表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/214

地上の夜・そのニ

 星が綺麗だった。


 ギャラクシー・オブ・プラネットでは見飽きるほど見ていたし、この銀河に来てからも毎日見ていた宇宙だ。


 しかし地上に降りて、波や風が吹き抜ける音に潮風の匂いを感じながらの星はまた違うものがある。


「なかなか悪くないな」


「だろ?」


 すでに夕食も済みエルは後始末をしていたが、オレはジュリアに誘われるままにお酒を飲んでいた。


 リアルでも全く飲めないことはないが、美味しいと感じなかったし酔う感覚もあまり好きになれなくて、ほとんど飲んだことはない。


 地域の寄り合いに参加した時と、お世話になった人が来た時は付き合い程度に一杯か二杯舐めるように飲む程度だった。


 エルは無理をしなくてもと止めてくれたが、ジュリアが未成年に酒を勧めるオッサンのように、少ししつこいくらい勧めてきたのでつい飲んでしまった。


 意外と言うべきか美味しいと感じてしまい悪くない気分だ。


 厳密に言えばオレはもう日本人ではなく、アレックスと名付けたギャラクシー・オブ・プラネットの人間なのかもしれない。


「司令。拠点完成までまだ三ヶ月はかかるんだし、その間に冒険にいかないかい?」


「冒険って何を? まさかファンタジー物のゲームとかみたいにやりたいのか?」


「もちろんよ! 郷に入れば郷に従えっていうだろ?」


 元々日本でも田舎で農家をしていたオレからすると、こうして小さな島でのんびりするのも悪くないなと思うんだけど、のんびり出来ない人も居るわけで。


 少しホロ酔いのジュリアはオレに抱き付くように絡みながら、これからのことを話し始めたけれど、どうやら彼女は冒険に出たいらしい。


 だけど問題なのは冒険に出る話よりビキニアーマーで抱きつく方で、ほぼ素肌なので抱きつかれるとオレの着てる近未来的な薄い服ではリアルに感覚で感じるからいろいろと困るんだけど。


「ジュリア。いい加減にしなさい。司令が困ってらっしゃるわ」


「絡み酒禁止」


 まあ困るけど決して嫌じゃないという微妙な男心を察してか察してないのか、エルやケティに他のアンドロイド達が少し絡み酒になってるジュリアとオレを引き離してくれた。


 正直ホッとしたような残念なような。


 それにしてもジュリアはビキニアーマーを着たり、冒険に出たいと言ったりファンタジーが好きなのか?


 正直旅に出るのはオレも考えているが、ジュリアの冒険とはだいぶ違う気がするなぁ。


 白兵戦を祭りだ! なんて言うのはうちのアンドロイドでもジュリアくらいだ。


 冒険に出れば絶対騒ぎや面倒事に首を突っ込むだろう。


「旅に出るのはオレもしてみたいけどな。リアルだとしばらく行ってないし」


「そうこなくっちゃ! 話のわかる司令だよ! 今夜はアタシが……」


「……ジュリア」


 リアルだとまず考えるまでもなく拒否した気もするが、ジュリアのいう冒険も悪くないと今のオレなら思えてくるから不思議だった。


 ジュリアはオレの反応が悪くないことに気をよくして再び抱きついてきて、耳元で今夜はと何かを言いかけたけど。


 その言葉はエルの迫力ある無表情な一言で、最後まで聞けることはなくオレはジュリアと一緒に固まってしまう。


 普段は優しいし怒った表情をする時もあるけど、一番ヤバイのは無表情なエルなんだよね。


 何が彼女の逆鱗に触れたかは、正直分からないんだけど。


「まあまあ、酒の席の話だし」


 ケティと他のアンドロイド達はさらっと危機回避のために離れて夕食の後片付けをしていて、エルの矛先はジュリアなんだけどオレも微妙に巻き添えを食ってる気がする。


「そうだよ。エル。分かってるよ。ね?」


 何処かヤバげなんでオレがエルの機嫌を取り出すと、ジュリアもすっかり酔いが冷めたように機嫌を取って、なんとかエルの機嫌を直すことに成功した。





「司令。そろそろさ。分かるだろ? 男なら? もう仮想世界じゃないんだしエルも不安なんだよ」


「何が不安なんだ?」


「……司令それ本気で聞いてる?」


「本気だけど何が言いたいんだ?」


「あのね。アタシ達は女性型アンドロイドで司令は男。ここじゃあ運営の規制もないし何でも出来るんだよ! 司令がアタシ達を除け者にして冒険に出た先で、現地の女なんかに興味を持ったりしたらって考えると、アタシ達が面白い訳ないだろ! 特にエルは司令のこと……」


「いや、今まで上手くいってたろ?」


「アタシ達のAIの規制はもうないんだ。不安なんだよ。みんな。司令と自分達がどうなるか」


 その後二台のうち一台のキャンピングカーをオレとエルとジュリアとケティで使うことにしたが、エルがお風呂に入った隙にジュリアがとんでもないことを言い始めた。


 不安? みんな最高ランクのAIを持つアンドロイドなのに?


 流石にここまではっきり言われると言いたいことは理解するが、オレ自身そこまで人付き合いがいい訳でもないので、どうしていいか迷ってしまう。


 結局どうしたかって? 何もなく就寝して終わりだよ。


 オレにそんな気の利いた対人スキルはない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ