獲れた魚は食べましょう
魚は見知ったモノから見知らぬモノまで居て、中には魚の魔物も僅かに居るみたい。
と言っても陸上では本当に弱く村人でも倒せるような魔物らしく、元兵士の人なんかがクリスティーナ様のような子供が怪我をしないようにと率先して退治してる。
いっぱいあるので村人のみんなと選別して、今日明日で食べる分を分けると村までどんどん運んでいく。
初めは砂浜に干して置こうかと思ったんだけど、野性動物が近くの森に居るしね。
それに意外に歩くと村まで距離があるんだ。
「小さいのも多いわね。」
「これは干して出汁にすると美味しいですよ。あとは瓶詰めにも向きますね」
一番多いのはイワシらしい魚で意外と様々なサイズがある。
日本の味である煮干しも作れるしオイル漬けにするのもいい。
それにしても南国リゾート風の砂浜が、急に漁師町のような魚臭い砂浜に変貌したけど気にしてる人は居ないみたい。
「干してない海の魚なんて初めて!」
「私も食べたことないわ」
「この年になって、まさか新鮮な海の魚が食べられるなんてねぇ」
というか村人のほとんどが、干物以外の海の魚を食べたことがないらしく、感動したり神様に祈りを捧げてるお年寄りまでいるよ。
「エル。このまま浜焼きにしてお昼にしようか」
「いいですね。準備をします」
日本人だと当たり前に食べてたから、特に意識してなかったけど村人達の熱の入れようの訳が分かったわ。
せっかくだから新鮮なまま海鮮バーベキューで、今日のお昼にすることにしよう。
現状で食料は配っているけど、村のみんなは味噌や醤油に馴染みがないから調味料は一部の人が試しにと使ってるだけなんだよね。
メアリーさんはすでに味噌や醤油を使ってるから、メアリーさんに頼んでみんなが食べられる味で味噌か醤油の鍋を一緒に作ってもらおうか。
「ケティ。生で食べられる?」
「問題ない」
「じゃあ、ちょっとだけ生でも食べようか。みんなは食べないかもしれないけど」
「賛成する」
鮮度が落ちる前に最低限の内臓を取ったりと捌きながらお昼の支度をするけど、どうしても新鮮な魚を見ると醤油とワサビで食べたくなる。
寄生虫とか怖いからケティに確認したけど大丈夫みたいだから、オレ達用に何種類か魚を捌いて刺身にしよう。
ワイマール王国で魚を生食してる人は基本的に居ないけど、漁師とかボルトンさんのような海の商人は、航海中は魚が釣れたら生で食べることもあるんだとか。
漁師なんかは安全な魚を知ってるんだろうね。
「生で食べるの!?」
「オレ達の故郷だと生で食べたんだよ。新鮮で安全な物に限るけどね」
「流石に生は……」
「大丈夫なのか?」
ただやっぱり生は村のみんなには抵抗があるらしく、ゲテモノ食いとまでは言わないが、みんなに心配されてしまうほどあり得ないみたい。
そんな顔しなくても無理に食べさせないから。
だけどこの調子だと卵かけご飯とかは、もっとあり得ないんだろうなぁ。
美味しいんだけどな。
流石に異世界なだけに食文化の壁は大きいな。
まあ新鮮な魚を初めて見た人達なだけに仕方ないけど。




