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帝国と勇者

side・帝国宰相




「空の勇者は何をしに帝都に訪れたのだ?」


「それが、どうも観光のようです」


「本当か?」


「はい。何処かの田舎者らしき女子供を連れて、イースター商会の跡取りと今朝から帝都内を観光してますから」


 ミレーユ殿下の捜索で忙しい時に、勇者が帝都にやってくるとは。


 勇者とは人を超える存在だ。神の使徒であったり、異邦人であったり素性は様々だがな。


 彼らは自ら進んで世を乱すことはないが、時として人の努力を無にして、結果として世を乱すことも無いわけではない。


 誰か特定の人間や勢力に味方して、一気に形勢を変えてしまうバランスブレーカーな一面も併せ持つ。


 世の中は決して白と黒ばかりではないのだ。


 神々が魔物を世に蔓延らせているように、必要悪という物もこの世には存在する。


 だが勇者と呼ばれる者達は、あまりそれを理解してない者も居るのだ。


「まさかミレーユ殿下と結託してるということは、ないであろうな」


「それは流石にないのでは? 空の勇者は成り行きで人を助けますが、あまり慎重に行動するタイプではありません。敵地に突入して活路を開くタイプですから」


「一番厄介なタイプの勇者だな」


「情報ですと複数の見慣れぬ空中艦を操り、竜種ですら一撃で倒すとか。空中艦が無くても強いようですし。過去の行動から考えるとミレーユ殿下と結託してるならば、皇宮に乗り込むような男です。あまり後先を考えることもないようですし」


 時期が時期なだけに、私はどうも神経質になっているのかもしれないな。


 全く殿下にも困ったものだ。


 確かに亜人とのハーフ皇帝などごめんだが、自信過剰な殿下も危ういというのが本音だ。


 軟禁や暗殺など、愚かなことばかり考えるからこうなるのだ。


 適当な地位を与えておいて、いざとなれば頼むと一言仰せになれば皇帝陛下もあれほど意固地にならぬものを。


 あれの母も決して欲深い女ではない。


 幼い娘を権謀術数渦巻く皇帝にするなど、向こうも本音ではごめんであろうに。


 誰しもが皇帝に成りたい訳ではないのだ。


 己の力を見せたくてウズウズしている殿下には、分からぬやもしれぬがな。


 だがそれでも殿下以外が皇帝に即位すれば、間違いなく帝国は荒れる。


 困った御方だが皇帝の地位の問題以外は、周囲の意見を多少聞く耳も持っているし貴族達の扱いも上手い。


 なまじ文武に優れているだけに、廃嫡にするにはそれなりの理由が居るが、それがないのが現状なのだ。


「ならばよいが、迂闊につつくなよ。監視も付けなくていい。一切関わるな」


「はっ」


 勇者という人種は隠せば探り、見張れば疑う者達だ。


 関わらぬのが一番賢い選択なのだ。


 放っておいても危機になれば、しゃしゃり出て来るのだからな。


 しかしそう考えると一晩監視を付けたのは、失敗だったかもしれぬ。


 ミレーユ殿下の追っ手が全滅したことで、まさかと疑ったのが仇とならねば良いが。


 流石に我が帝国が戦って負けるとは思わぬが、勇者一人相手に軍を半壊させられたなどあっては、帝国の名に傷がつくだけなのだ。


 それ故に誰も勇者には手を出せぬ。


 全く。厄介な時には厄介なことが重なるな。



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