帝都の観光・そのニ
図書館の後には皇宮や教会など、帝都の見所を観光してお昼になった。
「これって……」
「カレーという異邦の料理ですよ。帝都の名物なんです」
お昼はちょっとコジャレたレストランに入ったが、店に入った瞬間になんとなく匂いで感じていたけど。
やっぱりカレーだった。
店の雰囲気はイタリアンなのに料理は何故かカレーだ。
「おっ! 米もあんじゃんか!」
「はい。ジョニーさんの持っていたお米には、少し負けますけどね。これも美味しいですよ」
メニューを見たらライスの文字があり、ジョニーさんのテンションが上がった。
補給で毎日食べてるはずなのに。
クリスお嬢様達は驚いてるね。そういえばカレーは色的に抵抗があるだろうと、出さなかったからな。
「何でも初代様が望んでも、食べられなかった料理なんだそうです。百年ほど前に帝都を訪れた旅の料理人が、当時のこの店の店主に伝えたそうです。今では帝都のあちこちにある料理ですよ」
それにしても。また異邦人っぽい人の痕跡があったね。
初代様カレーが食べたかったのか。
カレー粉とかプロ級の人じゃないと、香辛料は手に入っても作れないしね。
覇王スキルでカレーは作れなかったのか。
「いいか。カレーってのは、米にルーをかけてがっつり食うんだ。お行儀なんか気にしちゃダメだぜ」
「やっぱりジョニーさんも、カレーお好きなんですね」
それはいいとしてジョニーさん。そんなにカレーを熱く語らなくても。
マルク君が異邦人はみんな、カレー好きとか誤解しそうだよ。
まあ、カレー嫌いな人は珍しいんだろうけどさ。
「美味しいじゃない!」
「少し辛いのじゃ」
「美味」
「本格的なカレーですね」
帝国のカレーは、家庭用というよりはスパイスの味が効いた本格派のカレーだった。
野菜や肉を煮込んだブイヨンでも使ってるんだろう。
深みのある素材の味と香辛料の刺激がマッチして本当に美味しい。
米も日本のような短粒種の物で、宇宙要塞産には負けるが異世界とは思えぬ美味さだ。
少しとろみが足りない気もするが、米にカレーをかけて食べると日本のレストランで食べてるみたいだわ。
周りを見るとクリスお嬢様は辛いのが好きなようだけど、ミリーお嬢様は辛いのが苦手みたいだね。
ケティとジョニーさんは早くもお代わりを狙ってるし、死神さんはさっきからロールプレイのままらしく豪快に食べてる。
それはいいとして死神さん、どうやってロールプレイと素の自分を切り替えてるんだろ?
ちょっと羨ましいな。オレもロールプレイしたいけど、性格的に出来ないんだよね。
根が臆病だからジョニーさんのような生き方に憧れるよ。




