要になります」
ジョニーさんが無事に帰ってきたけど、厄介事が増えちゃったよ。
流石のジョニーさんも呪いはどうしようもないからなぁ。
侍女さん達に呪いについて聞くとファンタジーらしい答えが帰ってきたけど、普通に考えるなら皇帝の呪いを解ける聖職者を探せってことか?
「髪の毛を分析させます」
「お願いね」
ただオレ達が取る方法は、ファンタジーの普通じゃないけど。
ナノマシンも効かないのか試してみないとダメかな。
「それにしても世界が滅ぶなんて穏やかじゃないね」
「国が一つや二つ潰れても、世界なんて変わらないと思うんだけど?」
「この世界には本当に魔王なんてのが、過去に居たみたいなのよ」
ちなみに事情を知らなかった死神さんにも、とうとう皇女様の件がバレた。
正直口が軽そうだからオレ達は黙ってたんだけど、彼女はいつもジョニーさんと一緒に居るからさ。
何かコソコソ隠し事してると思われたみたいで、めんどくさくなる前に話したんだよね。ジョニーさんが。
「聖職者を探した方が早くない?」
「信頼出来る聖職者に知り合いが居るならな。この世界の聖職者って奴は、権力争いに関わりたがらないんだよ」
厄介なことになりジョニーさんもため息をこぼしてるけど、そんなジョニーさんに聖職者を探した方が早いって言っちゃう死神さん。貴女やっぱり中身は未成年の子供だね。
宗教の厄介さを理解してないし、この惑星の聖職者は権力争いなんかに関わりたがらないからな。
嘘か本当か信仰心が薄れたり俗世に穢れると、聖職者としての力が使えなくなるとか。
生臭坊主も居るだろうけどね。
状況から見て生臭坊主に解呪出来るとは思えない。
それに宗教って権力を政治に近付けるのは、ろくなことにならないんだよ。
「問題は呪いを解いた後もありますしね。本人が嫌がってる皇帝にするのもちょっと……」
「そこは次に行った時に釘を刺してくるさ。魔王が居るなら倒せばいいんだろ」
「本気ですか?」
「子供の未来一つ守れねえ国なら、滅んじまえばいいんだ。戦うのは大人がやればいい」
今回判明したのは、皇帝が第一皇子を認める気がないと言うことだ。
ただオレには、まだ幼くダークエルフとのハーフである皇女様を、皇帝にして良いことがあるとは思えない。
その辺りジョニーさんがどう考えてるか、確認したんだけど。
この人、本気で魔王と戦う気なんじゃあ……
「ジョニー。貴方異世界に来ても変わらないわね。血も繋がってない私達の為に、体がボロボロになるまで戦ってたリアルと変わってないじゃん」
「オレには他に取れる方法がねえんだよ」
「でも!」
「まあ、落ち着いて。魔王の件は居たら考えればいいから。別にジョニーさんが今すぐ、生身で魔王に戦いを挑みに行く訳じゃないし。魔王を倒せる兵器を用意すれば、なんとかなるよ。多分」
 
魔王を倒すと簡単に口にしたジョニーさんに、侍女さん達やオレ達は驚いていたけど、不満げだったのは死神さんだ。
ジョニーさん、リアルでも本当にそんな生き方してたのか。
「兵器って、そんな簡単に……」
「対魔王用ではありませんが、物理兵器やレーザー兵器ではない魔法兵器の開発はすでに始めています。何事も一つ一つ積み重ねて日頃から準備をするのが、司令と私達のやり方です」
死神さんは驚いているけど、オレ達とジョニーさんはある意味対極の価値観と生き方をしてる。
オレは覚悟なんか出来ないけど、最悪の場合に備えて準備はさせてる。
まあオレはアンドロイドのみんなの提案を、承認するだけだけどさ。
エルに諭されて大人しくなった死神さんを眺めながら、この先のことを考えていくけど前途多難だね。




