サルベージ・その一
「これは何と大きな船でしょうか」
翌日は死神さんの船を引き揚げることにした。
ただマルク君にその事を話したら、良かったら引き揚げる様子を見せて欲しいと言ってきたので、みんなで一緒に引き揚げ現場を見に行くことになったんだ。
引き揚げの件は初日に知られちゃったしね。
世話になってる以上は嫌とも言えない。
例によって帝都の門の近くに輸送機を呼ぶと騒ぎになるけど、全部空の勇者様のせいにして出発した。
「沈没現場は海竜の巣ではありませんが、巣が近い縄張りになります。戦闘を想定して無人潜水艦も、縄張りのギリギリまで配置しました」
「嘘でしょ。なんであんな大型の特殊な船があるの!? あれNPCとか大手のギルドしか持ってないやつじゃ……」
途中で宇宙から降ろした牽引と曳航が出来る工作船と護衛にと対潜装備をした戦闘艦と合流したら、みんな流石に驚いてるけど。
死神さん。貴女まで驚かなくても。
戦闘艦は大気圏内なので小回りの利く駆逐艦タイプを降ろしたけど、工作船は性質上大きくこの惑星にはないサイズの空中船になる。
「じゃあ、オレはシューティングスターで待機しとくぜ」
「万が一海竜に襲われた場合はお願いします。ですがくれぐれも水中戦はしないで下さい。一応水中戦用の装備にしておきましたが」
「ああ。分かってる」
ジョニーさんは不測の事態に備えてシューティングスターに乗り込んだけど、ジョニーさんが居ると本当に何か起きそうな予感が。
連れてこない方が良かったか?
「それじゃ、始めるか。海竜が暴れたら、船を引き揚げて宇宙に退避することとする」
「了解しました。作業を開始します」
一応迷彩バリアーで船体を隠してるけど、竜種にどこまで通じるか不明なんだよね。
最悪海竜と大戦争になるかもしれないけど、出来れば何事もなく終わって欲しい。
作業自体はさほど難しくない。
艦船用の牽引ビームで死神さんの船を海中から引き揚げるだけなので、海に潜らなくてもいいから難易度はあまり高くはないはずなんだ。
「貴方達。とんでもないわね。勇者どころの騒ぎじゃないじゃない」
「最終日のあの日。うちは本拠地の要塞に居たんですよ」
「……まさか要塞ごと来たの?」
「ええ。まあ」
「うわぁ……」
「というか工房がないと、船を引き揚げても直せませんよ」
牽引ビームを見ると伯爵様を誤解した公爵を思い出すなぁ。
あの勘違い公爵は今ごろ何してるかな。
それはそれとして死神さんったら、今頃引き気味に驚かなくてもいいのに。
SFだって燃料と武器弾薬に消耗品の生産が出来ないと、艦隊なんかあったってだめじゃないか。
シューティングスターの補給と整備を、うちがしてる時点で気付いて欲しかった。
「司令。海竜が巣からこちらに向かって来てます」
「やっぱりか。素直に返してくれないか? 対海竜戦用意。最初は牽制攻撃で時間を稼いで」
「了解しました。対潜爆雷で海竜を他の場所に誘導してみます」
牽引自体は無事に開始出来たけど、やはり縄張りの異変に気付いたか海竜が出て来たよ。
悪いけどまともに相手したくないんだよね。
空中から爆雷をあちこちに投下して混乱させてるうちに、船を引き揚げておさらばしよう。




