墓参り
村のみんなにすっかり誤解された翌日には、輸送機にて久々に島を離れて元伯爵様の領地に来ていた。
メンバーはオレ・エル・ジュリア・ケティの四人に、メアリーさんとクリスティーナ様と新婚さんの二人とその家族だ。
ちなみにクリスティーナ様は死んだことにされたので、容姿を変える為に髪の色を変えて、顔も人工皮膚の特殊メイクで別人になっている。
「良かったわ。ここは変わらないわね」
王国では現在各地で王家に反旗を翻す反乱が起きているけど、伯爵様の元領地は流石に平和そのものみたいだ。
確か今は混乱してるので一時的に王家の直轄地となってるはずで、いずれは伯爵様の家を血縁者の誰かに継がせる方向で話が進んでるらしい。
まあ次の王様もまだ決まってないしね。
二人居た王子は二人とも継げなくなったし、王様が臨時に次に指名した公爵も次はもっと若い者をと望んでるみたい。
公爵の心のうちまでは分からないけど、元々王様になりたかった訳ではないようだし、次の王様って地味に大変だからね。
それなりの継承権がありながら、王位継承争いに関わってなかった王家の親戚が有力候補みたい。
オレにとって伯爵様の領地は、夜に一度来ただけで昼間は初めてだけど、のんびりしながらもそれなりに賑わってる感じがなかなかいいなって思う。
クリスティーナ様や元領民のみんなは、変わらぬ故郷にホッとするようでオレ達は町の教会に向けて歩いていく。
「……私とお祖父様のお墓もあるわね」
墓地は町の教会の裏にあった。
ただしおめでたい公爵や王様のせいで、死んだ上に聖女とされたクリスティーナ様の真新しいお墓も出来ていた。
伯爵様のお墓と並んである二人のお墓には、花束などが今でも供えられていて、クリスティーナ様はまるで騙してるようで少し罪悪感でも感じるような表情をしてる。
「もう少し疑うとか確認取れば、分かるようなもんだけどね」
「本当よ。王様からみんな揃って、勘違いしちゃうなんてバカみたい」
貴族の生活にあまり未練はないようだが、死んだことにされたのは思うところがあるらしい。
クリスティーナ様は改めて、王様達の勘違いっぷりに呆れていた。
「お母さん。私結婚したわ」
一方新婚さんの二人は持参した花束をお墓に供えて、結婚の報告をしている。
移住が急だったので墓参りも出来なかったようで、新婚さんも家族もホッとした様子で嬉しそうだ。
今後は定期的にみんなが墓参りに来られるようにしよう。
可能ならばいずれは伯爵様の元領地と島を、定期的に空中船で堂々と行き来出来たらいいんだけど。
まあそれは文明レベル的にも影響が大きすぎるから、難しいだろうね。
「さて次は帝国にでも行こうか? 新婚さんの旅行に」
「あの、本当にいいんでしょうか? 私達は墓参りだけで十分です」
「そうだな。世話になりっぱなしだし」
墓参りを終えると町を出て輸送機に乗ると次は帝国に行こうとしたけど、新婚さんと家族のみんなが申し訳無さげにしてる。
まあ普通に考えて旅行なんて、貴族様か裕福な平民しかしないんだから戸惑うのも当然か。
「いいんですよ。オレ達も行きたいから行くんですから」
だけどせっかくだから新婚旅行には行かせてやりたい。
それにオレ達も時々は、前みたいに旅とかしたいからさ。
ついでに島のみんなにも、旅の楽しさを味わって欲しいじゃんか。
ぶっちゃけこのままだと、女を侍らせて自分じゃ何もしない村長なんてイメージになりそうだからさ
ちゃんとみんなのこと考えて働いてるとこ見せないと。




