帝都へ
追っ手は二手に分かれた。
戦闘用の空中船が一隻こちらに付いてきたが、残りは進路を変えて去って行った。
「恐らく捜索を一からやり直すものかと。判断のタイミングは悪くないと思います。流石ですね」
「それで、こっちはいつまでこのままなんだ?」
「もう、いいでしょう。マジックアイテムを川にでも流して、私達も帝都に行きましょう」
逃走喜劇が終わった以上、こちらもいつまでも一隻だけをこのまま引き付けておく必要はないよな。
しかも相手は本物の軍隊で無能じゃないとなると、今後の対応が難しいね。
「へ~。大きな町だね」
「そりゃ帝都はここらで一番大きな町だもの」
マジックアイテムを尾行していた空中船と別れたオレ達は、帝都が見えるところまで来ていた。
以前に見たワイマール王国の王都の数倍は軽くあるだろう。
白く大きな皇宮が中心にあって、皇宮を囲むように町が外へ外へと広がっている。
規則正しく通る道と白で統一された外観の建物が並ぶ町並みは、帝国の繁栄と文明の高さを見せつけられるようだ。
帝都の周りもやはり穀倉地帯が広がっていて、レーダーで調べたところ魔物の数も少ない。
「何か魔法のバリアのようなものが帝都にはありますね」
「うむ。初代皇帝が設置した魔物避けの仕掛けじゃ。帝国ではこの魔物避けのおかげで人々が安全に暮らせておる」
「では皇宮を包むより強力なものは?」
「外敵を防ぐ為に魔法障壁を展開しておると、聞いたことがあるのじゃ」
「魔法障壁ですか」
「これをそなたらに貸そう。皇族のみが持てる皇宮の鍵じゃ。これがあれば魔法障壁の中に、出入りが自由に出来るはずじゃ」
さて、どうやって帝都に入ろうかと考えていたけど。
エルは皇女様から帝都の情報を聞き出していた。
皇女様のように相手のステータスなんかを見抜ける人が居ても困るし、帝都に入る時にどの程度チェックをしてるかなども調べないといけない。
ステータスに関しては見られる人は何人か居るらしい。
ただ皇女様以外のステータスを見るスキルは妨害するマジックアイテムで防げるらしく、貴族ならば普通に持ってるし帝都内では売ってる物らしい。
まあステータスと言っても普通は名前と職業にレベルくらいしか見えないので、貴族以外は気にしないんだとか。
覇王スキルはもっと細かく見えるので違うらしいが。
「よくそれで皇族としてやっていけましたね? 周りが嫌がりませんか?」
「わらわは父上と母上とそこのロマ以外は、ほとんど会ったことがないのじゃ。兄上や姉上ですら数えるくらいかの」
帝都の情報や皇宮の防衛情報なんかまで出てきたので、皇女様との会話はかなり重要な情報があった。
ただ気になったのは皇女様の日頃の状況だったんだけど。
なんというか人の内側を見てしまう皇女様は、両親以外に疎まれていたっぽいな。
本人は他の家族や皇族がどう生きてるか知らないようで、気にしてないみたいだけどメイドさんの顔色が悪い。
箱入り娘どころの騒ぎじゃないね。
親父の皇帝って一体何を考えてるんだろう?
皇族や貴族すら知らぬ箱入り娘を皇帝にしようなんて。
何か深い考えや理由があるんだろうけどさ。
とりあえず帝都に入って、当初の予定通り観光でもしようか。
箱入り皇女様も皇宮から出たことないみたいだし。
調査して皇宮に侵入するには今しばらく時間が必要だ。




