帝都の観光
翌朝、死神さんはちょっと歩き方が変だった。
理由? 知らないよ。寝違えたんじゃない?
新婚さんも寝不足みたいだけど。枕が変わって寝られなかったんだね。きっと。
何故かエル達の視線が冷たい気がするのは、気のせいなはずだ。
さあ、今日は帝都の観光だ!
「おお! 凄いのじゃ!」
「本当。お城みたい!」
マルク君の案内でオレ達は帝都観光を始めたけど、お子様二人は元気だ。
まず案内してくれたのは図書館なんだけど、ワイマール王国のお城より立派な建物は圧巻だ。
ただミリーお嬢様。自分の住んでいた町なのに、演技とは思えない驚き方だね。
多分、城から出してもらえなかったのだろう。
「周辺地域で最大の図書館だと言われてます。初代皇帝陛下が皇宮よりも優先して造らせたと言われてまして、皇宮が落ちても図書館は落ちないと昔は言われていたほどです。今は流石に皇宮の方が強固みたいですけどね」
やけに立派な図書館だと思ったら、また異邦人絡みか。
知識とか残そうと苦労したんだろうなぁ。
「エル。図書館を調べてみるように伝えて」
「図書館ですか?」
「例の力の初代様が皇宮より優先して造らせたって、何か気になるんだよね。少なくとも古い情報を調べたら、何か分かるかもしれないし」
「分かりました。手配します」
ずっと考えていたんだ。覇王スキルとは何なのか。
それを知らねばオレ達は、とんでもない間違いを犯しそうで怖いという思いもある。
もし覇王スキルを残したのが初代皇帝ならば、きっと何処か他にも子孫に残した何か情報があるはずだ。
皇帝は恐らくいろいろ知ってるかもしれないけど、初代皇帝が本当に地球の人ならば、歴代皇帝も知らない場所に、密かに情報や皇帝に対抗する術を残してるかもしれない。
こんな帝国を造った人なんだ。
現状のような皇族が暴走した時の、備えくらい用意してると思いたい。
絶対権力の危うさは地球の人ならば知ってるはずだ。
「本当に中も広いですね」
「世の中にこんなに本があるなんて」
そのまま調査結果を楽しみにしながら、オレ達の観光は続いていく。
図書館の中の本の匂いは日本と同じだなと、奇妙な共通点を感じて少し懐かしくなる。
田舎にも学校にはそれなりの図書室があり、図書館だって珍しくなかった。
昔はそれが普通だったけど、この世界に来てからは本の有り難みをよく感じるよ。
でも出来れば図書館の本を、データ化しておいて欲しかったなぁ。
こういうアナログな調査って人手が必要なんで、うちのアンドロイドでも苦労するんだよね。
まあ初代皇帝もまさか、こんなファンタジー世界にSFのゲームから来るとは思わなかったろうしね。
仕方ないんだけど。
あれ、ジョニーさんったら、また勇者様だとバレて美女にモテ出してるよ。
死神さんがロールプレイ再開して、美女達をブロックしてるけど。
行く先行く先で、あんな感じなんだろうな。
「アレックス! あっち行くわよ!」
「うむ! 行くのじゃ!」
ジョニーさんはそんだけ人の為に戦ってるから、文句はないけどさ。
何故かオレの周りには子供が多いんだよね。
俗にいういい人だけど、男として魅力ないという奴なんだろうか。
まあ嫌われるよりはいいけど。




